冥王星と、その衛星たち

(『ネット上の記事』から抜粋)

2015年7月に、冥王星へのフライバイに、NASAの探査機「ニューホライズンズ」が成功した。

NASAの科学者チームは、同年11月9日に観測結果を発表した。

その観測データは、それまでの予想(認識)と全く異なっていた。

冥王星の南極付近にある2つのくぼみは、氷の火山のカルデラかもしれない。

2つのくぼみは、それぞれライト山とピカール山という巨大な山の上にある。

冥王星の山から噴出するのは、氷らしい。

おそらく、窒素、一酸化炭素、水の氷が混ざった、どろどろしたものだろう。

NASAのエイムズ研究センターは、「火山である」と考えている。

こうした山々は、氷に浮かんでいるらしい。

窒素が凍った氷の海に、山(氷の塊)が浮いているのである。

山々は、氷の海よりも密度が低いため、浮いていられる。

高さ3500mもの山のあるエリアは、「ノルゲイ山地」と名付けられた。

ノルゲイ山地の脇にある氷の平原は、「スプートニク平原」と名付けられた。

この平原には、でこぼこした丘がある。細い谷間によって区切られている。

この氷原は、形成されてから1000万年しか経っていないらしい。

アラン・スターン(NASA)

「小さな天体が、形成から数十億年後になっても大きな活動をしていると分かったのは、大発見です。」

冥王星で新しい表面が形成されるには、太陽以外の熱源が必要である。

太陽から遠いため、太陽のエネルギーはほとんど届いていない。

なぜ外殻(表面)に動きあるのかは、分かっていない。

冥王星の表面には、スプートニク平原のような滑らかな場所がある。

だが他の場所は、穴だらけだったりウロコ状である。
巨大な裂け目がいくつもある。

冥王星の外殻(表面)の下に液体の海があるなら、その海がゆっくり凍って膨張することで、外殻に巨大な裂け目ができる可能性がある。

冥王星の表面には、ハート型の巨大な平坦な部分もある。

今回の観測で分かり、「クライド・トンボー(トンボー領域)」と名付けられた。

この領域は、日本の2倍近い面積である。

今回のフライバイまでは、冥王星には窒素が主成分の大気が大量にあると予想されていた。

だが、大気は多くなかった。

大気中の高い所には、シアン化水素があると分かった。

シアン化水素が大気の温度を大幅に下げて、窒素を氷のまま留めているらしい。

冥王星に大気が存在すると分かったのは、1988年である。

当初は、太陽から遠いため大気は凍りつき崩壊すると考えられていた。

大気中にもやの層がはっきり見られた事は、科学者たちを驚かせた。

風によって出来たと思われる縞模様もあり、大気が昔はもっと濃かった可能性がある。

冥王星には、4つの小さな衛星「ステュクス」「ニクス」「ケルベロス」「ヒドラ」がある。

その姿が今回明らかになったのだが、予想を超えて奇妙な天体だった。

ケルベロスとヒドラは、2つの天体がゆっくりと衝突して融合したように見える。

奇妙なのは、衛星たちの自転が速い事である。

ヒドラは、10時間に1回で自転している。

ニクスには赤みがかったクレーターがあり、何なのかは現状では分からない。

(ニクスとヒドラは、2006年にハッブル望遠鏡が見つけた)

ニューホライズンズは、初めてきちんとヒドラの姿を捉えた。
そして、大きさは43kmと推定できた。

ヒドラの表面は、水の氷が主成分と考えられる。

ニクスとヒドラは、コマのように軸を持って回転するのではない。
軸を持たず、不規則にごろごろと自転している。

太陽系では、不規則な自転をするのは、他には土星の衛星ヒペリオンしかない。

ニクスとヒドラがその様な自転をするのは、冥王星と異常に大きい衛星カロンが、連星系を作っているからである。

ステュクスとケルベロスも、不規則な自転をしている可能性がある。

ケルベロスは、直径30kmほどの小さな衛星だが、ハッブル望遠鏡では黒色に見えていた。

だがニューホライズンズの観測では、他の3つの衛星と同じ程度の明るさだった。

巨大な衛星「カロン」は、直径は1208kmで、質量は冥王星の7分の1である。

北極付近に300km以上に渡って、暗い領域がある。

冥王星とカロンは連星系を作っていて、共通重心のまわりをお互いに公転している。

ニューホライズンズの観測では、カロンに深い峡谷や崖、暗い領域があると分かった。
表面のひび割れは、深さ8~10kmの巨大なものもある。

科学者たちはこれまで、表面はクレーターだらけだろうと予想していた。

だがクレーターは少なく、冥王星と同様に地質活動があるらしい。

探査機ニューホライズンズは、冥王星に到達するまで9年半を要した。

冥王星のそばを通過するのにかかった時間は、3分である。

その短い時間に何百項目もの調査をし、16ヶ月間をかけて徐々にデータが地球に送られてくる。

この接近(調査)で、冥王星の南極を初めて目にする(撮影する)ことができた。

(南極付近には、黒い斑点状の領域があると判明した)

「冥王星は銅褐色をしており、衛星カロンは淡い灰色をしている」と、今回わかった。

(冥王星は地球から遠い位置にあるため、今まではぼけた画像でしか撮影できなかった)

(2015年12月31日に作成)


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