(『南アフリカを知るための62章』から抜粋)
南アフリカは、1990年代の民主化以降、黒人の所得の伸びは白人を上回っている。
だが、人種間の所得格差は依然として大きい。
国全体のジニ係数は、1995年の0.56から、2005年には0.73に拡大した。
近年に問題となっているのは、黒人内部の所得格差です。
1994年のマンデラ政権の発足時は、白人と黒人の所得格差は11.8倍だった。
マンデラ政権は、「BEE政策」という黒人や女性を雇用するための取り組みを行った。
この政策は、雇用における差別の禁止、黒人の優先採用、一定比率の黒人資本の参加などを求めた。
民間企業は黒人の採用を進める事になったが、一部の有能な黒人(白人とコネのある黒人?)だけが重用されている。
一方、国営企業の多くは赤字だが、役員報酬は多額になっている。
南アでは、役員報酬と従業員給与の格差が、年々拡大している。
企業のグローバル展開は、所得格差を助長している。
南ア企業は、外国に積極的に展開している。
ロンドンやNYの株式市場に上場している企業が多く、これらの企業は役員報酬が欧米の水準で決められてる。
2007年の南アの中間・上級管理職の平均所得は、イギリスを上回っており、アメリカやオーストラリア並みである。
南アでは、高卒以上の学歴を持つ者は、中卒以下の4.5倍の所得を得ている。
高卒以上の割合は30%強にすぎない。
失業率は、白人は6.4%、黒人は47.8%、カラードは27%、アジア系は20%である。
南アの企業は、南アの金利が高いために、物作りよりも国債などでお金を運用して利益を上げる傾向にある。
企業たちは雇用に消極的である。
一般労働者のうち、技能などを持つ者は高い給与を求めて外国に出る。
建設ブームだったドバイでは、南ア人が3.5万人も働いていた。
一方で、南アには近隣国から、多くの労働者が流入している。
ジンバブウェからは、300万人も入ってきている。
近年は、黒人の中間層の台頭が目立つ。
平均月収が6100ランド(7万円)以上の黒人は、2005年の200万人から、08年には389万人に増えた。