東南アジアでの政策
間違った信念により介入を進め、戦争を拡大させてしまう

(アメリカの時代、世界歴史体系アメリカ史2、から抜粋)

1964年の末には、南ベトナム政府はバラバラの状態となり、アメリカ兵はテロの標的になって死んでいました。

それでもジョンソン大統領は、関心を持たなかった。

彼の関心は、国内での「偉大な社会の計画」にあったのです。

しかしジョンソンは、1965年2月に行動を起こします。

この時、プレイクのアメリカ軍基地で、共産ゲリラが7人のアメリカ兵を殺し109人を負傷させたからです。

ジョンソンは空爆を命じ、以後は北爆(北ベトナムへの爆撃)は恒常化します。

3月8日には3500人の地上軍を投じ、初めての地上軍の派兵となった。

4月には10億ドルの南ベトナム政府への軍事支援を発表し、7月にはベトナムにいるアメリカ兵は12.5万人に膨れ上がった。

年末には、アメリカ兵は16万人に増加しました。

ジョンソンが東南アジアへ大きく介入したのには、次の理由があります。

@ 「東南アジアで共産主義が勝利を収めたら、他の地域でも共産革命が成功する」と
  信じていた

A 「中国は、世界のあらゆる大陸で共産革命を助けている」と信じていた

B 「毛沢東やホーチミンは、ヒトラーのように世界帝国への野心を持っている」と
  信じていた

C ベトナムで敗れることが、自身の支持率の低下につながる事を恐れた

D アメリカの力を過信し、「他国の助けがなくても勝てる」と考えていた

E 「戦争規模をゆっくり拡大していけば、国民は支持してくれる。アメリカ国民は、
   強い大統領を支持する。」と信じていた

だが、ジョンソンの見立ては間違っていました。

まず、共産主義がアジアで拡大する事と、中南米などで共産主義が拡大する事とは、関係性が無かった。

それぞれの地域には、それぞれの情況がありました。

第2に、ホーチミンのようなベトナム民族主義者は、むしろ中国と戦ってきた時代の方が多かったのです。

(ベトナムは、中国からの侵略と戦ってきた歴史があります)

中国自身も、文化大革命の内部闘争により、混乱の中にありました。

第3に、毛沢東やホーチミンには、ヒトラーのような野心はありませんでした。

特に北ベトナム軍は、ヒトラーの軍団とは比較にならない貧弱さでした。

第4に、戦費が拡大するにつれて、ジョンソンが一番やりたかった「偉大な社会の計画」は予算不足になりました。

ベトナム戦費は、66年の80億ドルから、67年には210億ドルに跳ね上がります。

第5に、アメリカの国力は落ちてきており、ドルは弱くなってきていました。

第6に、北ベトナムは犠牲者が増加し続けても、降伏しませんでした。

アメリカ政府は、統計を修正したり、嘘の数字を書いたりしていた。

ベトナムにいたアメリカ兵は、そうした統計を「最大に誇張された推量」と呼んでいました。

アメリカは、ベトナムについて無知でした。

戦争の激化により南ベトナムでコメが収穫不能になると、アメリカは自国のコメを急送しましたが、そのコメは砂袋につめる砂の代わりに使われるほど、ベトナム人は嫌っていたのです。

ジョンソン大統領は、絶大な権力を持っていました。

コラムニストのジェイムズ・レストンは、「ソ連の指導者でさえ、外交政策であれほどの自由は持っていない」と書きました。

議会が「憲法は、宣戦布告の権限を議会に付与している」と言って、ジョンソンの暴走に不平を表明したとき、司法次官のカッテンバックは「憲法は時代遅れだ」と議会に告げました。

民主党のユージン・マッカーシーは、「この発言は、私が経験した中で最低だ」と怒りを表明します。
そして、1968年の大統領選挙でジョンソンに挑戦する決心をするのでした。

(2014.4.9.作成)


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