あなたの知らない宇宙 BBC制作(前半)
ひも理論 11次元論 M理論(膜宇宙論)

(『あなたの知らない宇宙』BBC制作から抜粋)

最新の理論は、信じがたい結論を導き出しています。

「宇宙は1つではない」というのです。

ミチオ・カク氏

「それぞれが違う物理法則を持つ、無数の宇宙が存在しているのです。」

「人間の五感を超越した世界があるのではないか」、これが長年の謎でした。

神秘主義者は古くからそれを信じ、「その世界には霊魂が溢れている」と考えていました。

1920年代以降、物理学者はある奇妙な現象に戸惑っていました。

『素粒子の正確な位置を割り出そうと試みても、まったく不可能だった』のです。

素粒子は、1ヵ所にとどまっていませんでした。

アラン・グース氏

「素粒子は、SF小説よりも奇妙です。素粒子は、1ヵ所以上の場所に、同時に存在している可能性があります。」

この事実から、物理学者たちは、「素粒子は、私たちの宇宙だけに存在するのではないのかも」と想像しました。

『素粒子は、平行宇宙を行き交っている。平行宇宙は無限にあり、わずかづつ違っている。』と考えたのです。

アラン・グース氏

「つまり、起こり得る事はすべて、どこかの平行宇宙で起きているのです。

その平行宇宙では、違う人物が大統領になっていたり、死んだはずの人が生きているのです。」

この考えは、「あまりにとっぴである」とされて、何十年も無視されてきました。

しかし、平行宇宙論は復活してきています。

物理学者の最大の願いは、『宇宙のすべてを説明できる統一理論を見い出すこと』です。

そして彼らは、平行宇宙へと導かれました。

宇宙論の革命は、1980年代に起こりました。

宇宙のすべてを説明できるかもしれない、新しい理論が誕生したのです。

それは、「すべては、ひもから出来ている」という理論でした。

バート・オブルット氏

「物質はごく小さな粒子(素粒子)から出来ている、と長い間考えられていました。

しかし、粒子ではなく、小さなひもであるとなったのです。」

素粒子の正体は、『目に見えない小さなひも』でした。

これは、『ひも理論』と呼ばれています。

「物質は、小さなひもから、音楽のように紡ぎ出される」という考え方です。

バート・オブルット氏

「ヴァイオリンやギターの弦を、イメージして下さい。

弦は、一定の振動で音が出ます。
別のポジションを押さえれば、別の振動になり、別の音になります。

宇宙は、目に見えないひもが奏でる、色々な音(振動)で出来ているのです。」

ミチオ・カク氏

「私たちは突然、『宇宙は交響曲であり、物理法則はひものハーミニーである』と気づきました。」

バート・オブルット氏

「ひも理論は、私たちをなぎ倒しましたよ。
エレガントでシンプルな理論です。

統一理論として使えるのではないかと、多くの科学者が考えました。」

しかし、ひも理論が宇宙の統一理論になるには、1つのテストに合格しなければなりません。

『宇宙の起源』を説明する必要があったのです。

宇宙の始まりは、巨大な爆発(ビッグバン)であると言われています。

この『ビッグバン理論』の研究が進められ、次第に「ビッグバンの瞬間に何があったか」まで近づいていきました。

ポール・シュタインハート氏

「この宇宙が10億歳だった頃のことが分かり、最初の原子ができた数十万年の時のことが分かり、最初の原子核が形成された誕生から数十秒後のことも計算できています。」

アラン・グース氏

「ビッグバン直後まで、さかのぼる事ができたのです。」

ところが物理学は、暗礁に乗り上げました。

どうしても、ひも理論とビッグバン理論を融合できないのです。

事態は悪化し、2つの理論は崩壊し始めます。

ビッグバンの瞬間に近づいていくと、そこから先に進めない「時間の壁」にぶつかりました。

アラン・グース氏

「ビッグバン理論は、ビッグバンそのものについては、何も説明できていませんでした。なにが爆発したのか、なぜ爆発したのかが、分かっていません。」

ミチオ・カク氏

「ビッグバンの瞬間は、私たちの知っている物理の法則が破綻してしまうのです。
それが、根本的な問題でした。

宇宙論の最も重要な部分(ビッグバン)は、物理法則に当てはまらないのです。」

ポール・シュタインハート氏

「アインシュタインの一般相対性理論を使って、ビッグバンの過程を遡って行くと、ビッグバンの瞬間に行き着きます。

ところがビッグバンの瞬間には、アインシュタインの方程式そのものが破綻してしまうのです。」

一方、ひも理論でも重大な問題が持ち上がります。

別の物理学者が、第2のひも理論を発見したのです。

最終的には、5つの異なったひも理論が現れました。

バート・オブルット氏

「これは、大問題でした。
大変な時間を費やして、1つ1つの理論を検証しました。」

ひも理論が分裂を始めた時、それを冷静に見つめていた1人の科学者がいました。

それは、マイケル・ダフです。

マイケル・ダフは、かつて脚光をあびた『超重力理論』の若き担い手でした。

この理論は、ひも理論の登場で隅に追いやられていました。

超重力理論の支持者たちは、自分たちの理論がひも理論とそれほど違わない点にイラ立っていました。

両者の違いは、『宇宙の次元数の違い』だけでした。

ひも理論は、「次元は、きっかり10ある」としていました。

バート・オブルット氏

「ひもが振動するには、そのための空間が必要です。
これを数学的に計算すると、ひもは10次元に存在していなければおかしいのです。

空間の9次元と、時間の1次元です。」

超重力理論は、「11次元ある」と考えていました。

マイケル・ダフ氏

「超重力理論は、11次元で考えると最もエレガントでシンプルな形になりました。」

ひも理論の分裂を救う新しい解釈、それが「11次元」でした。

11次元を前提にすると、競合していた5つの理論に、魔法のような事が起きたのです。

バート・オブルット氏

「5つの理論は、11次元で考えると、すべて同一のものだと分かったのです。

5つの理論は、より基礎的なひも理論の、別々の表現でした。」

ミチオ・カク氏

「11次元の山のてっぺんから見下ろすと、ひも理論はより大きなものに見えました。」

マイケル・ダフ氏

「11次元の研究が無駄ではなかったと分かり、すごく嬉しかったです。」

11次元でひも理論を考えると、ひもの状態は変化し、『それぞれのひもの端は、1つの膜に結合』しました。

『宇宙のすべての物質は、1つの膜に繋がっている』という結論に達したのです。

「宇宙は1つの膜である」という考え方。

これは、『M理論(膜宇宙論)』と名付けられました。

11次元は、「3次元の世界から、1兆分の1ミリ離れた所に存在している」と言われています。

極めて近い距離にあるのですが、11次元を感じ取る事はできません。

この11次元に、私たちの宇宙の膜は浮かんでいる、と考えられます。

後半に続きます)

(2014年2月21日に作成)


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