2014年W杯
ギリシャ戦の感想①
中田英寿の話

(『毎日新聞2014年6月21日』から抜粋)

日本代表は、2014年W杯の第2戦となるギリシャ戦で、0-0の引き分けに終わった。

ここにきてザッケローニ監督の采配は、大きく揺れており、4年間の積み重ねが崩れようとしている。

監督は、使い続けてきた香川真司を先発メンバーから外して、岡崎慎司と大久保嘉人を左右のサイドに配した。

これはギリシャが前がかりの守備をすると見て、その裏を狙う作戦だったが、「やってみると前から来なかった」(山口蛍のコメント)のである。

前半に退場者を出したギリシャは、そこからは堅い守備ブロックを作り、日本の(裏を狙う)プランは崩れた。

そこで後半からは、(細かいパスで崩すのが上手い)遠藤保仁と香川真司を投入して、ベンチからは「サイドを使って行け」との指示が飛んだ。

しかし日本は、クロスボールの単調な攻めに終始した。

柿谷曜一朗、斎藤学、青山敏弘ら、試合の流れを変えられる選手がベンチにいたが、ザッケローニ監督は使う気配もなかった。

この試合も、初戦と同様に、最後には吉田麻也を前線に上げて、そこをターゲットにサイドからボールを放り込むパワー・プレーを、ザッケローニ監督は選択した。

遠藤保仁は、「監督の指示に従ったが、セカンド・ボールを相手に拾われて、時間を使われてしまう」と、戸惑いを口にする。

日本は良い攻撃をするシーンもあったが、もっと攻めにアイディアが欲しかった。

大久保のドリブルをギリシャは嫌がっていたので、ドリブルの特異な斎藤の投入が見たかった。

(『ナンバー2014年6/30臨時増刊号』から抜粋)

〇中田英寿の感想

グループリーグの半分の戦いが終わった。

ここまでは、体格で劣ってもよく走り素早いパスワークを見せる、中南米のチームが好結果を残している。

日本が4年間積み重ねてきたのは、そういうサッカーだったはずだ。

だが日本は、ギリシャ戦でも攻めてはいたが、3人目、4人目と攻めるリスクを冒したサッカーではなかった。

1戦目(コートジボワール戦)と違い、ラインを高く保ち、プレスを掛けてボールを奪うことは出来ていた。

しかし、ドリブルの場面が目立ち、細かいパスワークで相手を翻弄するサッカーは出来なかった。

選手同士の距離が遠く、攻撃に連動がない。

大迫、大久保、岡崎は、それぞれ孤立していて、大久保の突破も単発に終わっていた。

本来は大迫の近くでプレーしなければならない本田は、ハーフライン辺りまで下がり、FW陣との距離が開いていた。

そのため、日本らしい流れるような細かいパスが出なかった。

後半の頭から長谷部に代えて遠藤を投入したのは、リズムの悪さを修正しようと考えたからだろう。

だが、中盤にリズムは生まれたが、そこから先は改善されないままだった。

後半12分に香川を投入したが、交代したのは大迫だった。

大迫は懐が深いので、味方を待つプレーができる。
彼を残して岡崎を代えた方が、攻撃に幅が生まれたような気がする。

後半になると、ギリシャは完全に引き分けを狙って、守りに入った。

そのギリシャを崩すための、連係もアイディアもチャレンジも無い。

後ろからの崩しも、ダイレクトプレーも無いので、ギリシャは10人でも守りやすかったのではないか。

(2014年11月14日に作成、2022年11月21日に加筆)


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