タイトル安倍政権を見極める㉒
政権を支える特異な人々⑭
逮捕された田母神俊雄
(2016.4.25.)

(『赤旗日曜版』2016年4月24日号から抜粋)

前回の都知事選(2014年2月)に出馬した田母神俊雄(元自衛隊の航空幕僚長)。

彼は、同知事選での公職選挙法違反(買収)で、東京地検特捜部に逮捕された。

「安倍首相には大ショックだ」と自民党・参院議員は言う。

特捜部によると、田母神容疑者は選挙後の14年3月に、選挙運動の報酬として現金200万円を、自衛隊出身で選対本部長だった島本順光(買収容疑で逮捕)に支払った。

2人は、共謀して選挙運動員5人に280万円を渡した疑いもある。

買収の原資は、「田母神としおの会」(資金管理団体)の5千万円の使途不明金と見られている。

田母神俊雄は、自衛隊・空幕長をしていた2008年10月に、先の日本の戦争について「侵略戦争だったというのは濡れ衣」とする論文を発表した。

これは村山談話に真っ向から挑戦するものとして批判を受け、同年10月に彼は更迭された。

彼は、安倍晋三や石原慎太郎らの支援を受けてきた。

2009年11月には、彼が防衛大の同期と開いた会合に、安倍が参加して挨拶している。

安倍はこの時、「この席でスピーチするのは政治家としてリスクが高いですが、田母神さんのためお話させていただきます」と切り出し、こう述べた。

「(第1次安倍政権での田母神の空幕長就任は)今から考えれば、安倍内閣らしい人事だった。

偶然ではなく、必然だった。

村山談話を歴史認識として正しいと自衛隊の諸君に教えるのは、大変な間違いだと思う。

日本は、こういう国にだけはなってはいけない。」

その後も、安倍と田母神の応援関係は続いた。

2012年11月の「安倍救国内閣の樹立! 国民総決起集会」などにおいて、田母神らは熱烈に安倍を応援した。

自民党・総裁選前の12年9月には、「安倍晋三 カフェ・スタートーク」で、安倍、田母神、稲田朋美(現在は自民党の政調会長)の3人が顔を揃えた。

そのトークでは、こんな会話で意気投合している。

田母神

「もともと憲法に、日本は悪い国だと書いてある。

この憲法に基づいて進めるから、みな悪くなる。」

稲田

「憲法に書いてありますね。」

田母神

「ですから憲法改正が必要です。」

安倍

「こういう事を言うと、傲慢とか排他的な人間をつくると言われるが、まったく違う。」

(憲法に、日本が悪い国だとは書いてないです。

ただ、日本が行った戦争についての反省があり、それを彼らは「日本は悪い国」と書いてあるように感じるのでしょう。)

自民党の元首相秘書は言う。

「そもそも安倍と田母神の2人は、思想的にはほとんど同じです。

安倍は、自民党の中でも突出した右寄り路線。

歴史認識でも改憲でも、従来の自民党ではない。

その極右路線が、いま自民党の主流になり、政党としての劣化が進んでいる。

(かつてあった)懐の深さは、いま党内のどこにもない。

原発事故やアベノミクスで、保守政治が大事にしてきた国土と伝統が失われている。

安倍政治がいよいよ限界にきたことを、示していると思う。」

青木理(ジャーナリスト)

「逮捕容疑が事実なら、田母神氏には見識と品格が欠けています。

運動員に金をばらまいて選挙をやるのは常識外れで、品格に問題がある。

こうした人物を「閣下」などと持ち上げてきた、右派の運動のばかばかしさが、今回に露呈した。

同氏を持ち上げてきた政治家や文化人は、反省して謝罪すべきでしょう。」


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