7月6日に、女子サッカーW杯の決勝戦「日本対アメリカ」が行われました。
超話題になっていたので、皆さんも知っていると思いますが、結果は「2対5」でアメリカの圧勝でした。
私は7月3日の日記に書いたのですが、「アメリカは信じられないほど強い。普通に闘えば、アメリカが勝つ可能性が高い」と予想していました。
だから、2対5の結果にも驚きはありませんでした。
とはいえ、前半早々に4点を次々と取られるという、あの展開はショックでしたよ。
私は深い心の傷を負い、なかなか冷静に振り返ることができませんでした。
ようやく心の傷も癒えたので、今日はその感想を中心に書こうと思います。
この試合では、アメリカが『日本を深く研究していた事』が目立ちましたね。
それを如実に示したのが、1~2点目の「セットプレイでのグラウンダーのパスの使用」です。
アメリカは高さで優位にあるのに(日本には高さがないのに)、あえて低いボールで勝負するという、裏をかく作戦を立てたのです。
あれを想定していた日本人はなかなか居なかったはずです。
私も全く考えておらず、「そうきたか!」と唸りました。
アメリカが凄かったのは、単に裏をかいただけでなく、非常に精度の高いパスを出して、チャンスを確実にモノにした事です。
技術力の高さを感じさせたし、「本気を出した時の実力はすさまじいな」と脱帽しました。
アメリカは先制点を取っても守りに入らず、積極的なサッカーを続けて、前半16分までに4得点しました。
4点目は、センターラインからのロングシュートであり、普通は狙っていてもなかなか決まらないシュートなので「ツキがアメリカにあるなあ」と思いましたね。
日本の3失点は、CBの岩清水さんの所からだったので、佐々木監督は彼女を前半の途中にも関わらず交代させました。
この交代劇には驚きましたが、ベンチに戻った瞬間に泣き崩れる岩清水さんを見て、「こんな状態ではまともなプレイはできない、交代は妥当だ」と思いました。
そして、岩清水さんに代えて澤さんを投入し、ボランチの阪口さんをCBに置いてからは、格段に守備も攻撃も安定しました。
なでしこ達は、0対4の状況から、よく立ち直ったと思いますよ。
男子代表だったら、心が折れていたと思います。
あそこで諦めないのは、さすがです。
澤さんが入った頃からは、普段通りのサッカーができていました。
この試合では、阪口さんは素晴らしい活躍を見せていました。
多くの選手が動揺している時間帯でも、彼女は落ち着いていましたよ。
私は見ていて、阪口さんの実力の高さ(万能性の高さと、安定して活躍できる基礎技術の高さ)に改めて感動しました。
「本当に素晴らしい選手だ。この極限の状況でいきなりポジションを替えられたのに、動揺せずに活躍をしている。」と、尊敬心で一杯になりました。
阪口さんがCBに入った事で、後方からの組み立てがスムーズかつスピーディーになり、アメリカに劣らない状況になった。
パスがいい感じで回り始めて、「さあ、ここから盛り返すぞ」という雰囲気になったのですが、そこで異変が起きます。
佐々木監督は、菅澤さんを投入するという手を打ったのです。
川澄さんを下げて菅澤さんを入れるというあの選手交代は、失敗でしたね。
川澄さんは良い動きを見せていたし、日本のペースになってきていたのだから、ピッチ上の選手たちを信じるべきでした。
あの後、日本は失速してしまった。
佐々木さんは焦っていたのだと思います。
後半に入ってからの3人目の交代も、早すぎたと思う。
後半は、アメリカがペースを落とした事もあって、一進一退の攻防になりました。
日本の選手たちは、皆が精一杯のプレイをし、チャンスを何度も作っていました。
でも、なかなか決めきれなかった。
後半のアメリカは、95%くらいの力で戦っていたと思う。
それでも互角の展開なのだから、地力の差は明らかにあった。
考えてみると、アメリカは決勝戦までずっと余力を残しつつ戦ってきました。
全力を出しながら勝ち上がってきた日本とは、器が違っていました。
私は7月3日の日記で、「アメリカの力を100とすると、日本は93」と書きましたが、その差がこの試合では出ていたと思う。
ちなみに、今大会では4位となりましたが、ドイツの実力は94で日本よりもほんの少し上だと感じています。
現状だと、アメリカは100、ドイツは94、日本とフランスが93、イングランドが92。こんな感じです。
アメリカの力は傑出しており、1年後のオリンピックでも優勝候補なのは間違いないです。
正直な話、日本が1年間でアメリカに追いつくのは難しいと思う。
最高の伸びを見せても、アメリカに並ぶのが精一杯なのではないだろうか。
ここからは、なでしこジャパンがここからどのように強化・進化していけばいいかを考えたいと思います。
私は思うのですが、世界一になるには、『どこかの部門で世界ナンバーワンになっている』のが基本条件ですよ。
しかし、今の日本の場合、パスやトラップの技術、連係の良さ、運動量、あたりが長所なのですが、世界ナンバーワンと断言できる状態ではないです。
日本の最大の武器である『パスやトラップの技術、連係の良さ、運動量』についてすら、アメリカを上回っているか怪しい。
日本はアメリカに比べると体格や高さではかなり劣っているので、他の部門では勝っておかないとまずいのですが、残念な事に「ここでは上」と断言できる部門がないのです。
なでしこの強化については、弱点の克服を語る方も多いのですが、私としては長所である『パスやトラップの技術、連係の良さ、運動量』の強化が重要だと感じました。
パスサッカーを真髄とする日本としては、特に「パスとトラップの技術およびセンス」と「選手の連係」については、ダントツの1位を目指したいですね。
この部門では、アメリカを100とすると、現状の日本は99だと思います。
これを、日本105、アメリカ100くらいに持って行きたい。
この事は、男子代表についても同じだと思う。
世界一を目指すならば、パスとかポジショニングとかをもっと磨かないといけない。
男子代表は、ザックジャパンの後期には、良い出来の日だと、パスと連係で世界で5位くらいの内容を見せていたと思います。
だから多くのファンが期待したのですが、最近はその部門ではむしろ劣化している。
先日のシンガポール戦でも、選手たちは自分のプレイばかり考えていて、何人もの選手がペナルティエリア内で1ヵ所に固まるなど、連係は最悪に近かったです。
もっと周りの選手を見て、献身的なプレイをしないといけないです。
最近の男子代表は、選手の積極性を打ち出していて、それがプラスに働く時もありますが、我儘なプレイでチャンスを潰している場面をよく見かけます。
どうみても決まらない局面なのに、強引にシュートを打つのが目立ち、「決められる実力もないくせに、無理矢理に打つんじゃない」と思います。
「隣にフリーの選手がいるじゃん、シュートを打たずにそこに出せよ」という時も多い。
ザックジャパンの頃なら考えられない事ですよ。
えー、なでしこの話の戻ります。
もっとパスやトラップやポジショニングや判断力が高まれば、試合の主導権を握れるし、攻撃のスピードがアップします。
ここを磨いてほしい。
この部分では世界一になり、その地位をキープし続けてほしい。
日本人は、どうしてもパスが好きなんです。
気質的に、パスサッカー以外で日本が世界と渡り合うスタイルは築けないと思う。
最近は「ショートカウンター」が流行りの言葉になっていますが、どんな攻撃でも精度の高いパスは必要でしょ。
パス技術(足元の技術)で世界一になっておかないと、世界の舞台では体格で劣る日本は良い試合ができないです。
ぶれずに、流行に流されずに、パスとトラップの技術とセンスを追求し続けてほしいです。
男子のスペイン代表を超えるレベルを目指しましょう。
数日前に、8月初めにある東アジアカップの登録メンバーが発表されました。
海外組がいないのはともかく、宮間さんら国内組の中心メンバーも選ばれなかったのには驚きました。
「若手にチャンスを与えよう」との強い意志を感じる選考です。
W杯に出たメンバーは、上尾野辺さんや川村さんら、数人しか入っていません。
年齢的に見ても、今回はこの2人が中心になり、キャプテンも任されると思います。
私は、前から書いているのですが、川村さんの才能に惚れ込んでいます。
宮間さんらが居ないのだから、今こそ彼女が中心になる時です。
私は、「日本人がバロンドールを獲るならば、一番可能性があるのは川村だ」と思ってます。
それ位に、輝くものを持っている。
上記したようにW杯の決勝戦では、阪口さんがCBに入って、そこから長短のパスを出して攻撃の起点となりました。
あれは、本来は川村さんにやってほしい事だったんです。
川村さんには、「女版のベッケンバウアー」を目指してほしい。
判断スピードを速めていき、常にピッチ全体を把握できるように視野を拡げていけば、ベッケンバウアーみたいな知的でスケールの大きなプレイをするスーパーCBになれると思います。
今度のメンバーには、「柴田華絵さん」も初招集されましたね。
4月7日の日記に書いたのですが、彼女も素晴らしい才能を持っています。
すごく期待していますよ。
同じく私が期待の星としている「清家貴子さん」は、残念ながらA代表には選ばれませんでしたが、U-20に入ったそうです。
なでしこリーグでは得点王争いに絡んでおり、A代表に入る日も近いでしょう。
ちなみに、川村さんはボランチで出場しているのに、リーグの得点ランキングで3位につけています。
彼女は凄い才能を持っているから、謙虚に努力を続けてほしい。
まだまだ伸びしろはあると感じています。
成長を続けてバロンドールを獲るんだ! お前なら出来る。
ここからはテーマを変えて、なでしこリーグについて書きます。
宮間さんはW杯の間ずっと、「なでしこリーグを盛り上げるためにも、W杯で結果を出さなければいけない」と言ってました。
そして決勝戦の後に、「優勝できなかったので、なでしこリーグへの良い影響はないかもしれない」みたいな事を言いました。
宮間さんには、国内リーグについて危機感がかなりあるらしい。
最近は入場者数が千人未満の時も多かったし、未だに多くの選手がプロ契約になっていないという事実もある。
とはいえ、なでしこジャパンに過度の責任を負わせてはいけない。
私は、宮間さんは大きな誤解をしていると思う。
ぶっちゃけた話、代表の成績は国内リーグの観客動員数にあまり影響しないと思うのです。
実際に、男子の場合、代表の成績は良くないですが、観客数は多いじゃないですか。
国内リーグが盛り上がるかどうかは、各試合のクオリティが6割、宣伝が2割、代表の成績が2割といったところだと思う。
要するに、試合のクオリティを上げない限り、観客数が伸びていくのは難しい。
私はなでしこリーグの試合をテレビ観戦していますが、クオリティの点ではまだ物足りないと感じています。
一言でいって、ワクワク感があまり無いのです。
現状だと、代表が好成績を出し続けても、なでしこリーグが大きく盛り上がる事はないでしょう。
正直に言いますが、私は観客が千人くらいでのんびりしているなでしこリーグの風景が結構好きです。
選手たちが男性並みにガツガツやり合って、多数の観客がJリーグ並みに熱く応援したら、引いてしまうと思う。
なでしこリーグにはレギュラークラスの選手でも、お腹や太もものタプンタプンしている人が、少数ですがいるんですよ。
私の目には微笑ましいものと映るし、女性は脂肪が多いんだし、プロでない人が多いのだから別に悪い事とも言えない。
でも、プロリーグを目指すならば、あのタプンタプンの姿は排除しなければならない。
タプンタプンを排除するストイックな世界に進むのか、まったりのんびりで楽しむのかを、選手たちは決めなければならないと思います。
この選択の方が、代表の成績よりも大きな影響があると思うのです。
選手たちを見ていると、ほとんどはストイック路線(プロ化)を望んでいる気がする。
そうなると、タプンタプンは近日中に見られなくなるのだろうか。
私としては、女性同士が激しくやり合い、骨折などの怪我をしながら選手生活をする姿は、あまり見たくないです。
でも、のんびりしたリーグであり続けたら、各国は強化を進めているので、代表の成績は下がっていくでしょう。
難しい問題です。