ロズウェル・テクノロジーを兵器開発に用いる⑤
光ファイバー

(『ペンタゴンの陰謀』フィリップ・J・コーソー著から抜粋)

1962年に入ると、エドガー・フーヴァーFBI長官がペンタゴンに来て、私と面会した。

フーヴァーはロズウェル事件の噂が気になっていて、しかも事件にCIAが絡んでいるとの話を懸念していた。

私の側も情報を求めており、兵器開発のパートナーにする予定の科学者や大学研究員が、共産主義者やCIAと繋がっていないかを知りたかった。

そこで私は、ロズウェル事件の情報と交換することにした。

フーヴァがロズウェル事件の深い部分まで知っていたかは分からないが、彼はUFOの目撃情報があるたびにFBIの者を派遣して、事情聴取させていた。

その情報を私に回してくれて、1960年代の前半に起きていた家畜の臓器切断事件の詳細は彼から聞いた。

1962年になると、「アメリカ陸軍研究開発局・海外先端技術部」で働く私と上司のアーサー・トルードー中将に、早くも人事異動の話が出てきた。

そこで私たちのロズウェル事件で入手したものを使った兵器開発プロジェクトは、最終段階に入った。

(※著者のフィリップ・J・コーソーは、1961年にアメリカ陸軍研究開発局・海外先端技術部に配属されている。
それが翌年に人事異動とは早すぎる気がする。
ロズウェル事件とそのテクノロジーに関しては、深入りする者を限定するため担当者を短期で交代させていたのかもしれない。)

私が今回使う、ロズウェル事件でアメリカ軍が入手した品は、「ガラス・フィラメント」だった。

ロズウェルに墜落した宇宙船には、私たちが使っている電気配線が見当たらなかった。

船体を走る1本のガラス・フィラメントの束が、配線と思われたが、それは墜落のはずみでコントロール・パネルから外れたらしく、石英のような12本のフィラメントがこよりになっていた。

回収チームが1本のフィラメントの先端に光を当ててみたところ、反対側が発色した。
その色は、フィラメントによってそれぞれ違った。

フィラメントはガラスのような透明なチューブで、接続箱のようなものに繋がっている。そこから枝分かれして、発色によって認識されるらしかった。

分析にあたったエンジニアは、光に特有の波長があることを突き止め、それがコントロール・パネルを作動させると考えた。

驚くのは、フィラメントには弾力性があり、曲げても発色し続けることだった。

どうしたら光が曲がるのかが、分からなかった。

1950年代は謎のままだったが、60年代に入るとベル研究所で光ファイバーの実験が始まった。
(※ベル研究所は、ロズウェルのガラス・フィラメントを見せられていた)

1962年の初頭に私は、ハンス・コーラーから光ファイバーの説明を受けた。

「純度の高いフィラメントで出来ていれば、光線に何の抵抗もない。ただし先端に強力な電源を必要とする」と。

それを聞いて、私はロズウェルの宇宙船にあった強力なレーザー装置を思い出した。

異星人は、レーザーとガラス・ケーブルの2つを合わせて使っていたのだ。

「しかし、何が光を曲げるんですか?」と、私はコーラーに質問した。

コーラーは笑って言った。
「種も仕掛けもない。ガラス繊維が細いからだよ。」

ロズウェルのガラス・フィラメントは、外側が1枚の素材で覆われているように見えるが、実は二重になっていて、顕微鏡で見るともう1枚のガラス層がある。

光線はガラス層に反射して、内側に閉じ込められるので、光を曲げることも出来るのだ。

ハンス・コーラーは説明した。

「光ファイバーは、あらゆる信号を運ぶために作られたのかもしれない。

光の信号には抵抗がないから、より沢山の情報を盛り込めるんだよ。

そしてレーザーが信号を増幅できれば、光ファイバーは多様な信号を同時に送れる。」

これを軍事に使えば、戦場での情報伝達が進化すると私は思った。

コーラーは言った。

「光ファイバーを使えば、データのかさばる監視用の人工衛星からの映像も伝達できる。

宇宙開発の要はデータの伝達だが、現段階では中継器やスイッチで場所を取りすぎているし、信号への電気抵抗も大きい。
でも光ファイバーの技術なら解決できる。」

ベル研究所が光ファイバーの研究で先行しているというので、私はさっそくベル研究所と接触した。

上司のアーサー・トルードーに報告すると、「必要な開発予算は私が取ってくる。技術を企業に教えてやれ」と言う。

それで私は、ウェスタン・エレクトリックの研究者と会うことにし、ニュージャージー州プリンストン郊外の研究所へ行った。
すぐそばにはプリンストン高等研究所もあった。

〇村本尚立のコメント

私が小学生高学年か中学生の頃(1990年くらい)に、学校で配られた資料で読んだと思うのですが、将来に大活躍すると見込まれている新技術として、光ファイバーと超電導(リニアモーターカー)が紹介されてました。

読んでみて、画期的な技術なのは分かりましたが、実のところ画期的な技術というのはけっこうあるので、なぜ文科省(日本政府)がこれを推すのかがいまいち分かりませんでした。

それで光ファイバーも超電導も、それから20年くらいはまだ一般化されず、私たちの目には触れませんでした。

ここ10年くらいでどちらもようやく普及してきましたが、なぜずっと実用化されないのに、開発が続けられカネが投じ続けられるのかが不思議だったんですよね。

光ファイバーが、ロズウェルの宇宙船で見つかったものをベースにしており、それを目指して開発されたならば、『ゴールが見えているので(最終的に成功すると分かっているので)』、半世紀もかけて開発したのも納得できます。

(2022年10月24日に作成)


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