子供の頃の思い出② 
ビックリマン・シール① ロッチの衝撃

『ビックリマン・シール』。

これは、「ビックリマン・チョコ」に付いていた、おまけのシールです。

私が小学3~4年生の頃に、このシールを集めるのがブームになりました。

1985年の頃の話です。

今から振り返ると、なぜあそこまでのめり込んだのかが、分からないです。

子供というのは、何かを集めるのが好きみたいですね。
友達と競い合いながら、コレクターっぷりを見せ付けあうのが楽しかったのでしょう。

私が「ビックリマン・シール」に出会ったのは、小学3年生の時でした。

子供たちは、友達と遊ぶ合間にお菓子を買って、友達と一緒に食べるのを、かなり大事な時間にしています。
私もよく駄菓子屋などでお菓子を買って、友達と一緒に食べていました。

そんな、ある日の事です。

友達の誰かが、「ビックリマン・チョコという30円のお菓子があるんだ。なかなか旨いし、おまけでシールが付いてくるんだぜ。」と教えてくれました。

当時はまだ私の小学校では、その存在は知られていませんでした。

私は、「ほー、そんなものがあるのか。30円なら買える値段だし、1回買ってみるか。」と思いました。

当時は、『野球カード』という「野球選手の写真カード」が入ったスナック菓子も出回っていて、これも30円でした。

これは割と老舗の存在で、私が小学1年生の頃からありました。
私たちはたまに買っては、カードを入手していました。

私は、「ビックリマンという奴も、野球カードみたいなものだろう」と想像して、スーパーマーケットで1個を買ってみたのです。

当時はまだ、駄菓子屋ではビックリマン・チョコは扱っていませんでした。
この後、人気が出てからは、駄菓子屋も置くようになりました。

で、パッケージを開けてみたのですが、チョコが間にはさまった正方形の、7cm四方の板状のお菓子でした。

食べてみたら、かなり旨くて、「なかなかいい味してるなあ。たまになら買ってもいいな」と思いました。
外側のチョコを包む部分がサクサク感に優れていて、そこが美味しさのポイントでしたね。

お菓子を食べ終わった後には、添えられているシールをさっそく手に取って観察しました。

大きさは5cm四方くらいで、何やらコメディ・タッチのキャラが描かれており、裏面には説明文が書いてありました。

説明文を見たのですが、訳がわからない内容で、「意味が全く分かんねえなあ…。まっ、いいか。」と思いました。

ビックリマン・シールの説明文は(ビックリマンの世界観は)、薬でイってしまった人が書いたみたいな、壊れた内容でした。
大ブームになった後でも、私たちは意味不明な内容に付いていけず、完全に無視していましたね。

この出会い以来、お菓子の味が良かったので、たまにビックリマン・チョコを買うようになりました。

30円という値段は、私たち一般の子供にはやや高いもので、基本的には親と買い物に行く時にねだって買うようにしていました。

それで数ヶ月後には、シールが7~8枚くらい集まったので、私は自分のタンスにすべてを貼りました。

この時はまだ我が小学校ではブームは来ておらず、「ただ持っていてもしょうがないし、タンスに貼って飾りにしよう」と考えたのです。

私はビックリマンを、「数多くあるお菓子のオマケの1つ」としか考えていませんでした。

表面の絵は個性的で楽しいものでしたが、裏面の説明文は完全に壊れているし、特別に惹きつけられるものを感じなかったからです。

ところが、それから1ヵ月後くらい経ったら、いきなり学校でビックリマン・シールが流行り出しました。

確か、ガキ大将グループがシールを集め出して、それで流れが生まれたのだったと思います。

私は、そんなクラス内の動きを横目で見つつ、「ほー、流行り出したか。みんな遅いよ。俺はもう知っているし、集めてタンスに貼っているぜ。」と思い、密かに鼻高々でした。

みんなよりも先にビックリマンを知っていたという事実に、優越感を持ったのです。

私はすぐにブームは去るだろうと想像していたのですが、どんどん盛り上がってきて、さらにビックリマンのTVアニメが始まるや、完全に地位を確立してしまいました。

TVアニメが始まる頃から、ビックリマンの知識が浸透してきて、シールには「天使」「お守り(お助け)」「悪魔」の3種類がある事、シールには第何期という分類がありシリーズ化している事、が判明しました。

そうして皆が、善のキャラで絵もかっこいい「天使シール」を集めるようになったのです。

私は、ビックリマンがこのような広がりをみせるとは全く想定しておらず、愕然としました。

みんなが自分の集めたシールを見せ合うようになると、私はシールをタンスに貼った事を後悔するようになりました。

私は気にも留めていなかったのですが、タンスに貼ったシールには「ヤマト王子」があったのです!

ご存知の方も多いと思いますが、TVアニメの主役は「ヤマト王子」で、彼は大人気キャラです。

ヤマト王子のシールを持っている者が、あこがれの目で見られる状況になるや、「俺は、何て過ちをしてしまったんだ。」と激しく後悔し始めました。

皆よりも先行しており、良いカードを手に入れておきながら、それを活かせなかった自分に、「俺はなんてついていないんだ。神さま、ひどいよ。」と悲しくなりました。

自分のタンスに貼ってあるヤマト王子のシールを、私は切ない目で見るようになりました。

なんとか出来ないかと思い、シールをはがして復活させようと考えて、それを試みた事すらあります。

爪でカリカリとシールの端をめくろうとしたのですが、シールが駄目になりそうなので、断念しました…。

私は友達に、「俺はヤマト王子のシールを持っているんだよ!家のタンスに貼ってあるんだ!」と説いたのですが、「持って来ないと駄目だよ(そうじゃないと評価できないよ)」と、あっさり言われてしまいました。

あの時の切なさといったら…。

学校で凄いブームとなったので、私はもう一度、1から集め始めました。

私の小遣いは1日10円だったので、3日分を貯めれば1個買えました。

正直な話、私の家は貧乏だったので、集めるのに苦労しました。

大抵の家は、私の家よりも小遣いの金額が多く、シールの増えていくペースが速かったです。

私は、「この勝負に勝つのは、難しそうだ…」と思いました。

でも、評価基準はシールの枚数ではなく、『人気のあるシールを持っているかどうか』だったので、望みはありました。

私たちのなかで一番の人気があったのは、『キラキラした特別なシール』です。

これは、天使と悪魔の中で最も強い人物のシールで、デザインが特別に優れていてキラキラ光るようになっていました。

ただキラキラするだけでなく、ホログラフィックになっているものもありました。

キラキラ・シールは激レアで、50枚に1枚くらいしかありません。

仲間内でも持っている者は少なく、持っているだけで尊敬されるくらいに貴重なシールでした。

私たちは、これを「キラキラ・カード」と呼んでいました。

基本的に、「天使カード」とか「悪魔カード」と、シールではなくカードと言っていたと思います。

私は、「キラキラ・カードさえ持っていれば、すべては解決する。キラキラ・カード狙いで行こう。」と決めて、ビックリマン・チョコを買うときにはいつも「キラキラ・カードをお願いします!」と祈ってから購入しました。

でも、当たりはありませんでした。

さて。
ブームが来てから数ヶ月がたった、初夏の頃の事です。

『ビックリマンのアイス』が出た事を、私たちは知りました。

このアイスは1本50円で、ビックリマン・チョコと同じく、中にシールが1枚入っています。

シールはビックリマン・チョコと同じだったので、私たちは「人気が出たので、アイスでも出したのだな」と理解しました。

出た頃は、チョコの30円よりも高いので、無視してました。

でも夏休みに入ると、暑い日々が続き、遊びに行った親戚から小遣いをもらって懐が温かくなった事もあり、たまに買うようになりました。

このアイスは、木の棒がささっているよくある形のアイスキャンデーでしたが、『バニラ味とチョコ味が半々』になっていました。

右半分がバニラ、左半分がチョコ、といった感じです。

私はバニラ味の方を好んでいたので、いつもバニラ部分を先に食べて、後からあまり好きでないチョコ味の部分を食べていました。

ある時、友達と「どっちの味が好きか」を話した時に、チョコ味が好きな奴もいると気づきました。

私は、「へえ、みんなバニラを好きなのかと思っていたけど、チョコ味が好きな人もいるんだなー」と驚きました。

世の中には、いろんな味覚の奴がいるのだと、その時に悟りました。

私は、「チョコ味が好きな奴がいるなら、そいつと交渉をして、自分はバニラ部分を食べて、相手にはチョコ部分を食べさせればいいんじゃないか」と気づきました。

それ以来、誰かと一緒にビックリマン・アイスを食べる時は、相手の好みを聞いてみて、チョコが好きだった場合は交渉をするようにしました。

何回か、交渉は成功しましたよ(^-^)

私は、当時に仲良くしていたS君と、よくビックリマン・アイスを買って一緒に食べていました。

ちなみに、彼はバニラ味派だったので、交渉は上手く行きませんでした。

おそらく、私がビックリマン・アイスを食べた7回目くらいの時の事です。

S君も一緒に食べていたのですが、食べ終わって自分の獲得したシールを見ていたところ、S君が「おかしい、文字がおかしいよ」と言い出したのです。

私は理解できずに、「どうしたの? 何がおかしいんだよ」と訊きました。

するとS君は、自分がゲットしたシールの一部分を指差して、「ほら、ここ。ロッテのはずなのに、ロッチになっているよ。」と言うのです。

確かに、よ~く見ると、字が『ロッチ』になっていました。

私は、「たまたまだろ。そのシールが失敗しているんだよ。」と言って、自分のを確認しました。

そうしたら何と! 私のシールもロッチになっていたのです。

ビックリマン・チョコは、ロッテから出されていたので、シールの裏側にはロッテの文字が小さく書いてあります。

普段はそんな細かい部分は気にしていないため、私たちは何度もビックリマン・アイスを買っていながら、ロッチになっている事に気づきませんでした。

私たちは、少しの間、沈黙をしました。
「これは、一体何なのだろう?」と考え込んでいたのです。

そして話し合った結果、『とりあえずおかしいが、それが何を意味しているかは分からない』という結論に達しました。

その後、仲間内で徐々に、「ビックリマン・アイスに入っているシールは、ロッチという偽ブランドのものだ」という噂が広がってきました。

私たちは、びっくりしました。
まさか大人達が、そんな騙すような手を打ってくるとは思っていなかったからです。

現在では、中国産などの偽ブランドが世に蔓延していて珍しくないのですが、当時は子供の接する世界には偽ブランドはありませんでした。

だから、衝撃が走ったのです。

この衝撃の事件がみんなに知れ渡ると、私たちの間では、ビックリマン・アイスに入っているロッチ・ブランドのシールに価値があるのか無いのかで、論争が起きました。

すでに3~7枚くらい持っている者が多く、中には10枚以上を持っている者もいました。
だから、切実な問題だったのです。

私は、「基本のデザインは同じだし、1文字の違いがあるだけなんだから、同じ価値でいいじゃないか」と考えていました。

最初は、私と同意見の者が5割くらい居たのですが、徐々に「ロッチ・ブランドには価値は無い」との意見が大勢を占めるようになりました。

そうして、ロッチ・シールを廃棄する者すら出てきたのです。

このままでは混乱の中で、ビックリマン・ブームそのものが消滅しそうでした。

そうしたら、ある時に突然、ビックリマン・アイスに入っているシールが、正規のロッテ・ブランドになったのです!

私たちは、「おい! ロッテになったよ!」と言い合いました。

こうして、この問題は収束しました。

今から思うと、ロッテとロッチが話し合って、どういう形か知りませんが解決したのでしょう。

私たちは、そういう事情は一切考えずに、「なにやら突然に解決したなあ」とだけ思っていました。

ビックリマン・シールの人気が出たからなのか、最初からそういう戦略があったのかは知りませんが、私たちの学校で人気が出始めた頃に、『TVアニメ』と『漫画』でビックリマンがスタートしました。

これは、シールに書いてあるキャラクター達が、天使側と悪魔側に分かれて対決していく内容です。

お守りキャラは、一応は天使陣営に付いているのですが、とても弱い存在で悪魔陣営にいいように使われてしまいます。

TVアニメと漫画がスタートするまでは、お守りキャラもけっこう人気があったのですが、弱い存在で描かれたために一気に人気が急落しました。

私は割とお守りキャラのデザインが好きで、「お守りキャラは要らないな」という奴がいた場合、悪魔キャラのシールと交換したりしていました。

だから、ショックを受けました。

TVアニメと漫画では、私は漫画の方が好きでした。

自分の家には漫画はなかったので、友達の家で読み倒しました。

TVアニメは、確か日曜日の朝の7時半か8時から、30分間の放送していました。

私は、小学1年の頃までは日曜日は朝の6時くらいに起きて、遊ぶ時間を増やしていたのですが、小学3年の頃になると若干人生に疲れだして、日曜日は9時くらいまで寝るようになっていました。

なので、しょっちゅうTVアニメを見逃しました。

「今度こそ起きて見るぞ!」と決心するのですが、目覚めると大抵は9時すぎなのでした。

さらに、両親が離婚してそれまで住んでいた家から離れたことから、一時期は家にTVが無かったので、見たくても見られませんでした。

TVアニメの話題になると付いていけず、苦笑いを浮かべて話を聞くしかありませんでしたねー。

放映当初は大ブームとなっていたため、月曜日の学校では話題になる事がしばしばでした。

当然、私にも話が振られます。
そこで、「いや、見てないんだよ」と答えると、相手によってはバカにした様な目で見てきます。

なんだか負け犬になった気がするので、ある時、見ていなかったのにも関わらず、見たことにして、相手に話を合わせて適当に会話してみました。

すると、驚いたことに、ばれずに会話できるのです。

相手が話すのに相づちを打っていると、相手はどんどん見たばかりのアニメの内容を話していきます。
1分くらい相手に話させると、何となくどんなストーリーだったか把握できてしまうのです。

で、そこからは相手の反応をうかがいながら、こっちからも把握した(頭で想像した)ストーリー展開に基づいてしゃべっていく。

そうするとほとんどの場合、会話は上手く進み、相手に全く疑念を持たれませんでした。

これを何回か繰り返していくうちに、「人間というのは、夢中になって話していると、相手がどんな状態かに気が回らず、嘘をつかれていても気がつかない」と理解できました。

ただし、上手く話を合わせて誤魔化せても、自分のプライドは維持できるが、楽しくも何ともなかったです。

だから、相手を騙しとおせると分かったけど、すぐにやめてしまいました。

いつバレるかと思いながら話を合わせるよりも、「見ていない」と正直に答えて、少し相手に白い目で見られながらストーリーを教えてもらう方が、はるかに楽です。

それに、もし嘘をついているとバレたら、その友達との関係が一気に冷えてしまう。

要するに、割に合わないし、疲れるので、「やる意味ないな」と見切りをつけたのです。

私は、小学生の高学年からはずっと「正直者の尚立くん」で通してきましたが、それは嘘をつけない性格というよりも、『嘘にはメリットがない』と理解して行動しているからです。

嘘をつかない人間を、「不器用で世渡りの下手な、ダメな人間」と見る人もいます。

しかし私は、自らの経験から、「嘘をつかない人は、つけないのではなく、つかない事を選択している」と考えるので、『頭の良い優秀な人間』と評価しています。

ビックリマンが流行ってから半年以上が経つ頃には、熱心に集めている人は50~70枚くらいも持っており、それを見せびらかすようになりました。

私は懐事情の関係もあり、15~20枚くらいしか持っていませんでした。
そして、キラキラ・シールも手に入れられませんでした。

この頃になると、シールをかなり持つのが当たり前になったために、はんぱな量・質では自慢できなくなりました。

そこで、家が金持ちの奴には、『ビックリマン・チョコを箱ごと買う』という荒業を使う者が出てきたのです。

ビックリマン・チョコは、1ケースに50個くらい入っていて、普通はそのケースを前に「どれにしようかなー、迷うぜ」と悩みながら、1個を選ぶものです。

金がある人は、2~3個をまとめて買う者もいましたが。

そうやって少しづつ集めていく文化があったのに、その暗黙のルールを壊して、箱買いして一気にシールを揃える者が出てきたのです。

私のような1個づつ買っていた者たちは、「それは邪道だろう。そうやったらレアなシールも手に入るけど、それじゃあロマンがないよ。」と猛反発しました。

大抵の友達は賛同してくれたのですが、中には「とにかく揃えればいいんじゃないか。集まったのを見ると、凄いよ。」と言う者もいました。

私も、箱ごと買うような手段で集めたコレクションを見ましたが、それを見た時には「確かに凄いな。でもなんか虚しいよ。」と感じました。

この経験があったからなのか、この頃から私の興味は一気に減少していきました。

みんなはまだ集めていたのですが、私は離れていきました。

結局は、ビックリマンのブームは1年ほどで終わり、その後は私たちの中で話題にもならなくなりました。

今から思うと、シールに魅力を感じていたと言うよりも、宝クジを買うような感覚で楽しんでいましたね。

キラキラ・シールや天使シールが入っていたら、「当たり・勝ち」でした。

ビックリマン・チョコについては、後日談があるので、それを次回に書きますよ。

(続きはこちらです)

(2013年7月23日に作成)


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