(『そうだったのか!現代史2』池上彰著から抜粋)
2002年7月に、北朝鮮では「経済改革」が予告なしに行われた。
コメ1kgの価格は、0.08ウォンから44ウォンへと、550倍も引き上げられた。
住宅の家賃は、それまでは無料だったが、有料になった。
これに伴って、労働者の賃金も引き上げられた。
平均月給は、110ウォン→2000ウォンへと18倍になった。
しかし物価の値上がりよりも、ずっと小幅である。
通貨のウォンは、アメリカドルに対して70分の1に引き下げられ、1ドルは150ウォンになった。
これで換算すると、北朝鮮の月給は13ドル程度である。
それまでの北朝鮮は、生活必需品はすべて配給だった。
ところがモノ不足のため配給は滞りがちで、国民は闇市で買っていた。
この状況を改善しようというのが、この経済改革である。
要するに、闇市で販売される実勢価格に、公定価格を近づけたのだ。
しかし、物価や名目賃金を引き上げても、商品生産が伴わなければインフレになるだけである。
北朝鮮の工場の操業率は、30%を切っている。
これでは、充分な商品生産ができるわけがない。
(2014.1.4.)