(『大恐慌のアメリカ』林敏彦著から抜粋)
ライオネル・ロビンズは、1934年の著作『大不況』において、「不況が長引いている理由は、独占企業によるカルテル・労働組合・政府の規制が、市場の機能を妨げているからだ」と分析した。
彼は、硬直的な価格、硬直的な賃金、関税などによる政府の介入が、非効率な生産者の淘汰を不可能にして、価格下落を妨げていると考えた。
オイゲン・ヴォルガは、1933年の著作『大恐慌とその政治的結果』において、「資本家による労働者の搾取がすすみ、富の分配の不平等化が進んだ。そのために、供給と需要のバランスが崩れて、過剰生産型の恐慌となった」と主張した。
ヴォルガは、不況の長期化は「貿易縮小の政策」「労働者の搾取と所得分配の偏り」「独占企業による高価格の維持」だと分析した。
上記の2人は、不況の長期化の原因として、『好況期に進行していた、所得分配の不平等化』を挙げている。
統計によっても、この事は確認できる。
所得上位1%の所得が、国民全体の中で占める割合は、1920年の12%から、29年には19%になっていた。
所得上位5%の所得が、国民全体の中で占める割合は、1920年の25%から、29年には34%になっていた。
この原因は、企業が儲かっていたのに、賃金を上げなかった事である。
1920年代のアメリカの繁栄は、きちんと分配がされなかったために、貧富の格差を大きくした。
このため、購買力を持った人々が増えず、需要が頭打ちになってしまったのである。
20年代の半ばに、住宅建設の需要はピークをうった。
自動車生産は29年の初めに、その他の耐久財需要も29年秋までに、減少に転じていた。
(2013.8.1.)