木星の主要な4つの衛星(ガリレオ衛星)
イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト

(『惑星地質学』東京大学出版会から抜粋)

木星は多数の衛星を持ち、63個(2007年9月時点)も発見されている。

サイズの大きい4つ(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)は、「ガリレオ衛星」と呼ばれている。
ガリレオ・ガリレイが見つけたからだ。

この衛星たちは、木星から40~200万kmの距離にある。

ガリレオ衛星は、木星に近い順にイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストで、双眼鏡でも見えるほどに大きい。
小さな惑星に匹敵するサイズである。

4つ共に、軌道面と公転方向は木星の赤道面と自転方向にほぼ一致し、地球の月と同様に木星にいつも同じ面を向けている。

1979年にボイジャー探査機が木星に接近した際、ガリレオ衛星も撮影されて、イオの活火山、エウロパの筋模様、ガニメデの明暗二分性と、想像を超えた個性が明らかになった。

これにより調査ターゲットになり、1995年から8年間にわたってガリレオ探査機が調査を行った。
その結果、様々な情報が入手できた。

ガリレオ衛星の重要性は、4つの衛星が様々な個性をもち、多彩な表層状態・地質活動が見られることに尽きる。

個性がどのように形作られたかを探っていけば、天体の理解が深まる。

ガリレオ衛星は内部も大きな違いがあり、イオは岩石のみから出来ており、エウロパは9割が岩石で1割が氷成分、ガニメデとカリストは半分が氷成分である。

内側を回るものほど氷成分が少ないが、これは潮汐加熱の影響が大きい。

潮汐加熱とは、衛星の軌道が円からずれている場合に、母惑星からの潮汐力が刻々と変化することで、衛星が揉まれて加熱される作用をいう。

○ イオ

イオは、月より少し大きい1815kmの半径で、2日弱で木星を回っている。

太陽系で最強の火山活動をもち、噴火を続ける火山がいくつもある。

火山活動のエネルギー源は、木星から受ける潮汐である。

軌道が円からずれているため、木星の潮汐力で揉まれて熱をもつ。

衛星が受ける潮汐力は、軌道離心率が大きく、軌道が惑星に近く、惑星の質量が大きいほど、強くなる。

木星の質量はとても大きく、イオの公転周期は月の16分の1であるために、潮汐によってイオの表面は最大100m近くも上下動する。

この変形による摩擦熱で、激しい火山活動が起きるのである。

1979年にボイジャー探査機がイオに接近するまで、科学者たちは「月のように冷え切った天体だろう」と想像していた。

ところが探査機の送ってきた画像には、クレーターはいっさい見当たらず、表面からは高さ300kmに達する雲のようなものが出ていた。

この雲のようなものは、火山から立ち上る噴煙で、地球外天体で初めて活火山が確認された歴史的な瞬間だった。

北米のセントヘレンズ山の1980年の噴火では噴煙高度は25kmで、イオの火山活動の巨大さが分かる。

最終的にボイジャーは、9つの火山を確認した。

1995年に木星系を訪れたガリレオ探査機は、イオの表面を重点的に調査した。

そして火山の他にも、溶けた硫黄の湖、深さ数kmのカルデラ、巨大な溶岩流、火山ではない普通の山を見つけた。

冥王星を探査するニュー・ホライズンズは2007年に木星を通過したが、イオのプルームの構造などを観測した。

赤外線観測により、火山の噴出口の温度は最高で2300Kに達すると分かった。

地球の溶岩の温度は1500K程度だから、極めて高温である。

表面から放出される熱流量は、全球平均で2W/㎡以上だ。

地球では0.087W/㎡なので、発熱がいかに大きいかが分かる。

イオには、ごく薄い大気がある。
主成分は二酸化硫黄。

この大気は、木星の磁気圏と強く相互作用しており、オーロラを発生する。

磁場のないイオでは、木星磁気圏からの荷電粒子がそのまま衝突するため、赤道領域が特に発光する。

木星から伸びる磁力線がイオとつながることで、木星にもオーロラが起きる。

イオの火山放出物は、イオ周辺に雲のように広がっており、一部はプラズマ化して木星オーロラの原因の1つになっている。

○ エウロパ

エウロパは、木星から約42万kmの軌道を3.5日で回っている。

半径は月よりもやや小さい1565kmだ。

表面は主にH2Oから成る氷でできていて、光の反射率が非常に高くて明るい。

ボイジャー探査機が初めてエウロパを撮影したが、表面は滑らかで、暗褐色の筋やシミがあった。

クレーターはほとんど見られず、表面は新しいように見えた。

科学者たちは、「表面の亀裂から氷や水が吹き出して、それがクレーターを消し去っている」と考えた。

ガリレオ探査機がエウロパを撮影すると、この予想を確信に変える画像が入手できた。

たくさんの筋模様があり、そこは数十~数百mの高さをもつ山脈のような地形になっていたのだ。

これらは、木星から受ける潮汐力で表面が割れ、水や氷が噴出してできたと考えられている。

エウロパは、外側を約100kmの厚さでH2Oが覆い、その下にはケイ酸塩岩石のマントル、中心部には金属鉄のコアがあると考えられている。

木星の磁気圏の軸は、木星の自転軸から10度傾いている。

ガリレオ探査機が木星磁場とエウロパの相互作用を調べたところ、最接近する前後で木星磁場が乱れることを発見した。

この乱れは、エウロパ内部に自転軸に対して90度近く傾いた磁気双極子があると考えると説明できる。
エウロパ内部に電気伝導体が存在し、木星磁場の変動に応答して電流を生むのだ。

これは「内部に海水のような塩分を含んだ液体が、全球的に存在すること」を意味する。

エウロパには、衝突クレーターが少なく、直径5kmを超えるものは数個しかない。

さらにクレーターは、深さが浅いものが多い。

通常だとクレーターの直径と共に深さも増すが、エウロパでは直径8kmを超すと深さは反比例して減少する。
これは、内部に柔らかい氷や液体があるためと考えられる。

深さ8kmより下には氷が対流運動をしており、20~25kmより深い領域には海があると予想されている。

赤外線観測により、表面の平均温度は100Kと分かった。

表面の氷は岩石のように硬く、内部の水が表出しても瞬時に凍結してしまうはずだ。

エウロパには、主に酸素から成る非常に薄い大気(地球の大気圧の1兆分の1)がある。

仮に厚さ100kmの海が内部にあるとすると、その体積は地球の海の倍以上になる。

(『ニュートン 2014年12月号』から抜粋)

地球の表面は、複数のプレートから成り、プレートは少しずつ動いている。

これまでは、太陽系の中でプレート運動が知られているのは、地球だけだった。

アイダホ大学のカッテンホーン博士と、ジョンズ・ホプキンズ大学のプロクター博士らは、ガリレオ探査機で撮影された木星の衛星「エウロパ」の写真を解析した。

すると、『エウロパの表面の氷のプレートが、運動している可能性があること』を発見した。

エウロパの表面には、無数の溝がある。

その溝を手がかりに表面を解析すると、存在すると予想される地形が15%ほど見つからなかった。表面の古い地形の一部が、失われているのである。

見つからない地形は、別のプレートの下に沈み込んだと考えられる。

(『惑星地質学』東京大学出版会から抜粋)

○ ガニメデ

ガニメデは、木星で最大の衛星で、太陽系最大の衛星でもある。

その大きさは水星を上回り、2630kmの半径をもつ。

しかし質量は水星の半分以下である。(水星は金属が多く密度が高い)

ボイジャー探査機が初めてガニメデを撮影したが、注目されたのは表面の明暗の二分性だった。

暗い領域はたくさんのクレーターに覆われ、古い年代をもっていた。

明るい領域はクレーターが少なく、溝が縦横に走っていた。

その後、ガリレオ探査機の調査の結果、暗い領域は約40億年前から変化がないと思われている。

明るい領域の複雑な溝地形は、表面の氷が大きく変形したためと考えられる。

溝地形では、非常に滑らかな帯状の領域が見つかった。

これは、表面が大きく割れ広がり、その間を内部から出てきた柔らかい氷が埋めたと考えられている。

ここはガニメデで最も新しい地形である。

ガリレオの赤外線観測により、表面温度は最も低い両極付近で80K以下、最も高くなる赤道の昼間で150Kと分かった。

さらに、表面は主にH2Oの氷でできており、暗い領域にはケイ酸塩や二酸化炭素が多く存在すると分かった。

ガリレオが発見した最重要な事実は、「ガニメデには大規模な固有磁場があること」である。

衛星で初めて固有磁場の存在を確認した。

磁場の原因は、地球と同じく金属核内部での対流運動(ダイナモ運動)と考えられる。

重力場測定から、ガニメデの中心には半径600~1200kmの金属核があると見られる。

さらに、エウロパのように内部に海があることを示す磁場の変動も観測された。

エウロパよりもH2O層が厚く、海があるとすれば深さ150km付近だろう。

○ カリスト

ガリレオ衛星で最も外側にあるカリストは、火星とほぼ同じサイズの氷衛星である。

ボイジャー探査機で初めて表面が撮影されたが、活動は見られず、大小のクレーターが埋め尽くしていた。

最大のクレーターであるヴァルハラは、直径が1800kmにも及ぶ。

クレーターの数が多いという事は、クレーターを消し去るメカニズムがないわけで、表面が古くからそのままなのを意味する。

カリストはおそらく、星の形成当時の状態を留めている。

表面で次いで目に付くのは、一様な暗さだ。

この暗さは、H2O氷の中に鉄やマグネシウムを含むケイ酸塩の水和物や二酸化炭素などの不純物が混ざっていたり、不純物のダストが表面を覆っているためである。

所々に白く明るい斑点が見えるのは、不純物の少ないH2O氷である。

カリストの質量の半分はH2O氷だが、内部はケイ酸塩岩石と氷の混合物でできているらしい。

カリストは冷えきった静かな天体だと思われてきたが、ガリレオ探査機の調査で「内部に海を持つ可能性がある」と分かった。

ガリレオの磁力計データは、エウロパと同じようにカリストの影響で木星磁場が擾乱されるのを検出した。

それはカリスト内部に海の存在を考えないと説明できない。

表面下50~200kmの深さに、数十~数百kmで海があると考えられている。

カリストには、地球の1兆分の1という極めて希薄な大気がある。

(2015年5月24日、2016年12月19日に作成)


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