女子バレーボール、Vリーグと日本代表について語る③
(2020.2.20~22.)

女子バレーボール(Vリーグと日本女子代表)について語るシリーズの第3回です。

今回は、引退してしまった名選手のうち、高田ありささん、山口舞さんについて語ります。

まずは『高田ありささん』です。

この選手を最初に見たのは、日本代表戦だったと思うんですよね。

私が女子バレーボールのテレビ放送を逃さず毎回見るようになったのは、ワールドグランプリ2014という女子代表の国際大会からです。

今回、これについて書いた当時の日記(2014年9月の記事)を読み返してみて、「ああ、こんな感想だったのか」と、少々驚きました。

当時の女子代表は、ハイブリッド・シックスという新戦術を使っていたのですが、それがはまっていて強かったらしく、ベタ褒めしてます。

全部読み返してみたところ、高田ありささんの事には全く触れていませんね。

でもワールドグランプリ2014で、ありささんを初めて見たと思うんです。

かなり前の事なので、確信はないですが。

とにかく、高田ありささんを最初に意識したのは、『代表戦でリリーフ・サーバーとして登場した時』でした。

その時の彼女は、リリーフ・サーバーで主に活動したのですが、サーブを打てるエリアの一番後ろに立ち、そこから前に移動することなく、垂直にジャンプしてサーブをしているのが気になって仕方なかったのです。

サーブを打つ時に、後ろギリギリに陣取っておいて、そこから前に走りつつジャンプ・サーブをする。
これはよくある光景です。

ところがありささんは、客席と隔てる板に触れるほどに後ろに陣取ると、前に走る事を一切せず、後ろギリギリから窮屈そうな感じでサーブをしていました。

私はそれまで、そんなサーブをする人を見た事がありませんでした。

最初にやっているのを見た時、あまりに変な画だったので、「笑いを取るためにやっているのか?」と思ったほどです。

真面目にプレイしていると思えないほどに、不思議なサーブでしたね。

今振り返ってもよく分からないのですが、たぶん、あの位置から山なりのサーブを打つと、相手コートの前のほうに早いスピードのボールを入れられるので、それが目的だったと思います。

相手が受けた事のない軌道のサーブを繰り出して動揺させる、そういう類いのものだった気がします。

強いチームに効果があるとは思えないが、ものは試しでやってみたのでしょう。

眞鍋政義・監督は奇策を好む所があったから、高田ありさに仕込んだのかもしれません。

最初の出会いがそんな形だったので、私には「高田ありさ=変わったプレイヤー。トリックプレイを好む策士」というイメージが出来ちゃったんですよねー。

だからVリーグでも奇抜な事をしてくれるかと期待したのですが、あのヘンテコ・サーブは使わないし、普通に淡々とプレイしているしで、がっかりしました。

「普通じゃねえか、何をやってるんだよ!」と。

「変なプレイ担当だと思って見ているのに、普通にやってるなんて、どうかしているぞ」と、ありささんの居る東レ・アローズを観る度にもどかしく、イライラしていました。

今考えると、とんでもない偏向の眼で彼女を見ていましたね。

強度の色眼鏡をかけて彼女を見ていたので、1年経つ位までは彼女が試合で活躍するかどうかを気にしておらず、得点数とかアタック決定率を見てませんでした。

で、1年以上経って、ようやく「なかなかの数字を叩き出している、良い選手なんじゃないか」と気付きました。

代表戦でも、その時期にスパイクで活躍していたと思うんですよね。

木村沙織が絶不調でベンチに下げられたままになり、代わりに高田ありさが出場して、高いブロックに立ち向かってかなりの得点を上げる。
こういう国際大会があったと記憶しています。

高田ありささんは、スパイク、レシーブ、サーブ、ブロックのどれも日本トップクラスではなかったと思います。

でも器用なので、すべてをそつなくこなし、右利きなのにライトから打つのが得意でした。

要するに、スター選手ではないけれど、チームに居ると助かるタイプの選手でした。

ありささんは、歩き方に特徴があり、疲れている時に顕著でしたが、足を投げ出すように前に出して歩いていました。

見ていて疲労しやすそうな、怪我しそうな足の運びなので、けっこう心配していましたね。

「足の運び、歩き方を改善したら、もっとパフォーマンスが上がるのではないか」と思いながら見ていましたが、変わる事はなかったです。

まあ、それが個性にもなって見分けを付けやすくしていたんで、マイナスだけの要素ではなかったのですが。

高田ありささんについて、凄く印象に残っているのは、引退直前の試合です。

その試合は、Vリーグのプレイオフで、久光スプリングスとの準決勝でした。

すごく印象的だったのは、試合前に、東レ・アローズの監督と久光スプリングスの監督にインタビューが行われたのですが、両監督が「キー・プレイヤーは高田ありさだ」と発言したためです。

アローズの監督は「きっと久光はサーブで高田を狙ってくる。高田がそれをどこまでしのげるかが鍵になる」と語りました。

スプリングスの監督は「アローズのキー・プレイヤーは高田選手です。そこが機能すると、ウチは苦しくなる。」と語りました。

私はそこまでの重要選手だと見ていなかったので、「へえー」と思ったのです。
同時に、「やっぱりアローズの要は木村沙織じゃないんだな」と、自分の感じてきた事が間違ってなかったと思いました。

両監督の発言があったので、私は高田ありささんに注目して観戦しました。

そうしたところ、もの凄い事が起きたのです。

久光スプリングスは、サーブでとにかくありささんを狙いまくる。
そして守備でも、徹底してありささんにブロックを付けてきました。

「ここまで露骨にやるか」とびっくりする位に、徹底的に潰しにきた。

そこで肝心のありささんがどうしたかと言うと、サーブ・レシーブで崩れまくり、スパイクを打っても固いブロック2枚に止められてしまう状況となりました。

見ていて悲しいくらいに、ボコボコにやられてしまった。

「これはいかん、アローズの監督は途中で交代させるかな」と思いましたが、当時のアローズに高田ありさ以上のプレイヤーはおらず、リーグの準決勝という山場なので要の選手を外す事はできず、ありささんは出続けました。

最終的に、ありささんは相手からタコ殴りにされて、攻守両面で惨めな結果となり、アローズは完敗しました。

試合を観終えた時、「これはきっついな。私がありささんの立場ならショックでしばらく寝込むな」と思いました。

それ位の、これまでの選手人生を全否定されたかと思う位の、完膚なきまでに叩きのめされた内容でした。

「これほどやられたら、悔しくて一念発起するだろう。来シーズンまでに、高田ありさは努力を重ね、見違える選手になるかもな。そうなってほしいな。」と私は期待しました。

ところが、本当に驚いたのですが、この試合を最後にありさんは引退してしまったのです。

こんな痛々しい、見栄えの悪い、後味の悪い引退の仕方があるだろうか?

こんな惨めな辞め方を出来るなんて、逆に凄いなと思いました。

そうして、辞めてからは解説者に転身し、何度かテレビで彼女を見たけど、無念さを抱えて引退した人の持つ独特のオーラが、彼女には無かったです。
ごく普通の態度でした。

やっぱり高田ありささんは変わった人でした。

ここまで読んだ方は、ありささんの事を「名選手だったのか?」と疑問に感じるかもしれません。

でも、名選手だったのは間違いないです。

なぜかというと、彼女が引退した後、東レ・アローズの守備が崩壊し、一気に成績が落ちたからです。

木村沙織、迫田さおり、田代佳奈美という、日本代表クラスの選手が残っていたにも関わらず、リーグで下位に沈む状態となりました。

多くの解説者やバレーファンが、「木村沙織は守備が上手い」と言うのですが、私は「それは違う」と言い続けてきました。

「守備の能力は平凡だし、攻撃もサーブは凄いが、スパイクはそれほどでもない」と。

これが、高田ありさが引退した後のアローズの低迷(主に守備の崩壊)で、はっきり証明されました。

面白かったのは、アローズが守備を立て直すために、木村沙織さんを守備専門に近い感じで使い始めた事です。

当時のアローズのリベロは、沙織さんの妹の木村美里さんでした。
だから姉妹で守備を担う形となりました。

この件について、テレビ解説や木村沙織ファンの評価は、「姉妹での守備は微笑ましく美しい。そして木村沙織のレシーブの数字は、リベロと争う高いレベルにある」と褒めていました。

それを見て、「ちょっと待て、その評価おかしいだろ」と。

木村沙織さんは、身長が185cmもあり、東レ・アローズで外国人助っ人を除けば一番の背の高さです。

その選手が、守備メインでプレイしても、チームとしては嬉しくないでしょ。

もちろん、守備で活躍した上で、攻撃でも結果を出していれば、それは素晴らしい事ですよ。

でもこの時の沙織さんは、レシーブでの数字は良かったが、攻撃では得点が激減していたわけです。

そうしてチームの成績も沈んだままでした。

だから、単にアローズが戦術で迷走していただけなんですよ。
守備専門でプレイを始めたら、誰だって守備の成績は上がります。

この時のアローズの迷走ぶりは、見ていて「このチーム終わってるな」と思うほどでした。

そんな状態に陥らせたのは、高田ありさの引退が大きかったのです。

だからありささんは、地味だけど重要な選手だった。名選手でした。

ちなみに、東レ・アローズの迷走は、意外なほど短期間で終わりました。

そのシーズンが終わると、木村沙織、迫田さおり、木村美里が一斉に引退してしまい、「主力が抜けてさらに低迷するか」と思ったところ、次々と有望な若手が入団してきたからです。

びっくりする早さで、アローズは復活しました。
この件は、後の記事で詳しく書きたいと思います。

さて、次の名選手に移りましょう。

山口舞さん』です。

この選手も日本代表で活躍したし、オリンピックで銅メダルを獲った時のメンバーとしても知られています。

だから、Vリーグを観ていない人でも知っている方は多いでしょう。

Vリーグでは岡山シーガルズに所属し、キャプテンも務めたりしてました。

山口舞さんの特徴は、多彩なクイック攻撃を行える技術力の高さと、乱れたトスが来てもカバーして得点にできる対応力です。

抜群の攻撃力がありましたね。だからこそミドルブロッカーの中では背が低いのに、代表でも活躍できました。

もう一つの特徴は、無理なプレイをしない冷静な性格をしていて、結果として長い選手寿命となった事です。

バレーボールって、膝や肩や腰を痛めてしまい、早いと25歳で引退してしまう人もいます。

パッと見ると楽なスポーツに思えるけど、疲労を溜めていき慢性的な怪我を抱える選手がかなり居ます。

舞さんは、どんな状況でも冷静にプレイできる人でしたね。
マイペースを貫く芯の強さがあり、周りに左右されません。

逆にいうと、熱くならない性格なので、素晴らしいプレイをしていてもあまり目立たない選手でした。

それにしても、ミドルの攻撃はセッターとのコンビネーションが合わないと機能しないので、私の見るところ、日本代表でも岡山シーガルズでも彼女の攻撃力がフルに発揮される日はほとんどありませんでした。

もし彼女がピッタリ合うセッターと継続的に組めたら、2倍の活躍ができたのではないかと思います。

もしかすると竹下佳江と日本代表でやっていた頃は、バンバン決めていたのかもしれません。
その頃の日本代表をあまり見てないので、知らないのですが。

私は中学生の時にバレーボール部でセッターをしていたので、どうしても観戦の際にセッター目線になりがちです。

私の目線から見ると、山口舞は「一緒にプレイしたら、多彩なクイック攻撃が出来て楽しそうだな」と感じます。

技術があるのでブロード攻撃をした時に打点エリアの横幅が広いし、スピードの速いトスにも対応できます。

さらに、組んだセッターの力量不足でめったに見られなかったですが、一人時間差まで使いこなせる選手でした。

難しいクイック攻撃を選んで、トスがやや乱れても、舞さんなら何とかしてくれます。

私の感覚では、山口舞という選手は、「バンバン使える選手」のイメージなんですが、不思議なくらいにシーガルズでも日本代表でもトスの持っていかれる回数が少なかったです。

背が低くて打点も低いので、ブロックに当たると自陣のコートに落ちる事が多く、「失点になりやすいので使いづらい」と判断されていたのでしょうか。

これはバレーボールに限らないんですが、日本人ってリスクを異常に恐れるんですよね。

バレーは25点取るスポーツなんだから、数点くらいならリスクのある攻撃で失点しても全然OKだし、見せ球的にでも色んな攻撃を出したほうが相手が混乱し、お客も盛り上がると思うんですけど。

やらないね、リスクのある攻撃を。

Vリーグが盛り上がらない一因に、この消極的な姿勢があると思うなあ。

とにかく、山口舞という選手は、その攻撃力を十分に発揮する機会が無かったです。

普通だったらフラストレーションが溜まるのですが、彼女は超マイペースだったので、淡々とプレイを続けていました。

でも岡山シーガルズでは、セッターの宮下遥がほとんど自分を使わず、たまにトスを上げてくるかと思うとその精度が低いので、時には切なそうな顔をしていましたね。

「舞ちゃん、俺はその切ない気持ち、分かるなあ」と思いながら観戦してました。

あと舞さんといえば、シーガルズの監督である河本昭義の皮肉たっぷりのいじめの言葉を、チーム内で唯一、無視できる人でした。

きつい口調で彼から嫌味を言われても、さらっと無視してましたね。
あれは見ていて気持ち良かった。

「Vリーグの名物」とアナウンサーが呼ぶくらいで、Vリーグを観ている人なら皆が知っていると思うのですが、岡山シーガルズの河本昭義・監督は苦しい試合展開になると、タイムアウト中に選手達に強烈なダメ出しを始めるのです。

相手の人格を否定するような態度で、相手を威圧する口調で言うので、ぶっちゃけパワハラに該当するレベルだと見てます。

「これを名物として許容していいのだろうか?」と、正直思う時があります。

1つ言えるのは、「俺が選手だったら、この監督の下では絶対にやりたくない。間違いなくやらない。」ですね。

昭義さんは、シーガルズが苦戦する状況だとイライラし、選手の一人を呼び出して、「お前、ここでは〇〇をやらないと駄目だろ!!お前がちゃんとやらないから、こんな展開なんだぞ!!」と大声で怒ります。

で、言われた選手は顔面を硬直させ、顔が青ざめて身体もこわばってオドオドした様子でコートに戻っていきます。

「こんな心身の状態では、とうてい活躍できないだろう」と思うのですが、なぜかそこからプレイが良くなったりします。

私には分かりづらいのですが、あの指導が良いと思っている人もいるみたいで、宮下遥さんなんて信奉していると言っていいほどの傾倒ぶりです。

第三者の私から見ると、歪んだ関係、SとMの変態関係に近いものを感じるんですけどねー。

山口舞さんは、そういう危うい、変態の臭いをも感じさせるシーガルズのチーム・カラーから、一線を画す態度でした。

彼女の年齢が高いから、そういう冷めた態度の舞さんに対して、河本昭義は叱り飛ばす事もできず、放置していました。

でも1回、舞さんに昭義が近づいて、きついダメ出しをし、さすがの舞さんも血相を変えて、顔を引きつらせながらコートに戻っていった事がありました。

なにを昭義が言い放ったのか、マイクが拾わなかったので分からないですが、よほどの事を言われたのでしょう。
あの時は深く同情しましたね、舞さんに。

「こんなに選手としても女としても素晴らしい存在なのに、その人を侮辱して顔を引きつらせた姿を全国放送で晒させるなんて、どうかしているぞ河本昭義よ。
監督である前に、人間として、男として間違っている。」、こう思わざるを得なかったです。

他の監督は、こんな事はしません。

久光スプリングスの酒井新悟さんなんて、顔の作りが怖くて、ずんぐりした体型をしていて、ヤクザみたいな外見なのに、すっごい選手に優しいんですよ。

試合展開が厳しくなって、タイムアウトして選手に発破をかける場面でも、「こっからだぞ、頑張っていけよ」と優しい表情で言うのみ。
声を荒げたりなんて一度もしません。

基本的に、相手が女で自分が男だったら、ある程度オブラートに包んで指摘するでしょ。

あんなに剥き出しの悪意のこもった指摘を、公衆の見ている前で女に出来るなんて、河本昭義って人はどこかおかしいと思うんですよ。

普通だったら、厳しい指摘をする場合、試合が終わって2人きりになって、誰も見ていない状況で言うからね。

そういうエチケット、気遣いが、昭義さんには無いです。

そういう人に魅力を感じている宮下遥らについて、「大丈夫だろうか…」と少し心配してます。余計なお世話かもしれませんが。

まあ、もしかすると、隠し事をしないで負の面も晒す、正直な指導者なのかもしれません。

でも、河本昭義さんってメディアの取材に応じる時は、にこやかで笑顔を絶やさないのです。
あれが怒った時と180度違うので、逆に怖いんですよね。

「この人、ものすっごい裏表あるのかな」と思えてしまって。

私としては、岡山シーガルズの名物である「河本昭義・監督の試合中のきついダメ出し」が、見ていて不愉快なので、止めてほしいです。

そもそも、選手が試合で監督の狙いとおりの動きが出来ないのは、選手が悪いのではなく、監督の指導不足なわけです。

練習できちんと身に付いていないから、本番で出来ないわけで、それは指導が未熟だからでしょう?

だから私としては、こう思うのです。

「選手が試合で思い通りの働きができないのは、お前のせいなんだよ、河本昭義よ。

それを選手のせいにするのは、完全にお門違いだ。

お前が選手にしているのは、責任の押し付けであり、無責任な逃げの行為だ。

そんな事を続けていて、恥ずかしくないのか。」

岡山シーガルズは、守備面(主にレシーブ)はVリーグで一番の完成度を誇っており、そこはとても高く評価しています。

昭義さんは、守備の指導では日本一ではないかと思うほどです。

良いものを持っているだけにね。改心して、責任を選手に押し付ける生き様を、止めてほしいな。

これで今記事は終わりにします。

次回は、思い出の名選手についての最終回になると思います。

それが終わったら、ここ数年で新しく出てきた選手などを書きます。


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