オフショア・システムは、途上国から年間に1兆ドルを奪っている

(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)

オフショア・システムは、すべての銀行資産の半分、対外投資の3分の1に及んでいる。

タックス・ジャスティス・ネットワークは、「富裕な個人がオフショアに保有している資産は、11.5兆ドルにのぼる」と推定している。

これは、世界の富の4分の1に相当し、失われた税収なのだ。

ワシントンのシンクタンクである、レイモンド・ベイカー率いるグローバル・ファイナンシャル・インテグリティ(GFI)は、2009年にこう報告した。

「途上国は、違法な取引により、2006年に1兆ドルの資産を失っている。しかも、額は年率18%のペースで増大している。」

ベイカーは、「欧米は、年間1000億ドルの援助を途上国にしているが、テーブルの下では1兆ドルを奪ってきた」と言う。

「アフリカに多額の援助をしているのに、なぜ成果が出ないのだろう?」といぶかる人には、この事を指摘したい。

ナイジェリアは、最も腐敗した国の1つで、5000億ドル近いオイル・マネーがどこかに消えてしまった。

(同国は、アフリカ屈指の産油国である)

1998年にナイジェリアの残虐な大統領サニ・アバチャは、インド人娼婦たちと過ごしている間に毒殺された。

その後、彼が数十億ドルものオイルマネーを着服していた事が、明るみに出た。

彼が送金していた先は、イギリスとスイスだった。

ナイジェリアの財務大臣であるンゴジ・オコンジョは、2006年5月にこう語っている。

「スイスは、5億ドルを返却してきました。

イギリスのブレア首相は、300万ドルを返還してきました。

イギリスにはもっとマネーがあるのは判っているのですが、イギリスから別の所へ行ってしまったのです。」

アフリカの貧困は、オフショアの役割を理解しなければ解決できない。

コンゴの内戦は、タックスヘイブンを通じたコンゴの鉱物資源の大量略奪と、深く結びついている。

途上国での腐敗やクーデターでは、オフショアが重要な役割を果たしている。

ロシアにおける諜報機関と犯罪組織の融合、サダム・フセインや金正日の権力、イタリアのベルルスコーニの奇妙な支配力も、オフショアのおかげである。

ヘッジファンドやプライベートエクイティ・ファンドの台頭、エンロンやAIGの破綻劇、多国籍企業の急成長、世界的な経済危機も、オフショアの産物である。

オフショアを理解しなければ、現代史を正しく理解できない。

(2014.3.10.)


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