アベノミクスについて
的外れな政策であり、真の景気回復には繋がらない②

(ユーチューブの動画から要約)

○ 第2の矢 機動的な財政出動 的をかすめる程度の矢

アベノミクスの第2の矢とは、『機動的な財政出動』です。

この中心は、「公共事業によるお金のばら撒き」です。

昨年度の補正予算では、5兆円の公共事業の予算を組みました。
今年度も5兆円の予算を組み、「合計で1年間で10兆円の公共事業をして、お金をばら撒く」事を決めています。

これは、1990年代の日本が行った政策であり、小泉政権以後はいったんは縁を切った政策です。

この政策は、ケインズ主義(土建国家的な主義)の景気対策です。

小泉政権以後の「新自由主義」は、このやり方に見切りをつけて、別のやり方を採ってきました。

現在は、新自由主義が行ってきた「構造改革」が行き詰っており、ケインズ主義に助けを求めている状況です。

「古い自民党はダメだ」と言っておきながら、古いやり方に助けを求めている状態です。

では、公共事業でのばら撒き(第2の矢)は、デフレ不況の克服の的に届くのでしょうか。

残念ながらこれは、「的をかすめる程度の矢(中心部には行かない矢)」です。

政府の財政出動は、銀行を飛び越えて(経由しないで)ゼネコン(土建業)や個人にお金がばら撒かれるから、直接に市場の中に(世の中に)入っていきます。

だから、公共事業に関係する企業や個人は、うるおいます。

そして、景気は多少は上向きます。

ただし、中心部(一般の人々)には、効果は無いです。

公共事業でお金をばら撒いても、一般家庭には行かず、一部の業種だけにお金が行きます。

だから、的をかすめる程度なのです。

現在のデフレ不況の根源的な要因は、『国民の家計消費が落ち込んで、内需不振になっていること』です。

なぜ物の売れ行きが悪いかというと、『日本のGDPの6割を占める、家計での消費支出が伸びないから』です。

このために、ダラダラと不景気が続いて、物価も上がらないのです。

やらなければいけない事は、国民全体の家計消費を増大させるような政策です。

つまり、福祉や社会保障にお金を回したり、地方公務員の給料を改善する方が、よほどいいのです。

ところが安倍内閣は、生活保護費をけずるとか、年金の支給額を抑えるなどをしています。

現在の消費不振は、長年に渡る「労働者の賃金の引き下げ(削減)」の結果です。

勤労者の所得が悪化し続けたために、消費が落ち込んだのです。

日本の一般サラリーマンの所得が一番良かったのは、1997年でした。

現在は当時に比べて、月給が5~5.5万円も落ちています。

(非正規雇用が増えているので、実際はこんなものではないです)

これを改善する方向に、矢を放たなければなりません。

○ 第3の矢 成長戦略 的に飛ぼうともしない矢

アベノミクスの第3の矢とは、『成長戦略』と彼らが呼んでいるものです。

これは、安倍首相の言葉でいえば、「日本を、世界で1番、企業が活動し易い国にすること」です。

彼は、「これで企業が成長して、経済成長が可能になるんだ」と主張しています。

これは要するに、『日本を、企業にとっての天国にする』という事です。

企業天国になれば、労働者にとっては1番働きにくい国になる(労働者にとっては地獄になる)のです。

これを実現するために、「規制改革の会議」では、労働市場の規制緩和(解雇規制の緩和)をやろうとしています。

限定された正社員を増やす(非正規の社員を多様化する)事を、しようとしている。

「企業の活動をしやすい環境を作るために、まず労働者をいたぶろう」というわけです。

もう1つ、『これまで企業が活動しにくかった分野に、企業を進出させること』も、成長戦略の目玉です。

どういう分野かというと、社会保障(医療・保育・教育など)です。

ここの規制を、とっぱらおうとしています。

こういう分野を市場にして、「企業はそこで伸びればいいんだ」という考えです。

この戦略で内需不振(不況)を打開できるかというと、出来ません。

今まで、「日本企業は、国際競争力を付けなければいけない」と言って、ガンガンと構造改革(新自由主義への転換)をしてきました。

そして、非正規雇用を増やして、総人件費を減らしてきました。

これが、消費を冷え込ませてきた原因です。

この愚行を、もう1回やる(さらに推進する)というのです。

この政策は、格差をいっそう拡大させるので、最初から的外れのもの(一般の人々の生活改善につながらないもの)です。

第3の矢は、的に向かって飛ぼうともしないものです。

現在の安倍内閣がしようとしている事は、「ターゲティング・ポリシー」と言われますが、『これから伸びそうな企業に、補助金をあげたり減税措置をしたりして、応援する事』です。

これをやってしまうと、企業はグローバルな展開をし始めます。
要するに、外に出ちゃうんです。

今は円安になってきていますが、企業の海外への投資は減っていません。

大企業たちは、国内を見捨てて、海外で稼ぐ方が儲けがいいので出ていきます。

企業が競争力をつければつけるほど、国内の産業や雇用は「空洞化していく」のです。

ですから第3の矢は、ブーメランの様に戻ってきて、「日本国民に突き刺さるような矢」です。

○村本尚立のコメント

二宮厚美さんの話は、日本のメディアで言われているアベノミクスの解説と大幅に違うので、世界の国々の状況について疎い人だと、「極論だ」とか「暴論だ」と思うかもしれません。

しかし最近の世界は、『一部のグローバル企業だけがどんどん成長していき、経済成長の恩恵はほとんどの人には無い』という状況になっています。

一般の人々が賢くなって連帯しないと、いつまでも貧困から逃れられない状況となっています。

重要な事は、『アベノミクスは、本当にあなたの生活の向上に寄与するのか』です。

ここを、しっかりと考える必要があります。

二宮さんの話は、まだ半分ありますが、後半は「財政再建」がメインテーマなので、『財政(借金)の問題』のページに書く事にします。

(2013年8月29~30日に作成)


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