社会に進歩をもたらしてきたのは、民衆と労働者の組織である
(三極委員会について)

(チョムスキー、世界を語る から抜粋)

チョムスキー

    ヨーロッパ連合(EU)は、民衆の政治参加を制限する方向で作られたものです。

    欧州中央銀行(ECB)は、全面的な独立性を認められ、いくつかの政策の実施を任されています。

    フォーリン・アフェアーズ誌は、「誰に対しても責任を負わない中央銀行に、前例のないほどの
    権力を与えたのは反動的である」と言っています。

    ヨーロッパ連合の中央集権を逆方向に改めるには、人々が連帯して組織を作り上げる必要が
    あります。

    ヨーロッパの人は、「今までの社会の進歩は、知識人がもたらしたもの」と考えていますが、
    本当は民衆・労働者階級の組織が進歩をもたらしたのです。

    1960年代には、世界中のいたる所で大きな反体制運動が起きました。

    「三極委員会」が生まれたのは、こういう情勢を背景としてでした。

    三極委員会のメンバーは、エリート層で構成されています。

    この委員会は、デイビッド・ロックフェラーの肝いりで発足しました。

    発足した直後に刊行した「民主主義の危機」という本は、委員会の報告を1冊にまとめたもので、
    ミシェル・クロジエ、サミュエル・ハンチントン、綿貫譲治が報告をしました。

    そこでは、こう主張されています。

   「 一般市民が政治闘争に参加したため、民主主義の危機が訪れた。

     これは民主主義の行き過ぎであり、もっと穏やかな形態に戻す必要がある。

     市民がかつての受動的で無関心な姿に戻らないかぎり、真の民主主義は回復しない。

     とりわけ問題なのは、若者の洗脳を担う組織の失敗だ。

     学校・大学・教会は、若者に受動的な姿勢を教え込む機能を果たしていない。 」

    アリストテレスは『政治学』の中で、「平等が民主主義の基礎である」と明言しています。

    しかし彼が市民として認めていたのは、男性だけでした。

    実は歴史を通してみても、こうした事(一部の人にしか平等権を認めない事)は変わっていません。

    アダム・スミスは、「完全な競争という条件が整えば、市場は完全な平等を有する」と
    予測しました。

    しかし、これは全くの幻想です。

    アメリカの労働運動は、靴職人や女工などの組織からスタートしました。

    19世紀の中頃には、彼らは独自の新聞を持っていました。

    彼らは、「他人を放っておいて、自分が金持ちになる事だけを考えよう」という考え方に
    反対しました。

    そういう価値観について、「おぞましい」と考えたのです。

    「資本主義の倫理に従って、平等主義を棄てて、各人は金持ちになる意気込みを持たなければ
     ならない」

    この価値観を人々に植え付けるには、何百年もかかりました。

    この価値観は、エリート層(我儘な人)の考え方ですから。

(2014.5.25.)

(すばらしきアメリカ帝国 から抜粋)

チョムスキー

    アメリカにおいても、一般人とエリート層の隔たりは、世論調査で明らかです。

    2004年11月に発表された世論調査は、あまりにも驚くべき結果だったために、
    マスコミは報道できませんでした。

    国民の大多数が、「京都議定書への調印」「国際刑事裁判所の承認」「危機における国連の
    主導権」を支持していました。

    (これらについて、ブッシュ政権は反対を明確に打ち出していた)

    先制攻撃を合法とするブッシュ政権やアメリカ議会に、国民は断固として反対しているのが、
    調査から明らかでした。

    国内問題では、80%の人が医療制度の充実を願っています。

    70%の人が、教育や社会保障制度への増額を求めています。

    ところが民主党の大統領候補であるジョン・ケリーは、政治的な支持があまりにも乏しかった
    ために、医療保障の充実に言及できませんでした。

    この「政治的な支持」とは、保険業界・金融業界・HMO(会員制の医療団体)・製薬産業の
    支持を意味します。

    世論調査を見れば、アメリカ国民全体は二大政党よりもはるかに革新的です。

    だが、メディアや政党に自分たちの意見と同じものが見つからないのです。

    国民の間では、「イラク人が撤退を望んでいるのなら、アメリカはイラクから去るべきだ」
    というのが多数意見です。

    それよりももっと多くが、「アメリカではなく国連が、イラクの復興を先導すべきだ」と
    考えています。

(2014.7.9.)


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