（アメリカの時代 ウォルター・ラフィーバー著から抜粋）
中南米では、ケネディ政権が進めた「進歩のための同盟」によって莫大な対外債務が生まれ、進歩どころか軍事政権と革命が生み出されていました。
ジョンソン大統領は、次第に同盟を信用しなくなり、警察と軍隊への援助に力点を移しました。
ジョンソン政権の中南米担当の補佐官だったトーマス・マンは、
「中南米の人々は、たった２つの事を理解するだけだ。札束と、尻への一撃だ。」と言っていた。
１９６４年にブラジルは、経済危機に直面します。
するとジョンソンは、援助を停止しました。
ブラジルのグラール大統領は、アメリカ資産を差し押さえます。
するとアメリカは、ブラジルの軍部をそそのかして、グラール政権を倒させました。
この時アメリカは、いざという時に備えて、海軍をブラジル沖に派遣していた。
ブラジル軍部は、その後に２０年に及ぶ残忍な独裁政治を行っていきます。
ジョンソンは、この軍事政権に援助を送り続けました。
ジョンソンは、ペルーの文民政権に対しては、援助を止めます。
ペルーでは、スタンダード・オイル・ニュージャージーが所有している会社を、
ペルー政府が支配下に置こうと努力していました。
ジョンソンは、ドミニカ共和国にも尻への一撃を加えます。
ドミニカでは、アメリカ海兵隊で訓練をうけた事のあるラファエル・トルヒーヨが、
１９３０年代から独裁者として君臨していました。
アイゼンハワーの時代に、アメリカはトルヒーヨに反対するドミニカ軍人に武器を送り始めます。
１９６１年５月に、この軍人たちは、トルヒーヨを暗殺しました。
その後、穏健派のファン・ボッシュが大統領になります。
しかし６４年初めには、軍部がボッシュを追放し、権力を握りました。
軍部は内部分裂し、６５年４月には軍の一部がクーデターを図り、内乱となります。
そして、ボッシュが政権を取り戻しそうになりました。
アメリカ政府は、「ボッシュは共産主義者だ」と誤解していました。
そこでジョンソンは、アメリカ軍とＯＡＳ（米州機構）軍をドミニカに送り込み、内乱を鎮圧して保守政権を作ろうとします。
ジョンソンは１９６５年５月２日のＴＶ演説で、
「共産主義の独裁者が、アメリカを脅かしている。アメリカは、これを許さない。」と語ります。
これが、『ジョンソン・ドクトリン』と呼ばれるものです。
この宣言は、「共産主義がアメリカ大陸を脅かしていると判断すれば、いつでもアメリカは軍事力を行使する」との考え方です。
この考え方は、中南米諸国とアメリカ国内に、怒りと反発を呼び起こしました。
この宣言は、アメリカが１９４８年に署名したＯＡＳ憲章の「非干渉条項」に違反するものでした。
「ドミニカの共産勢力など、アメリカにとっては脅威でも何でもない」と報道で知らされると、反対の声はさらに大きくなりました。
（2014.4.7.作成）