ロズウェル・テクノロジーを兵器開発に用いる⑥
テナシティ・ファイバー、防弾チョッキ、ステルス機

(『ペンタゴンの陰謀』フィリップ・J・コーソー著から抜粋)

1950年代からアメリカ陸軍は、防弾チョッキやパラシュートなどの軍用品の保護膜に使える繊維を探していた。

当時は、シルク(絹)が一番とされていた。

アメリカ陸軍が「テナシティ・ファイバー(頑丈で粘り強い繊維)」の研究に乗り出したのは、ロズウェル事件がきっかけだったと、私は睨んでいる。

ロズウェル事件でアメリカ軍が入手したものには、鈍い灰色をした、カミソリでも切れない繊維があった。

他の布ならば破れる力にも耐え、引っ張るのをやめると元の形に戻り、皺が1つも出来ない。

この素材が研究されて、天然のスーパー・テナシティ素材である「クモの糸」も研究された。

クモの糸は、腹部の腺で蛋白質(タンパク質)として形成され、細い管から吐き出すことで分子が同一方向に並び、1本の糸となる。

糸の分子は吐き出されると同時に圧縮され、「分子が同一方向になる」のと「圧縮」が相まって驚くほどの弾力性を持つ。

ロズウェルの繊維は、セラミックのような素材で、この素材で宇宙船と乗員の身体にぴったりの服が作られていた。

これがクモの糸に似ている事から、私は製造の鍵は蛋白質の合成と吐き出しにあると考えた。

そしてプラスチックとセラミックの製造業者と接触することにし、モンサント社とダウ・ケミカル社の研究具合を調べた。

調査の結果、モンサント社はクモの糸に似せた素材を、アメリカ陸軍と共同研究中だと分かった。

数年後(1964年頃)になると、ワイオミング大学とダウ・コーニング社(ダウ・ケミカル社とコーニング社の合弁会社)の研究者も、クモの糸の遺伝子を複製して布にする実験を始めた。

ずいぶん後に知ったが、クモの糸と同じ分子構造の研究を、リチャード・ファインマン博士も進めていた。

ファインマンは後にノーベル賞をとった人で、アメリカ物理学会の会合で、分子を圧縮した素材の研究発表をした。

これは元はと言えば、ロズウェル事件の直後に、アラモゴード基地やライドフィールド基地の研究者がロズウェルで回収したものから発見した事である。

ファインマンは、アラモゴードの科学者と接触して、ロズウェル事件の情報を得たとされている。
それが分子圧縮理論のヒントや、ノーベル賞をとった電子の量子力学的反応につながったのかもしれない。

アメリカ陸軍研究開発局・海外先端技術部において、ロズウェル事件でアメリカ軍が得たテクノロジーを兵器開発に用いる任務をしていた私は、ロズウェル宇宙船の繊維技術が軍の防護服にもってこいだと思った。

上司のアーサー・トルードー中将がデュポン社とモンサント社に接触してくれて、私はロズウェル事件の報告書やロズウェルで入手した繊維の実物を、(1962年に)同社の研究者に見せた。

その結果、デュポン社は合成繊維のケブラーを1965年に開発し、1973年にはケブラーを使った防弾チョッキが発表された。

この防弾チョッキは、今では警察でもおなじみの品となっている。

スーパー・テナシティ・ファイバーの研究では、レーダーをかわず素材の研究も進められて、ヘリコプターに用いられることになる合成素材を生み出した。

ロズウェル事件に陸軍将校として関わったジェシー・マーセルは、死の直前に「アメリカ軍の開発したステルス機は、ロズウェルの宇宙船を参考に開発された」と証言した。

ロズウェルの宇宙船は、一定状況下でレーダーから隠れることができ、分子を圧縮した合成繊維で覆われていた。

全く同じ繊維は、未だに再現できていないが、ステルス機にその技術を用いたのは事実である。

ステルス機の存在は、1976年の大統領選挙で初めて公けになったが、(1990~91年の)湾岸戦争で(アメリカ軍が)イラクに空爆を仕掛けるまで人々の目に触れることはなかった。

ステルス機はイラクのレーダーを完全に逃れたが、三日月の形の全翼機であり、ロズウェル事件で墜落した宇宙船を想起させる。

ステルス技術を砲弾に利用して、見えない砲弾を作ることが、アメリカ陸軍の長年の悲願である。

ロズウェルのステルス技術を使ったセラミックの開発をするため、(私の所属する)陸軍研究開発局は宇宙船の分析を重ねたが、(少なくとも私が陸軍人を退役するまでは)解明には至らなかった。

砲弾というと、実用化されたものに「劣化ウランでできた弾頭」がある。

これは原発や原子力潜水艦から出る、使用済み核燃料を活用するためのもので、濃密な重金属である劣化ウランを弾頭に使うことで、高い威力を発揮する。

これも湾岸戦争で使われた。

(2022年10月24~25日に作成)


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