ナベサダのバンドに養父貴が居てびっくり
彼との思い出を綴る③ 
(2016.11.27~28.)

養父貴さんから受けたレッスンでの思い出を語る記事、3回目です。

こんなシリーズものにする気は全くなく、完全に想定外の状況です。

記憶している面白い思い出をさらっと書いて終わりにするつもりが、当時のレッスン・ノートを見直した時点ですべてが変わってしまった。

忘れていた話にも面白いのがあるじゃんと。

今回はリズムについての話です。
音楽好きの方ならば楽しめると思います。

後半にはギターを弾く技術面の話も出てきます。

②に書いた会話の続きで、1回目のレッスンで話した事です。

養父

「村本さんはメールに、『自分はちょっとリズムが走る傾向に
 ある、それのアドヴァイスがほしい』と書いてましたよね。

 即興でジャズやってる人達ってのは、クリックに合わせて、
 なんて音楽はやってないですから…。

 そういう所で、『クリックに合わせててスウィングするかよ』
 っていう意見もあるとは思うんですけど、ポップスの
 レコーディングではクリックに合わせてなんぼだから、
 合わせられる能力があるジャズギタリストが呼ばれると
 思いますよ。

 クリック聴きながらも、平然とジャズのスウィング・フィール
 が出せる、とか。

 僕がジャズの人達を見ていて思うのは、そういう所が…。」

私 「確かに、そういう発想はあんまりないです」

養父

「ないですよね」

私 「クリックって、メトロノームとは違うんですか?」

養父

「イヤイヤイヤ! 同じ事です! 全く同じ事です。

 ジャズの人達はアバウトにしすぎている気がしますけどね。
 私見ですけど。」

「イヤ、僕も一緒にやっている人が、アバウトだなと思うん
 ですよね。

 結果としてスウィングしてないな、っていう。」

養父

「いや、全くもって正しいと思います!」

「アメリカのカッコイイジャズと日本のジャズ…もちろんリズム以外の違いもあるんですけど、リズムが…。」

養父

「リズムですね! リズムはめちゃくちゃ大きいです!

 その通りです。
 それを分かっているのは素晴らしいですよ。ええ。
 そこの違いを分かっているのは!

 リズムです! リズムだけです、はっきり言って。

 そこの話をもうちょっと突っ込むと、結局向こうの人達って
 のは、クリックをすごい信用してるんですよ。

 日本の人達って、黒人のノリはどうだ、白人のノリはどうだ
 って言うじゃないですか。

 彼らはそんな事考えてないですからね。

 そんな事より、『ジャストに合わせる』って事を考えてます
 から。

 ビシッとしたリズムを出す事が、その先にグルーブってものに
 繋がると思いますよ。

 だから結論になってしまいますけど、村本さんが走る傾向が
 あるというのは、レッスンするまでもなく、『クリックを
 使って下さい』って僕は言おうと思ったんですけど。」

私 「それにピタピタ合わせていけば…」

養父

「スウィングだったらば、2、4(拍)でいいと思います。

 2、4のクリックを出して、ひたすら練習すれば、
 それでいいと思います。

 スウィング感を出してくってのは、スウィングしてる演奏を
 いっぱい聴き込む事と、それの上で練習するって事も大切
 だと思います。

 それだけでかなり…いいと思います。充分だと思いますね。

 あとは、必ず録音する、ってことですね。練習する時に。」

私 「(録音は)今まであまりやってこなかったんですよね」

養父

「それを。

 で、なんで僕がそこまで確信を持っているかっていうと、
 僕も数年前に実はニューヨークにレッスンを受けに行った
 んですよ。

 ウェイン・クランツというギタリストなんですけど、その人は
 とにかくリズムがめちゃくちゃ良いんですわ!」

私 「その人はどういう事で知ったんですか?
   どういう活動をされてるんですか?」

養父
「その人はね、ニューヨークなんかの最先端インストゥルメンツ
 を研究してる人たちの中では、もう知られている存在で。

 ぜひチェックしてもらいたいんですけど。

 最近は自分のギター・トリオでやってます。

 共演者はドラムだとキース・カルロックとか。
 分からないですか、スティーリー・ダンっていうバンド。」

私 「はい、はい」

養父

「あそこら辺で最近ツアーをやってるドラムなんかと一緒に
 やっていて。
 もう超一流のメンバーですね。

 あとはリンカン・ゴーエンツとか、アンソニー・ジャクソン
 とか、あそこらと一緒にやってる人なんですけど。

 ウェイン・クランツはあくの強い人で、自分のやりたい事しか
 やりたくないと主張して、貧乏ですけど、ギターはめちゃ
 くちゃ上手いんすよ。

 それでリズムがめちゃくちゃ良いから、何でそういう事を
 出来るのかを、オレは聞きに行ったんです。

 もうシンプルでした。
 メトロノームを使う。自分のそのプレイを録音する。
 以上(笑)。」

私 「そうなんですか」

養父

「で、録音して聴いてみて、走ってると思ったらもっと後ろで
 弾く。後ろだなと思ったら前で弾く。以上。

 結局そういう事なんです。
 ひたすらやり続けてるか、やり続けてないかの違いだけです。

 だから日本のミュージシャンは、そこら辺が甘いっていう事
 なだけの話。
 ちゃんとやれば出来るはず。」

「僕って日本のお囃子、祭り囃子を地域の祭りの時に演奏
 してて、好きなんですけど。

 日本人のノリで、すごく(リズムが)アバウトなんですよ。
 ビタビタの世界とは全然違うんで…。

 だから元々の血みたいなものもあるのかな、と。」

養父

「それは間違いなくありますね! 間違いなくあります。」

「ピタピタよりアバウトの方が気持ちよく感じる感性も一方ではあるのかなと。」

養父

「もちろんそうだと思いますね。」

「だからアバウトでいいって事じゃないんですけど、全然。

 そういうのはあるのかな…と。」

養父

「それは、そう思いますね。

 向こうの文化ってのは、バックビートの文化ですから。

 こっちは1、3ですから。向こうは2、4ですから。

 ゴスペルなんかそうですけど、もうノリが違うんですよ。

 僕は向こうの音楽が好きだから、向こうの音楽をカッコイイ
 と思ってるから、あのカッコ良さをだすにはどうするんだって
 いうと…、2,4を意識しないといけない。

 血の部分もあるから、彼らよりももっと意識しないと駄目って
 事ですよ。」

私 「シンプルな事なんですね、そうなると。」

養父

「シンプルですね!

 シンプルな事をコツコツやり続けていくメンタリティが凄い
 ですね、向こうは。

 日本の場合は、すぐくじけやすいじゃないですか。」

私 「どうして違うんですかね?」

養父

「なんなんですかね! そこも聞いてみたんですけどね…。

 あんまり明快な回答が得られなかったですね…うん。

 国民性もあるかもしれない、分かんないですけど。

 環境も大きい気がします。
 あなたが留学に興味があると(メールのやり取りの時に)
 言われたのは、正にそこだと思いますよね。

 次の質問は…。」

「ああ、そうだ。
 ピックの弦への当て方なんですけど。

 あの、ジャズ系の人って、いま僕が習っている佐津間さんも
 そうなんですけど、けっこうナナメに当てる…。弦に対して。

 それで、そういう風なやり方を勧められて。

 僕は元々がロックだったから、ストレートに(弦に)合わせる
 のが…。

 ジャズではこういう様な感じで…。(ピックの持ち方を見せる)」

養父

「逆アングルね! ええ。」

「これでやると音がまろやかになるって言われて。
 確かにそうなんですよね。

 でも僕は普通のほうがいいんですけど。」

養父

「どっちがいいのかって事ですか。」

「どっちがいいっていうか…。
 僕はストレートで行くんですけど、何だろう…
 上のレベルというか、そういう視点で見ると…どうなのかなと。」

養父

「なるほど。難しいですよねえ、それねえ。」

私 「(持ち方を)使い分けたりしますか?」

養父

「いや、僕はストレートな感じですねえ。

 で、逆アングルになった最初の由来ってのは、『黒人の人達の
 手が長かった』という事なんですよねえ。」

私 「そうですね、黒人の人に多いですもんね」

養父

「はい。
 手が長いから、それを収めるためにグーとやったところから
 発生してるんです。

 それで黒人のジャズ・ギタリスト達が良い音色していたから、
 ジャズギター界の中で(その弾き方が)音色がいいって事に
 なったと、僕は思ってるんです。

 なので僕は、自分がそれで良いプレイが出来ると思えるの
 だったら、(ピックが)どんな角度でもいいと思いますけど。」

私 「あまり色んな角度を別におぼえなくてもいいと。」

養父

「ええ、そう思いますね!

 逆アングル独特のトーンね…、ありますよね。

 結局、どれを優先したいか、だと思うんですよ。」

「僕の感じ方は、逆アングルにすると、まろやかでスムーズ感が
 出るんですよ。
 柔らかい感じ。

 だけど立ち上がりというか、リズム的にビシビシ決まるのは
 ストレートの方があると。」

養父

「なるほど、なるほどね。」

「元々ロックやブルースが好きだからか、ピキッと立ち上がる感じが…。」

養父

「好きって事ですよね。

 もうだったら結論は出てて、自分の中で好き!っていう感じで
 納得して弾かれてるんですから、それで僕はいいと思います。

 絶対にそう思います。

 ただ、ある時にやっぱりこっちがいいなと思った時に、
 変える勇気ってのは持っといたほうがいいです。」

私 「ああ、なるほどなるほど。」

養父

「そういう意味では、僕もグリップを何回か変えた時期は
 ありましたけどね。

 それはもう、そっちの方がいいと思っちゃったから、
 しょうがないって事で変えましたけどね(苦笑)。

 だからいいと思いますよ、それで。

 逆にオリジナルのトーンが出て、いいんじゃないですか。」

「ピックに関してだと、養父先生は(著書で)ナイロンがいいと。

 ちょっと(ナイロン・ピックで)弾いてみたんですけど、
 僕としては柔らかすぎる。
 ナイロンって柔らかいですね?」

養父

「柔らかいですね!

 いやだから、あそこにも書きましたけど、僕はなんでナイロン
 になってるかって言うと、僕のスタイルでそれが一番都合が
 いいっていうだけの話で。

 JAZZⅢみたいな、そういう(村本さんの様な)感じのを
 使ってた時もありますからね。
 固いのでね。

 そっちの方が、ソロを弾くにはいいんですよ。

 いま僕が使ってるのは、ナイロンのシェクターの奴ですけど、
 何でかって言うと、こっちのほうがカッティングする時に
 いいんですよ。

 僕のスタイルは、カッティングもソロも両方重視してるって
 いうか…。
 ナイロンだと両方が上手くいくんですよね。

 はっきり言って、ソロだけやってるんだったら、
 ティアドロップのちっちゃい形のほうが僕も弾きやすい
 ですけど。
 それだとカッティングがあまりにも、駄目になるんで。」

私 「どうなるんだろう?」

養父

「なんつうんすかね…、バネのある感じで弾けないっていうか。
 粘る感じがない。

 (材質が)固いから、(音が)そのまま固いし、あと小さい
 から弾きづらいっていうか、
 リラックスして弾けない。

 ナイロンだと、弦に対して当たる面積も大きいんで、力抜いて
 弾けるんですよ。

 そうすると力抜いてるから、スナップも効きやすいし。
 手にグッと力が入ってると、固まっちゃいますからね。

 そういう所を優先したって事ですよ。」

私 「今、カッティングけっこう気になってて。

   腕の振りとか、教わっていいですか?」

養父

「もちろんです!」

「(養父さんが著書で)『日本人は腕の振りが小さい』と
 書かれていて、全くその通りだと思うんですよね。

 というか、自分でそうだ、と気がついて。

 それで読んで(気付いて)からは、振りをでかくするように
 したんですけど。

 (私はジャズ曲のイントロを弾く)

 なんと言うのかな…、前はもっと(振りが)小さかったん
 ですよ。」

養父

「なるほどねえ! でも、スタイルにもよりますよね~。うん。」

「これも(養父さんの著書に)書いてあったんですけど、
 ミュートがうまく出来る自信がないと(振りが)小さくなる
 ってのはあると思うんですよ。」

養父

「そうそう! それはありますね!」

「で、(振りを大きくするには)どう練習すればいいのか…。

 ジャズも結局スウィング(リズム)じゃないですか。」

養父
「はい! わかります、わかります!」


「で、ちょっと(リズムを)回す感じにすると、ジャズ・フィールが出るっていうのがあって。」

養父
「わかるわかる!(笑) 研究してますね~、うん。」


「だから、そこら辺の振り的な(部分を)…。」

養父

「そうか。でも今見てて悪くないと思いますけどねえ。

 だから…、(弦を)全部押さえられれば(きちんとミュート
 できれば)全部振れますしねえ。」

 (養父さんは4ビートでコードを弾く)

「僕、今まであまり柔らかいピックを使った事がないんですよ。
 使ってみたほうがいいのかなあ。

 (ピックを)使い分けたりもされてますか?」

養父

「レコーディングの時は使い分けますけど、ライブの時は1枚で
 いきますね。

 でもジャズの人だったら、けっこう固いピックを好む人います
 からね~。
 難しいとこっすよねえ。

 ちょっとそれ(私のピックのこと)、弾かせてもらっていい
 ですか。」


「ああ、いいですよ。交換ですか(笑)。」

養父

「(少し弾いてから)

 なるほど…。
 弾きやすいっすよ! いいんじゃないですか、これで。

 僕はそれ(ナイロン・ピック)に慣れてるから、これで大きく
 振ると、当たる面積が少ない分、ゆれやすい。

 (私のカッティングを見て)僕だったらもう少し手首を振る
 かなあ。」


「(養父さんを真似してみて)やっぱリズムが固いかな…(苦笑)」

養父
「う~ん、まあでも、そういうかっこ良さもありますからね。

 いわゆるオールドスクールなハネぐあいを出すんだったら、
 オレ位に…。

 (弾いて見せる)」


「ああ、そういう事か」

養父
「うん。ウウカ、ウウカっていう。」

私 「ウラの所」

養父

「ウラのハネがね。
 バネを効かせるには、もっとやらないと。

 あの本にも書きましたけど、ンガッでことですよ。

 アップしてから、次のダウンがすごく速くなきゃいけないから。」


「ああ、そうですよね。3連(3連符のノリ)ですからね。」

養父

「そう!

 だから、そのスピード感、という事ですよね。

 ドゥ~ンカッ、ドゥ~ンっていう。
 (カッとドゥ~ンの間がとても短いという事)

 その感覚を、僕はすごい大事にしてるかなあ。」


「(養父さんの4ビート・カッティングを見て)グルーヴしますね。」

養父
「うん、そうそう(笑)。

 で、今やったみたいに、(リズムは)2、4なんですね。

 今の村本さんだと、固いっていうか、ここで動かしてる。」


「ああ~、(動かすのが)肘になっちゃってるって事ですね。」

養父
「そう、そうなんですよ!

 ちょっとだけ(手首が)いってる感じだから…。」


「(大事なのは)手首なんだ…」

養父

「そう!

 手首(の動き)があって、そこから結果的にこっち(肘)に
 動くみたいな感覚…にしたほうがいい。

 だから、(手首の)返し、返し。
 今だと止まってる感じがして。

 こういう時に、僕なんかよくやります…。

 (養父さんは立ち上がり、鏡を持ってくる)」

私 「あ、鏡…。」

養父
「そうそうそう!(笑)

 オレの部屋には3つ位あるんすけど。」


「鏡を見ろって(著書に書いてあったのは)、こういう事ですか」

養父
「そういう事! それで違いが(分かる)、うん。」

(私は鏡を見ながらカッティングをする)

私 「ウラ、ですよね?」

養父
「そう、アップ(ストロークが大事)なんですよね。」

私 「こういう事か…」

養父
「そうそうそうそう!」

私 「難しいな…」

養父
「ああ、でも出来てきてる。

 うん、さっきより良くなってます!

 それでもう少し柔らかく…。」

私 「固いですもんね、僕」

養父
「でもそうやって止めるカッコ良さもあるんで、まあ臨機応変に
 出来ればいい。

 本当はフィーリングによって、自然に変わっていけば…。

 臨機応変に色々と変えられたほうがいいとオレは思っていて。」


「(養父さんの)本に、右手と左手でいったら、右手を2対1の割合で練習するといいって…」

養父
「ああ。僕はそういう風に思っているんですけどね。」


「それが僕の中で新鮮だったんですよ。
 普通は左手のほうを…」

養父
「みんなね! そうなんですけど。

 結局、感情表現って結構…。
 オレが感じたのは、『感情表現って右手じゃん!』ってこと。」


「僕もすごく納得ができたんですよ」

養父
「ええ。

 そう思った時に、右手のコントロールってすっごい大事だな
 って思って。

 それで、ファンクとかそういうものになってくると、右手の
 動きが全部違う…。」

私 「違うんですか」

養父

「違うんですよ。

 ちょっとピックを返させてもらって。
 ソリッドギターに持ち替えますけど…。

 (養父さん、ギターを持ち替える)

 例えばロック系(のスタイル)だったら、ここら辺に押さえて
 (右手をブリッジに乗せて)こう…。」


「ああ、(ロックだと)けっこうブリッジの方で弾きますね!」

養父

「そう! それはマッフミュートって昔は言ったんです
 けど(笑)。

 ミュートをかけてるって事ですよね。
 ガンズとかやってたら分かると思うんですけど。

 ファンクだと全然違って、ここに(ブリッジに)止めてた
 ものが、こう(浮く)。

 (養父さん、ファンクのカッティングをする。すごくカッコイイ)

 シングル・トーンになると、さっきの(ロックのミュートの
 仕方)に戻って。

 (シングルトーンでのカッティングを行う。これもカッコイイ)」

私 「おお~!」

養父
「アルペジオになったら、また違って…。

 (アルペジオを弾く)

 とにかくスタイルによって動きが(違う)。」


「というか、これ(私の固いピック)だとそういうのは厳しいですもんね。」

養父

「そういう事になるんですよ!

 僕のスタイルはこういうスタイルなんで、ソロだけだったら
 もっと固い感じが好きなんですけど、『いや~、三角(の
 ピック)だな』って色々と試して(笑)。

 で、今これに落ち着いているんですけど。

 もっと良いピックがあれば、もちろんそっちに替えたいと
 思ってますし。
 80点、って感じなんですよね(笑)。」

私 「100点じゃないんですか」

養父
「ないんですよ、ええ。
 もうちょっと固い方がいいなって思ってんですよね。」

私 「もっと固いのないんですか?」

養父

「これがね、ハード(タイプ)になっちゃうと固すぎるん
 ですよ、オレ的には!

 昔ヤマハのナイロンピックで絶妙なのがあったんですけど、
 絶版になっちゃったんですよ。

 (元の話題に戻り)
 だから、鏡(を使うの)はすごい良いと思いますよ。

 鏡を見る時は、(右手だけではなく)左手も見えますから。
 鏡に向いちゃってやれば、手元を見なくても確認できますので。」

私 「なるほど、なるほど」

養父
「で、お奨めは、テレビと教則ビデオを置いてやると。」

私 「教則ビデオを見ながらって事ですか?」

養父

「そういう事です。

 ラッキーな事に、鏡だと反対になるから、テレビとまるっきり
 同じ形で映し出されるんですよ!
 おすすめですよ。

 僕は教則ビデオを見る時は鏡を横に置いて、それを見ながら…。

 こんな(手首を)振ってんだ~!みたいな感じで(笑)。

 うわ~、ここでこんな振るんだ、すごいな~!みたいな。
 オレと違うな~、みたいな。

 そういう事を研究するわけですよ。」

私 「そういう事はしたことなかったなあ。そっか。」

養父

「結局リズムって、結論としては、スポーツと全く同じで、
 理屈じゃなくて、身体から生み出されるもんなんで。

 フレーズとかってのは理論とかそういう思考的な部分もあるん
 ですけど、リズムだけはすっごく身体になるんで。

 だから速く走るためにフォームを改善するのと一緒で、
 良いリズムを出すためにフォームを改善すると、劇的に上手く
 なるんですよ。」


「はあ~、そうなんですか~。(いたく感心する)」

養父
「なので、フォームを真似するっていうのは、すごく意味が
 ありますね。

 だから好きなジャズギターの人の演奏とかを横に映しながら
 やってみると、掴めるものが絶対あると思うんです。」


「いやあ、あれなんですよ。
 リズムって教えづらいからか、(人に訊いても)あまり教えて
 くれない所があるんですよね。」

養父
「分かります! 分かります! 結局はいま言ったみたいに
 感覚っていうかね!

 そうそうそう。」

えー、リズムに関してこんな話を(アドヴァイスを)彼からいただきました。

ギターを弾く人だと、参考になる事がいくつもあるんじゃないかな。

練習で右手(ピッキング)を左手の倍行うというのは、本当に目からウロコが落ちる思いがしましたね。

ギターを弾き始めた頃、「右手(利き腕)のほうが器用なのに、なんでそっちで弦を押さえないのか。演奏法として間違ってるんじゃないか?」と疑問に思いました。

だが、やっぱりその演奏法は正しかった。
感情表現をするのは主に右手だもの。

ギターの場合、左手でスライドしたりチョーキングしたりして、かなり感情表現をする。

だから初心者の頃は左手で感情表現をするものだと思ってしまうのですが、細かい部分までつめるようになっていくと、どんどん右手が気になってくるんです。

音の強弱や緩急、細かい音色の変化、リズムは全部、右手でコントロールしますから。

いま振り返ると、ギター弾いててスランプになった時(伸び悩んだ時期)はいつも右手に修正すべき点があった気がします。

右手に問題があるのに、左手の練習ばかりしてたために、伸び悩んでいたのではないかと思います。

養父さん一押しのウェイン・クランツは、このレッスンの後すぐにチェックしました。

凄腕のギタリストでしたが、あまり私の好みではなかったです。

リズムがカチッとしすぎている気がして。あと楽曲に魅力がないと感じました。

リズムは正確なのは基本として大切だけど、あまりにも遊びがないと、私の場合聴いていて息苦しくなってくるんですよねー。

ここで紹介しているレッスン・ノートは、(笑)とか!といった表現を使って、細かく感情を表しています。

普通はこんな事をしないんだけど、養父さんの話が面白いから、出来る限り正確に記述したくなったんですよねー。

彼のしゃべり方は、強弱や緩急に幅があって、独特なものだった。

アメリカに留学した事があるからなのかな、普通の日本人と話術が異なってましたね。

彼の話や弾いたフレーズを全部ノートに書き出すから、その作業にいつも10日くらいかかってました。

「それするよりもギター弾けよ」との意見もあるかと思いますが、やるとなると完璧にやりたくなる性格なんでね。


日記 2016年10~12月 目次に戻る