(『アメリカ黒人の歴史』上杉忍著から抜粋)
アメリカ黒人の貧困層の荒廃を大きく進めたのは、「麻薬の浸透」である。
レーガン政権が「麻薬との戦争」を宣言したのは1982年だが、その宣言の直後から事態は深刻化してきた。
(この「麻薬との戦争」政策は、今では弊害ばかりの政策だと明らかになっている。詳しくは、『黒人の状況③』に書いている。)
この時期に、麻薬マフィアたちは固形コカインの「クラック」を開発し、瞬く間に広まった。
クラックは、安価(5ドル程度)だが、高揚感が数分間しか続かない。
そのため次々に摂取して、常習化しやすい。
そして精神異常と暴力が起こり、犯罪が増加した。
警察と裁判所は、麻薬に「厳罰主義」で挑み、黒人の服役者が激増した。
刑務所は、大量の麻薬患者の収容所となっている。
クラックを購入するための売春も、多発している。
コカインの流入量は急増し、1989年の麻薬取引は1500億ドルに達した。
この年には、年間に200回以上も使用する者は、400万人となった。
取り締まりが強化されると、麻薬の移送・売買に、未成年者が利用されるようになった。
その結果、黒人の若者の殺人率は急増し、殺人件数は白人の6~7倍となった。
(2014.4.28.)