エコノミック・ヒットマン⑥
パーキンスはEHMの本を書き上げる

(『エコノミック・ヒットマン』ジョン・パーキンス著から抜粋)

1989年のアメリカのパナマ侵攻は、私に衝撃を与えた。

私は再び本を書き始め、今回はパナマの指導者だったトリホスに焦点を当てることにした。

執筆を進めるうちに、私たちエコノミック・ヒットマン(EHM)が果たしてきた役割の大きさに、我ながら言葉を失った。

「EHMをしていた当時は、目先の事に追われて広い視野で物事を見られなかった」と、今さらながら気付いた。

本を書くという行為は、私に全体像を見せてくれた。

奴隷商人は、現代でも存在している。

現代の奴隷商人は、わざわざアフリカのジャングルに分け入って商品を探したりしない。

単に悲惨な状況にある場所に進出して、人々を雇い、工場で商品を作らせればいいのだ。

昔の奴隷商人は、「自分が売り買いしているのは野蛮な人間で、彼らがキリスト教徒になる機会を与えてやっている。奴隷たちは、私たちの経済の基盤だ。」と、自らに言い聞かせていた。

現代の奴隷商人は、「貧困にあえぐ人々に、仕事や社会の一員になる機会を与えてやっている。彼らの存在は、我が社が生き残るための基盤だ。」と、自らに言い聞かせている。

1990年代に入ると、アメリカ帝国は国境を越えて広がろうとした。

かつて米企業だったものは、多国籍企業となった。

そうした企業は、従うべき法律や規制を多様な選択肢から選べる。

私が経営していたIPS社は、1990年11月に売却した。

アシュラント石油がひどい圧力をかけてきたので、売却に踏み切らざるを得なかった。

1997年になると、私はEHMの存在を暴く本を書こうと、再び決心した。

私はSWECのコンサルタントを辞めた。

だが、親しい友人たちに本の執筆を話すと、彼らは止めようとした。

そして、私はまたも書くことをやめた。

2001年に、9.11事件が起きた。

世界貿易センタービルは、1960年にデイヴィッド・ロックフェラーが始めたプロジェクトだったと読んだ記憶がある。

近年あのビルは、採算が合わず、光ファイバーやインターネットに適さず、非効率なエレベーター・システムが負担になっていたという。

あの2つの塔は、かつてはロックフェラー一族の兄弟の名前を使って、デイヴィッドとネルソンというニックネームで呼ばれていた。

この大事件を見て、私は再び本を書こうと決心した。
(そして今回は、ついにEHMの本を書き上げた)

結局のところアメリカ帝国は、『ドルが基軸通貨となっていて、米造幣局がドルを印刷する権利を独占していること』に、大幅に依存している。

これがあるから、アメリカはエクアドルなどの国に、相手国が返済不能に陥ることを承知でカネを貸せる。

通常ならば、相手が返済できなくなれば、自分も苦しくなる。

だがアメリカは、ゴールドで保証されているのではない紙幣を印刷している。(つまり、いくらでも印刷できる)

ドルの印刷は、アメリカ自身が借金をする事も可能にしている。

2003年時点で、アメリカ政府は国民1人あたり2.4万ドルもの借金をしている。
この債務の多くは、日本と中国から負っている。

もしドルに代わる通貨が台頭したり、債権国が債務返済を求める決定をしたら、状況は劇的に変化するはずだ。

2003年4月のニューヨーク・タイムズ紙には、こんな記事があった。

「ブッシュ政権は、イラク再建の計画で最重要な契約を、ベクテル・グループに与えた。

イラクの人々は、世界銀行やIMFと手を携えて、再建にあたるだろう。

ベクテル社は、米政府と長年の繋がりがある。

重役のジョージ・シュルツは、レーガン政権で国務長官を務めた。

シュルツは、ベクテル社の上級顧問や社長を歴任してきた。

レーガン政権で国防長官をしたキャスパー・ワインバーガーも、ベクテル社の重役だった。

今年になってブッシュ大統領は、ベクテル社CEOのライリー・ベクテルを、輸出諮問審議会の一員に任命した。」

CNNの記事でも、こんな事が書かれていた。

「イラクでの主な入札企業には、チェイニー副大統領がかつてCEOを務めたハリバートン社の子会社『ケロッグ・ブラウン・アンド・ルート』も含まれている。

ハリバートン社はすでに、2年以内にイラクの石油インフラを補修する、70億ドルの契約を獲得している。」

これらの記事は、私に1970年代のSAMAを思い出させた。

SAMAは、サウジアラビア王家にアメリカのルールに従う事を約束させた。

(これについては、エコノミック・ヒットマン③に書いてあります)

もしサダム・フセインがサウジ王家のように取引に応じていたら、その地位を追われることは無かっただろう。

だが、そんな風に考える人は一体どれだけ居るだろうか。

これまで主流メディアは、こうした真実が広まらないように注意してきた。

だが、真実は漏れ始めている。

私自身、真実を語らずにきたのを思い出した。

告白しなければならない事があると、ずっと昔から分かっていた。

振り返ってみると、罪悪感のささやきはクローディンのアパートでEHMの訓練を受けた時からずっとあった。

「あらゆる経済成長は有益であり、成長が大きければ大きいほど利益は広範囲にもたらされる」と、私たちは聞かされてきた。

だが現実には、主流から外れた場所の人々は、搾取の対象となっている。

私たちは、偽りの中で生きている。

歴史上で最大の富を有するアメリカ帝国では、自殺・薬物乱用・離婚・児童虐待・強姦・殺人が、高確率で起きているではないか。

かつて、植民地アメリカはなぜ独立への闘争をしたのだろう。

指導者の多くは繁栄していたし、餌をくれる人(イギリス)の手を咬んで、あえて命を危険にさらす行動へ駆り立てたものは何だったのか。

何らかのエネルギーがあったに違いない。

その時、気付いた。『言葉』だ。

トム・ペインやトマス・ジェファーソンの言葉を通じて、真相を明らかにした事が、アメリカ人の心に火を付けたのだ

トム・ペインは、大英帝国の暴政について指摘し、人々は家庭でそれを読み酒場で論じた。

植民地の人々は疑問を口にし始め、新しい道を見つけた。

表面下にある真実を理解し、大英帝国が彼らを搾取し奴隷にするやり口を知った。

大英帝国が嘘を納得させていた事に、彼らは気付いた。

「大英帝国のシステムは人類にとって最良で、人々を助ける効率的で人間的なものだ」といった嘘だ。

実際には、そのシステムはほんの一握りの人々だけを豊かにするものだった。

「今度こそ、私は途中で筆を折らない」と、決意した。

この本に『言葉』を綴るのだ。

物事は、見かけだけでは理解できない。

アメリカでは、NBC、ABC、CBS、CNNは(大手テレビ局は)、多国籍企業に所有されて操作されている。

大手メディアは、アメリカ支配層の一部なのだ。

だから、真実を明らかにする責任は、あなた自身の肩にかかっている。

変革のためにできる事は、いくつもある。

石油の消費を減らそう。すべてについて倹約しよう。

自由貿易協定や、人々や自然環境を酷使する企業に、抵抗しよう。

私たちが直面している諸問題は、悪意に満ちた組織がもたらした結果よりも、むしろ経済発展についての誤った認識から派生している。

私たちは、教育に対する姿勢を改革する必要がある。

自分が良い手本となって、周囲の人々を導くのだ。

1990年に先住民のシュアル族の人々は、私にこう言った。

『世界は、あなたが夢見たとおりになる』

公害や渋滞や人口過密からなる、古い悪夢は捨てよう。

大地を尊び、社会全体が平等と継続性を基盤とする、新しい夢を見よう。

この本は、EHMになる事を自分に許してしまった男の告白だ。

私は、数多くの特権を提供され、人々から搾取しているとよく知りながら常に言い訳を見つけていた。

アメリカ帝国の発展のために殺人や環境破壊を正当化する、手本を示してしまった。

私にとって、告白することは目覚めるために欠かせない一部分だった。

あなたも、あなた自身の告白をしなければならない。

あなたはどんな人生を歩んできたのか、これからどんな事をするのか。

真実を語れば、あなたはたちまち開放感を味わうだろう。

ペインやジェファーソンら愛国者たちは、今日も私たちを励まし続けている。

(2015年7月7日に作成)


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