政府の成長戦略について、日本が向かうべき道について
位川一郎さんの話
(2014.8.22.)

3日前(8月19日)の毎日新聞に載っていた1記事に、とっても共感しました。

安倍内閣の成長戦略や今の経済政策についての評論なのですが、私の思っている事とずばり一致しており、100%の賛同ができる内容です。

記者は位川一郎さんですが、非常に上手くまとめられた、滅多にない名文だと感じました。

そこで、ここで取り上げようと思います。

○ 位川一郎さんの記事の抜粋

6月に閣議決定された新しい成長戦略について、多くのメディアで論評がありました。

ほとんどの論者は、「良い成長戦略なら、必要だ」というのを了解事項として(前提として)論じていました。

それは妥当なのでしょうか。

成長戦略の「目玉」の大半は、弊害が多いので実施しない方がいいと、私は考えます。

例えば法人減税は、消費増税による個人の負担増を考えると、明らかに不公平です。

労働時間規制の緩和は、長時間労働や賃金引き下げにつながりかねない。

混合診療の拡大は、貧しい人が医療を受けにくくなるとの批判があります。

これらの政策に共通するのは、『企業重視』の考え方です。

安倍首相は就任以来、「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」と述べてきました。

首相が企業優遇策を打ち出すのは、①企業がもっと稼ぐ ②その果実は賃金を通じて一般国民に行き渡る という認識があるからでしょう。

しかし近年は、①と②の関係は断ち切られています。

景気上昇期だった2002~07年に、企業所得は87.2兆円→98兆円に増えたのに、雇用者報酬(賃金)は258.1兆円→255.6兆円に減っています。

今年の春闘での賃金のベースアップも、消費増税などによる物価上昇率に追いついてないと見られています。

今の日本では、企業が稼いでも賃金が増える保証はありません。

この構造の下での企業優遇は、国民に不公平感だけを広げます。

この際、成長戦略はやめて、政策の優先順位を「成長」から別のものにしたらどうでしょうか。

過去20年の日本のGDPの実質成長率は、年平均で1%にも届かなかった。

金融緩和などで一時的に成長しても、バブル崩壊で不況に転落するサイクルが繰り返されています。

この根本原因は、個人消費が飽和状態になって、消費者が新しいものをあまり欲しがらなくなった事にあると思います。

政府は「イノベーションが成長の原動力なる」としてますが、過去20年にパソコン・携帯電話・ネット通販などの画期的な製品・サービスは登場してきました。

だが、成長率は伸び悩んできた。

既に消費のボリュームが膨らんだ日本では、1分野でイノベーションが生じても全体を押し上げないのです。

私が新しい製品・サービスで欲しいものを自問してみても、思い浮かぶものは少ないです。

自動運転車はいらないし、リニア新幹線で時間を短縮する必要も感じません。

4Kテレビもぜひ見たいとは思わない。

一方で、既にある製品・サービスをもっと購入したい人は確実に沢山います。

衣食住・医療・介護・教育などをもっと充実させたいのに、それが出来ないのは、所得が足りないからです。

政府には、実現性の怪しい経済成長ではなく、「所得の公平な分配」による国民生活の向上を目指して欲しい。

「分配の原資がない」と反論されそうですが、企業には300兆円の内部留保があるし、個人の資産家も多いです。

これまで減税を繰り返してきた法人税や所得税を元に戻す(増税する)事をすれば、十分に原資になります。

もう1つ、経済成長には「地球環境を悪化させ、資源を減らす」という重大な問題もあります。

今の経済システムは、成長を目的に組み立てられている。

だから成長戦略に注目が集まるのですが、本当に必要なのは『経済成長しなくても維持できるシステムの構築』だと思います。

そのための議論をする人が増える事を望みます。

○ 村本尚立のコメント

「安倍内閣の掲げる成長戦略には弊害が多い」というのは、その通りだと思います。

戦略の目玉の1つが「カジノの解禁」というのを見た時には、あまりのアホさ加減に完全に脱力しましたよ。

カジノで恩恵を受けられる人なんて、国民の中でどれだけいるのでしょうか。

ラスベガスみたいに、もともと砂漠に等しい場所で何も魅力・特色がないのだったらともかく、日本には沢山の魅力があります。

それを活かせばいいんですよ。

もっときちんと考えてもらわないと困ります。

「企業が儲けても、それが国民に還元される保証はない」というのも、その通りだと思います。

三菱などの、原発再開・原発輸出や武器輸出といった、倫理ゼロの迷走を見ていると、「企業(特に大企業とその経営者)は、あまり信用してはいけないのではないか」と感じます。

ノーム・チョムスキーさんは、「大企業は、個人を尊重しない非民主的なファシズムの組織だ。」と説きますが、かなり当たっていると思います。

「日本はすでに成熟しているので、経済成長するのには無理がある」というのも、その通りだと思います。

『成長と消費=善。のんびりした暮らしと節約=悪。』という、企業目線の価値観から、そろそろ脱却しましょう。

「法人税と所得税を上げて、それをきちんと国民に分配しよう」というのも、100%賛成です。

最近の報道で、『全国の空き家の割合が、過去最高となり、13.5%に達した』と知りました。

地域によっては、20%近い所もあるそうです。

家を持てない人が増え、ネットカフェ難民など住む場所すら確保できない人が増えている中、空き家が過去最高なんて、政治の無能をこんなに示している事はありませんよ。

政府は、空き家を安く借りたり買ったりして、それを公営住宅として提供すればいいです。

そういうかたちでお金を使って欲しいですね。
景気対策という名の一部の人にしか恩恵のない公共事業ではなく。


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