(Democracy Now!の動画から抜粋)
質問者
エドワード・スノーデン氏について、過去に遡って話して下さい。
グレン
香港で長い時間をかけて、彼から話を聞きました。
一体どんな心の動きが、自己犠牲の伴う告発に進ませたのか。
そこに興味があったからです。
驚くことに、彼が育ったのは連邦政府職員の家庭でした。
父親は沿岸警備隊に30年勤めており、普通の下層中流階級です。
スノーデンは、高校も卒業していません。
ノースカロライナ生まれで、バージニアで育ちました。
伝統的な愛国心が染み付いており、高校中退後にはアメリカ軍に入隊しています。
「イラクで戦うのは崇高な行為だ」と思ったからです。
彼は、イラクを解放するという、アメリカ政府のプロパガンダを真に受けていたのです。
でも訓練所では、アラブ人を殺す話ばかりだった。
質問者
軍事訓練で骨折したとの事ですね?
グレン
両足を骨折したために、イラクには行きませんでした。
イラクで戦おうとしたのも、NSAの告発に踏み切ったのも、根っこにある世界観は同じです。
抑圧された人々を助けようとする正義感なのです。
彼の告発は世界を変え、私も考え方が決定的に変わりました。
質問者
アメリカ軍に入隊した彼は、どのようにしてNSAの契約職員となり、最後にはブーズアレン・ハミルトン社に雇われる事になったのですか?
グレン
NSAが築いた諜報網で使える人材は、インターネットに関して高度な知識を持つ者だけです。
NSAが雇う人々は、ハッカーが似つかわしい。
スノーデンは、高校を中退して社会への適応が遅れていた。
でも、暗号化やプログラミングの腕で成功したのです。
ハッキングの才能はすぐに認められ、急速に昇進した。
でもネット文化で育った人々は、権威を嫌う傾向がある。
採用後に改心させるよう教育するが、うまく行くとは限らない。
だから、若い内部告発者が相次ぐのです。
彼の最初の仕事は、NSAの警備員でした。
メリーランド大学の中にあるNSA支局で働き始め、どんどん出世していった。
質問者
待って下さい。
大学の中にNSAの建物があるのですか?
グレン
ええ。
メリーランド大学の敷地内に、事務所と見まがう秘密施設があります。
そこでは、大学職員が協力しています。
見に行ったところ、建物は警備されていました。
質問者
スノーデンも警備員だったのですね?
グレン
制服を着てバッジも付けていました。
質問者
デル社に移ったのは?
グレン
彼は昇進していき、人物保証もあったので、ジュネーブで3年間CIAに雇われました。
でも幻滅して、NSAに移った。
アメリカの安全保障は民間への外注が進んだので、NSAで働くといえば普通はブーズアレンやデルなどの請負企業に雇われます。
彼はデル社に雇われて、CIAの仕事をしました。
質問者
民間企業のデルに雇われて、CIAのために働くのですか?
グレン
戦争と同じですよ。
イラクやアフガニスタンで戦ったり、イエメンでの無人機による空爆に参加したい場合、手軽かつ稼げるのはブラックウォーター社のような「軍事請負会社」に雇われることです。
ここが肝です。
アメリカ政府と軍の機能は、大半が民間企業の手に渡っています。
NSAの年間予算750億ドルのうち、75%もが直接に民間企業に流れます。
もはや境界はありません。
法律で定められたルールは、実際には民間企業では適用されません。
だからデルに雇われたスノーデンは、NSAの巨大システムに入り込めるのです。
政府の領域を、民間企業が所有して運用しています。
質問者
スノーデン氏がデルを退社してブーズアレンに移ったのは、なぜですか?
グレン
彼が内部告発を決意したのは、デル社に居た時です。
オバマが大統領になって政策の転換が行われると期待したのに、オバマが盗聴を継続してむしろ拡大するのを見た。
そして、『リーダーシップとは、自分が手本を示すことだ』と悟った。
彼は告発の決意を固め、「どんな資料が必要か」を考えた。
一部の資料を入手するためには、ブーズアレン社で特別の仕事に就く必要があった。
その資料のあるハワイの施設で働けるからです。
質問者
スノーデンは、デルでCIAの仕事をしていた時に、気付いた事があるそうですね?
グレン
彼の転機の1つは、日本でNSAの仕事をしていた時です。
デルに転職する直前の事です。
無人機ドローンによるリアルタイムの監視映像を見る事ができ、パキスタンの村の全体を見ることができた。
点のような人々が動くのが見え、その身元や通話相手の情報も入る。
無人機のおかげで、世界各地の膨大な情報が入ります。
(その結果ドローンを扱うCIAの監視能力は凄くなり)NSAにいた彼でさえ知らないほどの、監視の広がりだった。
質問者
監視していたのは、これから無人機で攻撃する村ですか?
グレン
この場合は、監視用の無人機であり、爆撃用ではありません。
誰を殺すかを決めるために、村を監視している。
(アメリカ政府・CIAは、パキスタン等で、「テロリストを探して抹殺するためだ」と云って、無人機で人々を監視している。
そしてテロリストと思った人物は、無人機で空爆し暗殺している。
テロリストではない民間人も、大量に巻き込まれて殺されている。)
このような事が行われているのに、民主的な議論もなく、国民に周知されない。
彼は、それに危機感を持ちました。
質問者
人々が文字を入力するのまで、NSAは監視しているそうですね。
グレン
NSAは、「マルウェア」と呼ぶ侵入目的のウィルスを、あの手この手でPCに感染させます。
メールを送ってクリックさせたり、銀行からの緊急連絡や納税通知に見せかけてファイルを開かせ、ウィルスに感染させる。
感染すると、すべての入力が丸見えになります。
「PC5万台に感染させた」と、NSAの文書が記しています。
スノーデンは、PC乗っ取りの成果を見ました。
PCユーザーのすべての入力すべての検索、メールやチャットの内容も、NSAの分析官に読まれている。
彼は、これに動揺しました。
質問者
スノーデン氏は、自分が盗み見た情報について語っています。
それを紹介しましょう。
スノーデン
分析官であれば、どこの誰を標的にしてもいい。
分析官の権限で範囲は決まりますが、私には誰でも盗聴する権限があった。
連邦裁判官や大統領のメールでも読めました。
質問者
「大統領でも盗聴できる」と、彼は言いました。
オバマ大統領は、当初これを全面否定しました。
グレン
その通りです。
アメリカ政府は、故意に国民を欺きました。
この時点では、我々がどんな証拠を握ったかを知らず、シラを切れると思っていたのです。
その後、我々が次々と資料を公開し、スノーデンの言っている事の正しさを証明しました。
NSAは、メールもチャットも検索も閲覧も収集しています。
NSAの分析官は、これを簡単に利用できます。
監視対象のメルアドを入力し、メニューから「正当な理由」を選択します。
「スパイ容疑」と打ち込めば、データベースからこの人物の全メールが届きます。
認可を与える監督官はいないし、事後の監査もほとんどない。
質問者
スノーデン氏はデル社やブーズアレン社で働いていましたが、国防情報局では他の職員に教育をしていましたよね?
グレン
そこが面白い所です。
アメリカのマスコミは、「スノーデンは下級のIT技師で、偶然に資料を見つけた」と、こぞって報じました。
しかし事実は真逆で、彼は『高度に訓練されたサイバー諜報員』です。
サイバー攻撃、サイバー防御、他国のシステムに侵入する事について、最高の能力を持っています。
そのため、他の職員に教えていたのです。
質問者
政府の諜報部員に教えていた?
グレン
そうです。優秀な技術者でした。
彼にスパイをさせていたのに、スパイ容疑をかけるとは、皮肉な展開ですね。
彼を訓練したのはNSAなのに、NSAが情報を盗まれて公開された。
アメリカ政府は、彼が名乗り出るまでマークしていなかったが、その後はただちに彼の能力や訓練内容を把握しました。
質問者
しかし、彼の内部告発から数週間後に、オバマ大統領はテレビでこう話しています。
オバマ大統領
断言できるのは、あなたがアメリカ国民なら、NSAはあなたを盗聴できません。
自国民は、決して盗聴していません。
法律でも規則でも認められていません。
それをするには、NSAではなく、(国内を担当する)FBIが裁判所に行って、令状を取る必要があります。
裁判官に十分な理由を説明する必要があります。
グレン
この発言は、真っ赤な嘘です。
息子ブッシュ政権が令状なしにアメリカ国民を盗聴していたのが2005年に明らかになり、スキャンダルとなりました。
それを受けて、アメリカ議会は超党派で2008年に『FISA修正法』を制定した。
当時のオバマ議員も支持しました。
この法律は、ブッシュ政権の盗聴の合法化が目的でした。
以来ずっと、令状なしにNSAは盗聴をしてきました。
周知のように、FISA裁判所はお飾りの存在です。
1970年代にチャーチ委員会が監視の乱用を暴いた時に、この裁判所ができた。
これは、政府側だけが出廷できる秘密裁判であり、令状許可の自動製造機です。
政府の申請を却下するなど、あり得ません。