今のアメリカには報道の自由はない⑤
さらに規制緩和され、今では5つの巨大企業がメディアを支配している

(BSドキュメンタリー「報道の自由と巨大メディア企業」から)

ジョン・ニコルズ(ザ・ネイション誌)

「巨大な複合企業は、『多くのメディアを我が社が所有するほど、良いメディアが作れる』という話を、作り出してきました。」

ジャニーン・ジャクソン(メディア監視団体「FAIR」)

「メディアはカネ儲けを考え、政治家は放送時間を求めます。

ここで忘れ去られているのは、大衆の存在です。」

巨大企業の要求に応えて、1996年にクリントン政権の下で、『電気通信法』が成立した。

クリントン大統領の当時のコメント

「この法律は、未来をもたらす革命的なものです。」

ジャニーン・ジャクソン

「この法律によって、規制が緩和され、巨大企業は好きな放送局を買収できるようになりました。」

1996年通信法の成立後、合併の波がメディア業界に押し寄せた。

1996年 ディズニーとABCが合併
1999年 バイアコムとCBSが合併
2000年 タイムワーナーとAOLが合併

シルビア・リベラ

「合併が始まると、もはや地方局はたちうち出来ませんでした。

地方局は、どんどん淘汰されていきました。」

1998~2005年に巨大メディア企業が、ロビー活動・政治献金に投じた額は、4億ドルである。

エイミー・グッドマン(独立系メディア「Democracy Now!」)

「私達が得られる情報は、固定的になり、歪曲や嘘に満ちたものになっています。」

現在のアメリカは、5つの巨大企業が、メディアの大半を支配している。

(GE、ディズニー、バイアコム、タイムワーナー、ニューズ・コーポレーションの5社である)

ジェームズ・マードック(ニューズ・コーポレーション重役)の記者会見から

「我が社の独立性を保証してくれるものは、収益です。」

ダニー・グローバー(俳優)

「支配層は、富を独占しているだけではなく、情報も独占しているのです。」

ジョン・ニコルズ

「アメリカのメディア業界が巨大企業に買収されていく中で、ルパート・マードックがメディア王として現れました。」

ジュリアン・アサンジ(ウィキリークスの創設者)

「ニューズ・コーポレーション(マードックの会社)らの巨大メディアは、アメリカの独立系新聞をほとんど飲み尽くしました。

これは、収益や政治的利益が何よりも優先されかねない、危険な状況です。」

こうしたメディアの独占を防ぐために設けられたのが、『連邦通信委員会(FCC)』である。

ジャニーン・ジャクソン

「FCCは、メディアが公共と民主主義に適っているかをチェックするのが、主な仕事です。」

だがFCCの委員長を2001~05年に務めたのは、コリン・パウエル国務長官の息子である、マイケル・パウエルだった。

マイケルは、自分の職務を放棄して、メディア所有の規制緩和に乗り出した。

エイミー・グッドマン

「この規制緩和は、同じ地域にある新聞・ラジオ・テレビを、1人の人物が所有できるようにするものでした。」

ニコルズ

「これは、人々が最も恐れていた事です。

もし情報の出所が同じになってしまったら、ニュースは画一化されてしまいます。」

市民を立ち上がらせたのは、マイケル・パウエルがイラク戦争の映像を見て言った、「スリリングだ」との発言だった。

ノーマン・ソロモン

「戦争報道を『ワクワクした』と語るFCC委員長は、イラク戦争に怒りを感じていた人々に火を付けたんです。」

何百万人もの人々が、抗議をした。

しかし、マイケル・パウエルは聞く耳を持たなかった。

一方、規制緩和の達成が目前になると、巨大メディアは政府への感謝を述べた。

ソロモン

「あれには驚きましたよ。

バイアコム社のトップは、繰り返し言ったんです。

『ブッシュ政権は我が社にとって有益だ。だから私は、ブッシュ大統領の再選を支持する』と。」

2007年になると、FCCの進める規制緩和に対して、市民は立ち上がった。

エイミー・グッドマン

「何百万もの人々が、議会に手紙やメールを送り、千人規模の討論会で意見を述べ合いました。

1人の人間が、新聞もラジオもテレビも独占するなんて、あり得ない話です。」

FCCの公聴会では、規制緩和への反対意見が圧倒的だった。

しかし、新たにFCC委員長に就いたケビン・マーティンは、規制緩和を行った。

2011年7月7日に、連邦控訴裁判所は、この緩和の一部を「破棄するように」との判決を出した。

それにも関わらず、状況は改善していない。

2008年の大統領選挙中のバラク・オバマの演説から

「自由な情報交換を保証しなければなりません。

インターネットの中立性に取り組みます。」

オバマは、公約に掲げていた『自由でオープンなインターネット』という原則を、当選すると覆した。

大統領になると、ネットに対する新たな価格規定を導入した。

ジュリアン・アサンジ(ウィキリークスの創設者)

「費用を安くすれば、多くの人が様々な事を発表できます。

インターネットは、この点で非常に優れています。

ウィキリークスの情報が人々を驚かせるのは、真実がずっと隠されてきたからです。

アメリカに言論の自由をもたらす事が、我々にとっての闘いなのです。」

ジョン・コーエン

「インターネットの自由を守るのか、一握りの企業にネットを支配させるのか。

それが今の争点です。」

ロバート・マチェズニー(イリノイ大学の教授)

「ウォール街がカネを稼ぎたいからという理由で、この国をダメにしてもいいのでしょうか。」

ジョン・ニコルズ

「これは、アメリカだけの話ではありません。

世界中の人が直面している、極めて重要な闘いです。

アメリカ建国の父たちが自由のために立ち上がったように、我々も闘わなければならないのです。」

エイミー・グッドマン

「巨大企業のレンズやマイクを通さずに、真実を知ること。

それが、私達の身を守ることに繋がるのです。」

(2014.12.1.)


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