日本版NSCと特定秘密保護法案の真意は、戦争をできる体制にしていくこと
佐藤優さんの解説①(2013.12.4.)

今回に紹介するのは、佐藤優さんのラジオでのお話しです。

佐藤優さんは、元国家官僚の方ですが、元官僚の方としては珍しく、分かり易くはっきりと(回りくどくない)解説をする人です。

私は、彼の著作は何冊も読んだ事があります。

彼の意見や考え方は、私と食い違うものもかなりあるのですが、いつでも正直に発言しているので、私は敬意を持っています。

ユーチューブにアップされている佐藤さんのお話しの中で、とても私の心に響いたものがあります。

今年の11月1日に放送された「くにまるジャパン」という番組でのものです。

それをノートに取って学んだので、ここに記して、皆さんとシェアしたいと思います。

○ 佐藤優さんの話
 (くにまるジャパン 2013年11月1日放送分から)

日本版NSCと特定秘密保護法案は、セットになっています。

この2つは、日本の在り方まで変えてしまいます。

NSCを一言でいうと、『戦争をするかしないかを決める組織』なんです。

日本は憲法9条があり、戦争をしない事になっています。

だから、戦争について決める機関が無いのです。
相手が攻めてきた時に反撃するだけだから、主体的な判断はしなくていいのですよ。

でも、「守る事と攻める事は一緒だ(守るためには、攻める時も必要だ)」と考える人もいます。

NSCを創設する事は、日本が戦争できる体制にしていく事なんです。

少し古い言葉になりますが、『統帥権』というものがあります。

『統帥権』とは、「軍隊を指揮する最高の権力」という意味です。

これは、戦前は天皇にありました。

そして天皇の下で、「参謀本部(陸軍)」と「軍令部(海軍)」が、統帥権を持つことになったのです。

陸軍大臣や海軍大臣もいましたが、内閣に属しており、統帥権はありませんでした。

内閣とは全く関係のない所で、参謀本部と軍令部が「天皇と直結している、独立した組織」という事になって、それがだんだんと肥大して、戦争への道を進んだのです。

NSCは、それと同じ様な機能を果たす事になります。

(今回は、国会や司法が形骸化して、NSC・行政が肥大化する)

実は、日本は20年くらい前から、国家の在り方が変わっています。

集団的自衛権も、事実上は行使しているわけです。
イラクに行ったり(アメリカ対イラクの戦争に参加したり)、インド洋で洋上補給に参加したりしています。

憲法と実際の行動の辻褄あわせが、今回のNSCと特定秘密保護法案だと、僕は思っているんです。

今の安倍政権や、その前の民主党政権もそうですが、「白紙委任状を国民から得ている」と、かん違いをしていると思います。

自分たちが「これが国家のためになる」と考える事は、何でもやって構わないと思っている。

NSCは、『戦争するかしないかを決める機関』なんです。

これをはっきりと説明して、国民の理解を得なければいけない。

国民の理解を得られないならば、NSCを創ってはいけないのです。

そういう説明や配慮を一切しないで、どんどんと暴走しています。
それが怖いです。

日本版NSCについては、「災害対策などにも対応する」と説明されました。

でも、危機管理とNSCは関係ないです。

外国の情報収集も、NSCとは関係ない。

じゃあ、NSCは何をするのか?

「それは、秘密だから言えない。(特定秘密保護法で秘密に指定する)」という事なのです。

NSCが何をするかは、現時点では明確ではありません。

NSCで議論する事は、特定秘密保護法で秘密にするつもりです。

私は、『NSCは、統帥権を預かっているという意識の下で、戦争するかしないかを決める機関になろうとしている』と考えます。

今の政府は、『目に見えない憲法がある』という発想なんです。

成文の憲法とは、異なる状況があります。

例えば、自衛隊(軍隊)や、私立大学への国からの助成金、です。

「こういう事実は、目に見えない憲法があるのだ」と考える人がいるのです。

この考え方がもっと進むと、かつてのナチス・ドイツの憲法理論になります。

ミュンヘン大学の教授でオットー・ケルロイターという人がいました。
この人は、ナチスの憲法理論を作った人です。

ケルロイターは、こう主張しました。

「憲法を変える事はしなくていい。
憲法の解釈を変えていけばいい。

あるいは、憲法と矛盾する法律をいくつも作るのを積み重ねればいい。

そうすれば、事実上のナチス憲法を作れる。」

彼は、「目に見えないナチス憲法を作っちゃえばいい」と主張したのです。

これが、ナチスの手口に採用されました。

どうも最近の日本政府(安倍・自公政権)は、ナチスの手口をしているのではないかと思うのです。

憲法改正などの正面からの議論を避けて、勝手に憲法の枠を外れた事をしようとしている。

日本版NSCと特定秘密保護法案は、この政府の動きが集約的に出てきている感じがします。

日本が中国などとの問題を有利に解決するには、国際世論を味方に付けなければいけません。

今の日本は、憲法を変えないで、憲法とは違うことを始めようとしています。

これでは、国際社会では信用されません。

国際社会から見たら、「変な事をしているなあ、民主主義の国なのか?」と思われかねません。

イギリスは日本版NSCに賛成していますが、イギリスは未だに検閲が認められているほどの、非民主的な国なんです。

ガーディアン紙は、エドワード・スノーデンさんからもらった情報について、「押収するか、見ている前でのデータの破壊か、どちらかを選べ」とイギリス政府に言われて、破壊を選びました。

こんな事は、アメリカやドイツだったら、政府は絶対に出来ません。

イギリスにはそもそも、成文憲法がありません。

「目に見えない憲法があり、それは判例で出てくる」という考え方なのです。

イギリスは、『エリートが支配している国』です。
だから、貴族制がある。

その代わり、戦争になったらエリートが一番最初に行きます。

「外交は、下々の者には触らせない。国家機密があるのは当たり前だ。スパイ行為はOKだ。」という感覚の国なんです。

日本人の多くが知っているのは、『ホワイト・イギリス』です。

その裏側に、『ブラック・イギリス』もあります。

その『ブラック・イギリス』が顔を出してきて、「日本版NSCと特定秘密保護法案は、なかなかいい。協力しようではないか。」と言ってきているのです。

イギリスは、かつて香港を植民地にしていましたが、今でも中国に権益を持っています。

イギリスは中国への足がかりとして、東シナ海に同盟国が欲しいのです。

かつての日英同盟の時のように、日本と取り引きをしようとしている。

日本版NSCは、イギリスのやり方を導入しようという発想があります。

アメリカは、日本版NSCに構う余裕はありません。

アメリカは足元に火が付いていて、日本を考えていません。

オバマ大統領は、可哀相なんですよ。

NSAが全世界で盗聴をしていたなんて、知らないですよ、彼は。

通信傍受の世界では、担当している人間は「のぞき屋」の心理になってくるんです。

情報というのは、ありすぎると無い状態に近づきます。(処理しきれなくなるのです)

そういう愚かな事を、アメリカはやっています。

日本でも盗聴は行っているし、日本では民間でも盗聴ができるのです。

日本では、合法的に通信傍受ができます。

電波法では、通信傍受は第三者に漏らさなければやっても構わないのです。

(前半は終わり)

長文になっているので、記事を2回に分けますね。

続きはこちらです。


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