子供の頃の思い出C
虫と戯れるB 蟻の大量虐殺をする@

まず最初にお断りしておきますが、今回のお話はとても残酷な描写がたくさん出てきます。

そういう話が嫌いな人は、読まない方がいいかもです。

私は、小学1年〜5年までの間、暇があると蟻を観察し、観察だけでは物足りないので
様々ないたずらをしました。

いたずらはどんどんエスカレートし、自分でも暴走していると感じながら、なかなか止められない日々が続きました。

後には深く後悔して止めますが、それまでに3000匹くらいは蟻を殺したと思います。

蟻たちに対しては、「申し訳なかった」との気持ちで一杯です。

これから書く事実については、私は深く反省しております。

一時期は、「あれだけ殺したのだから、地獄行きは確定かもな。人間と蟻に同等の
生命の価値があるならば、大量虐殺者となっているはずだ。死後の審判で厳しく追及されるだろう。」と思い、安眠できない日々が続いたほどです。

今回の記事は、懺悔の意味も込めて書きます。

私のした事について、「多くの子供が通る道」とするか、「悪魔の所業」とするか、
「子供のかわいいいたずら」とするかは、読者それぞれに任せましょう。

私が蟻さんとコミュニケイトを始めたのは、小学生に入って暫くした頃です。

小学校の校庭には、蟻がたくさん居て、特に花壇の所に巣を作っていました。

私は、小学生になると学童クラブに入り、学童クラブの部屋が校内に設置されていたので、放課後にはしょっちゅう校庭で遊んでいました。

そうして、蟻の巣を次々に見つけたのです。

暇があると花壇の前にしゃがみ込んで、蟻を飽きずに観察していました。

蟻は、大勢で巣から砂を運んだり、大勢で大きな虫を運んだり、列を作ってエサを運んだりと、見ていて実に面白いのです。

私は見始めると、1〜2時間くらいは平気で観察を続けました。

そんなある日、入学して半年ほどした2学期の中頃だったと思いますが、
いつものように蟻を観察していたところ、学童クラブの1年先輩であるN君が声を掛けてきたのです。

N君は2年生の中で一番優しい人で、後輩に対して全く威張らない人でした。
私はかなり、彼を慕っていました。

N君は、「蟻を見ているのかい? 蟻は色々な事が出来るんだよ、知っているかい?」と訊いてきました。

私は蟻を観察しつつも、怖くて手を出した事が無かったので、不思議そうに「そうなの?」と答えました。

N君は、「蟻は泳げるんだよ」と言い、すっと蟻に手を伸ばすと、1匹手に取りました。

その動作は大変に手馴れており、全く無駄の無い動きです。

私は、それまでに蟻を捕まえようとした事が何度かあり、上手く捕まえられないで苦戦していたので、とても驚きました。

蟻はかなり素早いし、身体が小さいので、つまんで取ろうとしても「スカッ」と空振りを
したり、捕まえると蟻を握りつぶしてしまって蟻がグッタリしたりと、活きのいい状態で
捕まえるにはかなりの技術を要します。

N君の捕まえっぷりを見て、「私もこうなりたい」と強く憧れました。

そして見よう見まねで修練を重ね、半年後にはほぼ百発百中で、蟻を元気なままでゲットできるまでに成長するのでした。

N君は蟻を持つと、花壇の脇にある貯水タンクに移動します。

私は(どうするのだろう?)と思いながら、付いていきました。

この貯水タンクは、コンクリートとタイルを使った四角形で高さが60cmほどのもので、雨水が溜まり常に30リットルくらいの水が入っています。

そこには、誰かが放したらしく、タニシが20匹くらい生息していました。
時期によっては、蚊の幼虫もウネウネと動いていました。

N君は貯水タンクの前に立つと、「よく見ていて。蟻が泳ぐから」と言って、
蟻を「ポトッ」と水の中に落とします。

すると、蟻は水面に着地して、そのまま水面を地面と同じ様に「スイスイ」と歩いていくのです。

その歩きっぷりを、N君は泳いでいると表現したのでした。

「へえ! 本当に泳ぐねえ!」と、私は感心しました。

N君は嬉しそうに、「凄いだろう?」と言いました。

当時はなぜ蟻が水面を歩けるのかを深く考えませんでしたが、蟻はとても軽いので、水の
表面張力により、地面に立つように足だけで浮けるのでしょう。

私は興味しんしんになり、蟻を捕まえに行っては、それを運んできてタンクに投下しました。

まだ蟻を捕まえるのに習熟していないので、2回に1回は蟻を捕まえるのに失敗し、
何匹も蟻を握りつぶしてしまいました。

蟻を30匹くらい泳がせてみると、『10匹に1匹くらい、水面に留まらずに底に沈んでいく奴がいる』と気づきました。

ポトッと落とすと、水面を通過して、一気にタンクの底まで「スウー」と沈んでいくのです。

面白い事に、底につくと地面と変わらぬ感じで、自然な素振りで歩きます。

私は、「へえ! 蟻って水の中でも平気なんだな」と感心しました。

そうして尊敬しながら見ていたのですが、1分くらいすると、いきなり水中の蟻はグッタリして、今度は「スウー」と一気に水面まで浮いてきます。

(どうした!?)と思い、浮いてきた奴を手に取ると、死亡しているのが確認できました。

この時に、『蟻も酸素が不足すると窒息死する』と知りました。

窒息死するのが分かったのだから、もう水中に蟻を送り込まなければいいのに、
『蟻が水底を歩く様がかっこいい』のと、『どこまで息が保つのかを試したい』のとで、
私は次々と蟻を水中に送り込むのでした。

ほとんどの蟻は投下すると水面に浮くので、それをプッシュして水面から沈下させました。

10匹ほど試した結果、『平均して1分くらいで窒息すること』、『グッタリして浮き上がってきても、まだ生きている奴もいること』を発見しました。

少しだけ、蟻の体力が分かった気がしました。

さて。

私が蟻でしょっちゅう遊んでいるのを見たN君は、新たな情報を提供してくれます。

ある日、私が蟻を観察していると、N君が現れて、
「蟻は甘いものが好きなんだよ。見ていて」と言い、唾をタラーと地面に落としました。

N君はその時、飴を口に入れており、唾液に甘い成分が混ざっているため、
次々と蟻が集まってきました。

私はすでに、絵本を通して蟻が甘いものを好むとは知っていました。
でも、飴を食べている時の唾液にすら集まるとは、想像していませんでした。

私はすっかり面白くなり、自分も飴を食べて、次々と唾液を地面に投下していきました。
すると、蟻が集まってきます。

蟻を餌付けしているような気になり、嬉しくなりました。

上機嫌になった私は、(よし、サービスしてやろう)と考えて、蟻の巣の入り口に向かってドバーッと大量の唾液を落とし、さらに飴玉を巣の近くにボトッと落としました。

蟻たちは、飴玉にだけ群がり、私の唾液は完全に無視されます。
少しバカにされたような気分になり、(現金な奴らだなあ)と思いました。

N君の指導の下で、私は急速に蟻と親しんでいきます。

3学期に入りしばらくすると、N君と同等の蟻マスターにまで進化しました。

この頃になると、アイディアの豊富な私が、蟻遊びの主導権を握るようになります。

蟻の泳ぐ様をよく観察しようと思い、N君に「バケツに水を張って、そこで泳がせよう」と提案しました。

貯水タンクは、苔がたくさん生えており、水底の蟻の観察には適していません。
バケツならば、水底の蟻も心ゆくまで眺められ、一挙手一投足を理解できます。

私たちは校内にあるバケツを拝借し、水を張って蟻の巣の近くに置き、
次々と蟻を水中に放り込んでいきました。

5匹くらいの蟻を水中に入れて、「どいつが一番息が続くか」などと観察しました。

調査した結果、人間と同じく、蟻にも息の続く時間に個体差がある事が判明しました。

大抵は1分くらいで死んでしまうのですが、中には2分くらい水中にいても、何とか生きている者もいるのです。
「やるじゃないか」と感心しました。

2人で蟻の泳ぐさま(溺れるさま)を観察していたのですが、そのうちにエスカレートして、『バケツの水を手でグルグルと回す事』を始めました。

水をグルグルと一方向に回転させると、水は渦を描いて、竜巻のようになります。

そうなると水中の蟻は、渦の中に入り込み、大型ハリケーンに巻き込まれた家や車のように、ものすごい勢いで回転します。

蟻がひらひらと向きを変えながら猛烈な速度で水中を移動している姿は、ある意味では美しさすらありました。

私は、可哀相だなと感じつつも、彼らの回転する様にすっかり感心しました。

大抵は死んでしまうのですが、中にはタフな奴もいて、1分間くらい渦に巻き込まれて回転しても生き延びる奴がいるのです。

私は「お前は凄い」と感心し、「よし、その根性には感服した。見逃してやる」と、
グッタリしてよろよろと歩く蟻を、巣の近くに戻しました。

私たちがバケツを使って蟻を虐待しているのを発見した学童クラブの先生は、軽蔑したような目つきで「可哀相だから止めなさい」と言ってきました。

彼女は、(こいつら、何という遊びを思いつくんだ)と呆れている様子でした。

その時は大人しく従いましたが、先生が居なくなると、また再開するのでした。

私が2年生に進級すると、3年生になったN君は学童を卒業していきました。

その後は、私は独り立ちをして、さらなる蟻の探究に邁進していきます。

この頃になると、蟻の巣が校庭の至る所にあるのに気づいており、まず「校庭内の蟻を、しっかりと把握しておこう」と考え、くまなく回って調査を行いました。

すると、『校庭に生息する蟻には3種類がある事』に気付かされました。

1つは、スタンダードな1cmくらいの蟻です。

こいつが、私とN君で泳がせたりしていた奴です。

このスタンダード・タイプ(一番多く見かけるタイプで、1cmくらい)の他に、
『2mm位の小さいタイプ』と『1.8cm位の大きいタイプ』がいるのです。

ここからは、小さいタイプを「小蟻」、スタンダード・タイプを「中蟻」、大きいタイプを「大蟻」と書く事にします。

小蟻は自宅の近くにもおり、すでに出会っていました。
その出会いは、『虫と戯れる@ だんご虫にちょっかいを出す』に書いています。

私が驚いたのは、1.8cmの「大蟻」です。

初めて見た時は、あまりの大きさとごつさに、「こいつは、本当に蟻なのか?」と疑ったほどです。

身体の節々がでかくてがっちりしており、見るからに体力と根性がありそうです。

あまりに大きいので、思わず手を出すのを控えるほどです。

恐る恐る捕まえようとすると、噛まれてしまい、「チクッ」と血が出るかと心配になるほどの痛みが指先に走りました。

私はびっくりし、(こいつには手を出さない方がいいな…)と悟りました。

この大蟻に手を出せるようになるのは、さらに蟻マスターとして進化する小学3年生になってからになります。

ちなみに、私の田舎は北海道の小樽なのですが、そこに夏休みに帰省していた時(たしか小3の時)に、家のすぐ近くで『身体が細長く、胴体の中心部が赤いタイプ』の蟻を発見しました。

これは東京では見かけず、北国に特有の蟻かもしれません。

赤い胴体はかなり気持ちが悪くて、毒を持っている感じすらあるので、あまり手出しはしませんでした。
そのため、詳しい生態は知りません。

話を戻しますが、3種類の蟻がいる事に気づいた私は、比較調査を行いました。

それぞれの特徴を、じっくりと観察してみたのです。

その結果、「中蟻が、いちばんちょっかいを出すのに適している」と判りました。

小蟻は小さすぎて観察に適さないし、大蟻は噛まれると痛いので手を出しづらいです。

それに、中蟻は巣が多く、校庭のあちこちに巣があります。
それに対して、大蟻はやや希少な存在で、校庭内に巣は2つだけでした。

私は改めて、中蟻の庶民性に気づかされ、「こいつを調査の中心に据えよう」と決めました。

2年生になってしばらくする頃には、中蟻を指先で捕獲するスキルもほぼ完成の域に達し、どんなに元気が良くて素早い中蟻も、一発で捕まえられるようになりました。

蟻が歩いていくのを、後ろから(お尻の方から)「サッ」と親指と人差し指でつまむのですが、気合を入れすぎると蟻を握り潰してしまいます。

指先の力を抜き、精神を集中させた上で、蟻の動きを予測しながら、目にもとまらないほどのスピードで「ピュッ」と捕まえます。

これが出来るようになるには、最短でも半年がかかります。

私は、自らがとても楽しんでおり、先輩のN君から伝授されたノウハウを受け継いでいく
使命感にもかられ、

『学童クラブに入ってきた1年生の後輩たちにも、蟻の観察を教えてあげよう』

 と思いました。

うちの学童クラブは、3年生になるとほとんどが抜けていくので、私は2年生にして「最上級生」の立場になりました。

そこで、後輩の面倒を見る事になりましたが、2年生の中で最も社交的で後輩の面倒見が良いため、1ヵ月もすると完全に学童クラブのリーダー格になりました。

1ヵ月くらい経って後輩たちが馴染んできたある日、「機は熟した」と見た私は、
後輩たちに

「おい、面白い遊びがあるんだよ。蟻を観察して、色々とやるんだ。
 面白いから、付いて来いよ。」

 と声を掛けました。

そして、後輩を引き連れて校庭に出て、蟻の巣がある所にいき、
「知ってるか? 蟻はこんななんだぞ。 捕まえ方は、こうだ。」などと教えました。

私は熱心に指導し、後輩たちも興味深そうに蟻と触れ始めます。

私は、(よし、上手くいったな)と思った。

ところが、です。

15分くらいすると、飽き始める子が出てきて、30分が経つ頃には皆が去って行きました。

取り残された私は、(これからがいいところなのに……)と、一人で寂しい気持ちを抱えながら蟻の巣の脇に佇みました。

私はこの時に、『後継者の育成は、大変に難しいものだ』と知りました。

7歳にして、「後継者となれる人物と出会えるのは、とても貴重なことなのだ」と悟りました。

学童クラブの後輩を見た中では、私ほどの情熱を蟻に注げる者はいません。

私は、「後継者の育成は諦めよう。1代限りのものになる可能性は高いが、一人で蟻を
さらに探究していこう」と決めました。

そうして、さらに蟻にちょっかいを出し、ついには大量虐殺にまでいってしまうのでした。

そうした事は、次回に書いていきます。

(続きはこちらです)

(2014年1月15日&28日に作成)


エッセイ 目次に戻る