ウォーターゲート事件の裏面
防諜作戦という非合法活動

(『チョムスキー、世界を語る』から抜粋)

チョムスキー

ウォーターゲート事件は、まったく下らない事件でしたよ。

共和党の国民委員会からカネをもらった数名の人間が、民主党本部に侵入していくつかのファイルを抜き取りました。

この事が明るみに出た時に、世間は『ニクソン大統領が、自分の敵とみなす人物のブラックリストを作っていること』を知ったのです。

リストには、私の名前も入っていました。

しかし、このリストに載せられていた誰も、なんの被害もこうむっていません。

この私が言うんですから確かです。あれは茶番でした。

実は同じ時期に、もう1つの事件が起きていたのです。

それは、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、ニクソンの4代の政権下で、連邦政府とFBIが『防諜作戦(スパイ活動を阻止する作戦)』をしており、それについての司法の取り調べです。

この防諜作戦は、当初は共産党つぶしが狙いでした。

その後に拡大して、あらゆる反体制組織(フェミニスト、反戦活動家、黒人組織など)を対象にしました。

この作戦では、トロツキストの政党だった「社会主義の労働党(SWP)」を急襲して、叩き潰しました。

SWPは、れっきとした合法政党でした。

この作戦では、暗殺まで行われました。

シカゴの黒人闘士は、FBIの手助けを受けた地元警察の手で射殺されました。

ところがこの事件(防諜を名目にした弾圧)については、誰も聞いていない(きちんと報道されていない)のです。

ウォーターゲート事件が大問題になったのは、標的になったのが有力者だったからです。

ニクソンがつぶされたのは、有力者をやっつけようとしたからです。

私はむしろ、ニクソンの側でした。

本当に憂慮すべき事件は、『防諜作戦』でした。

当時に私は、この件について文章を発表しましたが、反響はありませんでした。

これまでに10回以上も文章にしていますが、だめですね。

(2014.5.28.)


『民主主義vs国家・多国籍企業・プロパガンダ』 の目次に戻る

『世界情勢の勉強』 トップページへ戻る

サイトのトップページへ行く