「オン・ダイアル Vol.4」おまけ②
「Bird Of Paradise」「Enbraceable You」のコード進行

  おまけの第2弾として、「Bird Of Paradise」と「Enbraceable You」のコード進行を
  紹介いたします。

  前者は、スタンダード曲の「All The Things You Are」のコード進行を使い、パーカーが
  自由自在にアドリブを展開する曲です。

  後者もスタンダード曲ですが、この曲はかなり難しい進行をしています。
  この曲を演奏して、かっこいいものに仕上げている人は、ほとんどいません。

  ここでのパーカーのヴァージョンは、両曲の理想的な模範例なわけですが、真似をしても近づくのは
  無理だと思います。

  多くのジャズ・ミュージシャンが憧れ、必死に真似をしながらも、全く真似が出来ないという、
  至上の演奏です。

  『近づく事は出来ないと悟りながら、それでも憧れるあまりコピーをしてしまう』

  それもまた、美しい人生です。

  私もかつて、その美しい道を歩みました。

  これからその道を歩む人のために、ここでコード進行を紹介しましょう。

「Bird Of Paradise」   キーはA  形式はABCD

 イントロ

|D7(♯9)      |D7(♯9)      |C7(♯9)      |C7(♯9)      |

|D7(♯9)      |D7(♯9)       |C7(♯9)      |C7(♯9)      |

 A

|Fm7         |Bm7       |E7        |AM7       |

|DM7        |Dm7   G7    |CM7        |CM7        |

 B

|Cm7         |Fm7        |B7        |EM7        |

|AM7        |Am7   D7    |GM7         |GM7         |

 C

|Am7-5       |D7          |GM7        |GM7       |

|Fm7-5       |B7         |EM7         |C7        |

 D

|Fm7         |Bm7       |E7        |AM7       |

|DM7        |Dm7        |Cm7         |Bm7        |

|Bm7        |E7        |AM7        |Gm7-5  C7    |

○ コード進行の解説

 この曲は、非常に凝った作りをしています。
 転調が多いし、小節数もDは12小節になっています。

 まずAですが、私の場合、1~5小節目はAキーで解釈します。

 つまり、Ⅵm7 - Ⅱm7 - Ⅴ7 - ⅠM7 - ⅣM7 と動いていると考えます。

 そして、6小節目でCキーに転調したと捉えます。

 Bの1~5小節目は、Aと同じ動きを、今度はEキーで行っています。

 そして、6小節目でGキーに転調します。

 要するに、ABの部分だけで、4つのキーが出てきます。

 Cに入ると、これまでとは違う展開になります。

 1~4小節目は、Gキーなので転調はしていませんが、Am7-5 ー D7 と、Gmキーの
 Ⅱ-Ⅴが出てきます。

 これは、短調からの借用和音という奴で、GキーなのにGmキーの感じでⅡ-Ⅴをこなして、
 GM7に繋がないといけません。

 5~7小節目も、同様です。 ここでは、Eキーに転調しています。

 8小節目でC7が出てきて、Fmキーに転調する(一時転調する)感じを出しつつ、AキーのⅥm7
 であるFm7に進みます。

 Dは、Aと最初の5小節は同じです。 6小節目から異なる動きになり、Dm7(Ⅳm7)に進みます。

 この12小節は、ずっとAキーで解釈していいと思います。

 最後の Gm7-5  C7 だけが、次のFm7に進むためのⅡ-Ⅴ進行で、異色な感じ
 (Aキーではない感じ)です。

 いちおう、エンディングのコード進行も書いておきます。

 エンディング (Dの9小節目から書きます)

|Bm7        |E7        |AM7        |C7         |

|D7(♯9)      |D7(♯9)      |C7(♯9)      |C7(♯9)      |

|D7(♯9)      |D7(♯9)     |C7(♯9)      |C7(♯9)      |

「Enbraceable You」  キーはF  形式はABA'C

 イントロ

|FM7   D7    |Gm7   E7   |Am7   D7   |Gm7   Gm7  C7  |

 A

|FM7         |Bm7-5 E7(♯9)|Gm7        |C7    Am7 D7 |

|Gm7          |E7       |FM7   Gm7 C7 |FM7   Em7-5 A7 |

 B

|Dm  DmM7onD  |Dm7onC  Bm7-5 E7 |Am7     |D7   D7  |

|CM7   Am7    |Dm7   G7   |Gm7        |C7    F7   |

 A'

|FM7         |Bm7-5 E7(♯9)|Gm7        |C7    Am7 D7  |

|Gm7          |E7       |FM7  (Gm7)   |Cm7   B7    |

 C

|BM7      |Em7-5 A7  |Dm DmM7onD Dm7onC  |Bm7-5  Bm7 E7|

|FM7   Gm7  |Bm7  E7  |FM7   Am7 D7 |Gm7  Gm7 G7 |
(Am7  Am7  Gm7   C7   )

 エンディング (Cの1小節目から書きます)

|BM7      |Em7-5 A7  |Dm DmM7onD Dm7onC  |Bm7-5  Bm7 E7|

|FM7   Gm7 Am7 |Bm7  E7   |FM7 FM7(9)   |FM7(9)      |

○ コード進行の解説

 AA'は、7~8小節目以外は同じです。

 Aの2小節目の Bm7-5 ー E7 は、トニック・コードの代理コードとされているもので、
 私はトニック・ディミニッシュの変形だと考えています。

 つまり、Fdimの代理コードだと思います。

 E7から3小節目のGm7に進むのは、かなり違和感がありますが、「そこがかっこいいのだ」と
 プラスに考えれば対処できます。

 A'の7小節目には(Gm7)がありますが、これも入れなくていいコードです。

 むしろ8小節目のCm7に繋ぐには、入れない方がスムーズに行きます。

 でも、パーカーのアドリブ・フレーズがGm7を想定している感じなので、いちおう表記しました。

 BCには、ベース音が「D音から半音で下降していく所」があります。

 ここは重要なアレンジ部分だと思うので、見づらくなるのを承知で、詳しく表記しました。

 Cの5~6小節目には、下に( )内のコードも書いてありますよね。

 これは、テイクAでのコード進行です。

 つまり、上の方がテイクBの進行で、下の( )内がテイクAの進行です。

 この部分だけは、テイクAとテイクBでコード進行が違うのです。

 私が想像するに、テイクAを録ってみたら、ここが変な響きだったので、修正したのだと思います。

 テイクAにおけるこの部分のパーカーのソロは、かなり不思議なフレーズになっていて、
 「ここは吹きづらいな、コードを変えようぜ」と決断したのだと思います。

 この曲では、パーカーが1コーラスのソロをした後には、マイルスのソロになります。

 ところが、このマイルスのソロは、Aを飛ばしてBから始まります。

 おそらく「収録時間の関係」か、「間延びすると判断した」ためでしょう。

 Cから、そのままBに行くのは進行として厳しいので、この時はBの最初の小節をFM7に変えて
 います。

 2小節目からは、同じ進行になります。

 この曲のアレンジは、大変に凝っており、最高におしゃれです。

 アレンジをしたのは、パーカー・バンドの音楽監督をしていたマイルスだと思いますが、
 かなり熟慮して決めたと思います。

 この録音の時は、マイルスはまだ21歳だったのですから、ものすごい早熟ぶりですね。

(2014年2月27日に作成)


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