イギリス圏のタックスヘイブン①
ケイマン諸島②

(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)

ケイマン諸島のベテラン弁護士であるウィリアム・ウォーカーは、こう語っている。

「自分のオフィスの外壁に掲げられている1400の登記会社のほとんどは、ときどき書類にサインし、年に2回ほどミーティングを開くだけでいい。

我々は、中南米諸国から多額のカネを集めている。

こうしたカネのほとんどは、もちろん為替管理規制に違反している。」

ケイマンに関する著書もあるケイシー・ギルは、『民間部門の諮問委員会(PSCC)』の創立メンバーだ。

ケイマン政府の立法作業は、必ずPSCCを経由してきた。

ギルはこう語る。

「ケイマン政府には、法案の草稿を作る者がいる。

PSCCはその法案をチェックし、提案を加えて彼らに戻す。

すると法案は修正されて、またPSCCに回されてくる。

PSCCがオーケーを出したら、政府が立法化する。

ケイマン総督がそれをイギリス外務省に送り、外務省は「問題ない」と言うわけだ。

ビジネス側の要望を、イギリス政府は思い通りに実現させてくれた。」

ケイマン諸島は、イギリスの保護の下で、秘密の領域を築いてきたのである。

1976年に、ケイマンの信託会社のトップだったアンソニー・フィールドが、「アメリカの脱税を幇助している」としてマイアミ空港で逮捕された。

この出来事をきっかけに、ケイマンは悪名高い『機密関係の保護法』を作った。

この法律は、「ケイマンにおける金融取引の情報を明かせば、禁固刑の対象になる」というものだ。

情報を要求した側も、投獄される可能性がある。

(安倍晋三・内閣が作った特定秘密保護法と、かなり似ていますね)

『機密関係の保護法』は、ケイマンがタックスヘイブンとして成功するための礎になった。

こうしてケイマンには、現金がプライベート・ジェット機で飛び込むようになった。

1980年代初めになると、ケイマンなどのカリブ海の島々は、世界のドラッグ取引の主要な中継地になった。

コロンビアのメジデン・カルテル(当時は超有名だった麻薬マフィア組織)の中心人物だったカルロス・レデルは、バハマのノーマン島を支配し、そこから大量のコカインを密輸していた。

『コカインをアメリカで売り、札束が航空機でケイマンに運ばれ、ケイマンはそのカネをアメリカ連邦準備銀行に戻す』という流れが出来上がった。

その後、ケイマンから大量のカネが送金されるのを不審に思った連邦準備銀行は、調査をしてその流れを断った。

今日では、ケイマンはドラッグ・マネーの資金洗浄には手を出していない。

その代わりに、脱税の手伝いを商いにしている。

ケイマンの悪名高い『機密保護法』は、悪事を秘密の闇に包んでいる。

ケイマンのオフショア銀行の取締役たちは、100社~450社もの取締役会に名を連ねている者もおり、1社につき2万ポンドもの報酬を受け取っている。

(1ポンドは、2014年8月現在で170円なので、2万ポンドは340万円に相当する)

ケイマンの会社法では、取締役は訴訟から保護されている。

ケイマン政府のウェブサイトには、こう記されている。

「登記官は、会社の名前・登記日・登記された事務所の住所・会社の法律上の地位、しか開示できません。

顧客のプライバシーは守られます。」

ケイマンでは、その会社が何をする会社かを記した「設立趣意書」すら、裁判で闘わなければ入手できない。

(2014.8.21.)


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