ロズウェル事件 フィリップ・J・コーソーの証言

(『ペンタゴンの陰謀』フィリップ・J・コーソー著から抜粋)

私はフィリップ・J・コーソー。

中佐としてペンタゴンの陸軍研究開発局・海外先端技術部に2年間、籍を置いた。

その時期の上司は、アーサー・トルードー中将で、彼は陸軍開発局の局長で、様々なプロジェクトを指揮していた。

トルードーは、ここに配属される前は陸軍情報部を率いていた。

私も同じく、ここに配属される前は陸軍情報部員だった。

1947年7月に「ロズウェル事件」が起きると、アメリカ政府ではロスコー・ヒレンケッターCIA長官を長とする諮問委員会が結成されて、空飛ぶ円盤の調査に乗り出すと共に、公式には空飛ぶ円盤を強く否定した。

ロズウェル事件はあくまで事実であり、アメリカ軍は初めは墜落機がソ連の試作機ではないかと考えた。

というのは、ドイツが第二次大戦の末期に開発した、ホルテン全翼機と形が似ていたからだ。

ロズウェル事件(UFOの墜落事件)は、7月4日に起きたというのが有力だが、2日あるいは3日との説もある。

事件が起きると、アラモゴードやホワイトサンズなどのアメリカ軍の重要拠点が近くにあったことから、軍はただちに行動に出た。

(そして墜落した円盤と、その破片、乗組員の遺体を回収した)

1961年に私は、陸軍研究開発局・海外技術部に着任した。

着任と同時に、上司のトルードーからこう命じられた。

「ロズウェルで手に入れたテクノロジーを、進行中の兵器開発プロジェクトに浸透させよ」

レーザー、集積回路、光ファイバー、粒子ビーム、防弾チョッキのケブラー繊維は、ロズウェルで手に入れた墜落機のテクノロジーが活かされている。

アメリカ軍は、異星人のテクノロジーを軍需企業に渡して、兵器を開発させた。

これは1980年代の(レーガン政権の)戦略防衛構想、別名「スターウォーズ」として実を結び、敵国の人工衛星やミサイルを粉砕する兵器が開発された。

実は私は、陸軍研究開発局に配属されるずっと前、ロズウェル事件が起きたすぐ後に、その円盤に乗っていた異星人の遺体を目撃していた。

ロズウェル事件のあった1947年7月、私は少佐として、カンザス州のフォートライリー陸軍基地にある、陸軍情報学校で学んでいた。

その日の午後、積み荷をのせたトラック5台とトレーラーが2台、基地内に入ってきた。

テキサス州のフォートブリスにある第8陸軍航空司令部から、オハイオ州のライト航空基地へ行く途中だという。

積み荷の目録を見ると、B29やP51(※どちらも軍の飛行機である)の部品などだった。

日が暮れると、私はその夜は歩哨の指揮にあたった。

当番表を見ると、仲の良いビル・ブラウン曹長が獣医科棟で任務についていた。

それで私が行ってみると、ブラウンは歩哨として外に立っておらず、彼は建物の中から出てきた。

職務違反は明らかで、「気でも違ったか?」と私は悪態をついた。

ブラウンは、「ここに何があるか知ってますか?」と囁いた。
真っ青な顔をしていて、「信じられないものを見た」と言う。

「何の話をしている?」と、私は訊いた。

「トラックを運転してきた連中は、ニューメキシコ州の事故現場から荷物を運んできたと言っていました。

彼らは中身を見たんですよ、荷物を降ろす時に。
武装した憲兵や将校が見張りに立っていたのに。

そして彼らは中身を見て驚いた。

あなたは機密開示権があるから、入っても大丈夫です。」

事実、私には機密開示権があった。
だから、獣医科の建物に足を踏み入れた。

そこは、元は騎兵隊の馬を治療した所で、中に入るとそこには私とブラウンしか居なかった。

ブラウンが説明した。

「トラックの運転手の話では、(ロズウェルにある)509大隊基地の近くの砂漠に落ちた飛行機の残骸だそうです。

だけど中を覗いたら、この世のものと思えないものがあります。」

ブラウンは、「少佐のために外で見張りをしています」と言って、出ていった。

私は荷物を調べにかかったが、30あまりの木箱が積み上げてあった。

懐中電灯を頼りに、簡単に開きそうな箱を探した。
すると蓋の下にひびの入った細長い箱があり、一度開けた形跡があった。

蓋は緩んでおり、すぐに釘が外れたので、蓋を横にずらして中をのぞき込んだ。

遺体が厚いガラス容器に収められていて、ディーゼル油のようなドロドロした水色の液体に浸けてあった。

その遺体は、液体に浮いていた。

私は見て吐きそうになった。

最初は子供の遺体かと思ったが、そうではなかった。

それは120cmあまりで、手は4本指で親指がなく、足は細くて、頭は大きな電球型をしていた。

淡い灰色の肌だが、肌かは定かではなく、頭から爪先まで薄い衣類でおおわれている様にも見えた。

眼窩(がんか)は異様に大きなアーモンド型で、目尻が上がっていた。

鼻は突き出ておらず、ほとんど鼻孔(鼻の穴)しかなかった。

顔は額がほとんどを占めていて、顔の造作(目など)は下に寄っていた。

耳も眉もなかった、
口は小さな切れ込みにすぎず、しわか凹みの様だった。

その生物は身体に損傷が見られず、手足は原型をとどめ、裂傷ひとつ無かった。

その遺体の箱には、陸軍情報部の書類が添えられていた。

書類によると、今週はじめにニューメキシコ州のロズウェルに墜落した飛行機の乗員だという。

そしてライト航空基地を経て、ウォルターリード陸軍病院に移送されることになっており、同病院で解剖され保存されるという。

私は蓋を元に戻し、懐中電灯の尻で釘を緩く打ちつけた。

建物をあとにしつつ、「忘れろ、あれは見てはいけないものだった」と自分の胸につぶやいた。

歩哨に立っていたブラウンに、私は「君は何も見なかった。誰にも言うな」と言い、そのまま基地の総司令部に戻った。

自分の机に着く頃には、すべてが悪夢だったように思われた。

それから14年が経ち、前述のように私はペンタゴンの陸軍研究開発局・海外先端技術部に配属されたのだ。

その時の私は、ヨーロッパ各国での任務を終えて、ペンタゴンに戻ったばかりだった。

上司のアーサー・トルードー中将は、「君にやってもらいたい事がある。門外不出の軍事資料を、君が率いる海外先端技術部で引き取ってもらいたい」と言った。

私が新たに着任する「陸軍研究開発局・海外先端技術部」は、アメリカの同盟国の兵器を調べるのが任務で、諜報活動の1つだった。

私はその資料だと思ったのだが、トルードーは「これは他の資料とはわけが違う。君がホワイトハウスで働いていた時に見たかもしれん。とにかくロズウェル事件のファイルを調べてもらうことになる。」と言った。

私の仕事部屋に、その資料は届けられたが、すぐには開けずに少し考えてみた。

私がホワイトハウスで国家安全保障会議(NSC)のスタッフを務めていた時、ロズウェル事件の大量の書類が出回っていた。

まさかそれが私の身に降りかかってくるとは。

意を決して資料の入ったキャビネットを開けると、もつれたワイヤー、不可思議な布、サンバイザーのような被り物、灰色でリッツのクラッカーの様なウェハーなどが入っていた。

ロズウェル事件で回収されたものだった。

その時ドアの外で足音がして、トルードーが部屋に入ってきた。

トルードーが言った。
「なにしろ貴重なものだ。空軍は『自分のものだからよこせ』と言うし、海軍も欲しがっている。CIAに潜り込んでいるKGBのスパイも狙っている。」

「そんなものを、私にどうしろと?」

「これが何なのか、何に使えるのか、調べてほしい。

信頼のおける専門家を集めて、ウチ(アメリカ陸軍)の軍需会社に連絡を取れ。

こいつはほんの一部で、地下の倉庫にまだあるんだ。

ロズウェルからオハイオ州に行くはずが、ここに来た。
理由は訊くな。

残りも持ってくるから、分析してくれ。」

翌週になると、私は誰もいないのを見計らって、少しづつ調べ始めた。

ホワイトハウス時代に目にした覚書が、おぼろげながら思い出された。

まず目についたのは、ガラスのように透明で、弾力のあるワイヤーだった。

フィラメントは1本しか無くて、それはとても細く、ワイヤーは灰色のハーネス状のもので束ねられている。

机の電灯にかざすと、不気味な光を発した。

ロズウェルでこれを回収した兵士たちは、配線装置だと思ったようだ。

それから、クラッカーのような形をした、5cm(25セント硬貨)ほどの鈍い灰色のウェハー。

表面はワイヤーが道路地図のように走っていて、電気回路に見えた。

だが拡大鏡をあてると、ウェハーがウェハーの上に積み重なっている。
こんな回路構成は見たことがなかった。

次は、黒い楕円形の接眼レンズだ。

皮膚のように薄いが、ウォルターリード陸軍病院で解剖した医師によると、異星人の眼球に付着していた。

装着すると、真っ暗闇でも物体を映し出せるという。

解剖した医師が着用したところ、薄暗い廊下で人々が緑がかったオレンジ色に照らし出されたが、輪郭だけだった。

家具や壁も輪郭が見えるので、暗闇でも物の輪郭がつかめる。

さらに、鈍い銀色のホイルのような布切れがあった。

折っても曲げてもすぐに元に戻り、しわ1つ付かない。

これは後に「スーパー・テナシティ」と呼ばれる金属繊維で、布のしなやかさと金属の強さを兼ね備えていた。

他にも、装置の記述と略図があった。

懐中電灯のような形で、自給の動力源をもち、壁に向けると壁に小さな赤い光の輪ができた。

実験を重ねた結果、切断するための装置だと分かった。

後になって家畜の臓器切断事件が報告されると、異星人が外科手術に用いるメスのごとき道具だと思えた。

異星人が身に付けていたヘアバンドは、両側に電気信号の受信装置が付いていた。

だが報告書を見ると、どうやって電源を入れるかすら分からなかったようだ。

ウォルターリード陸軍病院やベセスダ病院の検視解剖の報告書は、アメリカ軍のどの部署も入手していたはずだ。

陸軍も海軍も空軍も、ロズウェルのテクノロジーを使った兵器開発を進めていた。

だが公式には、ロズウェル事件は無かったことになっている。

アメリカ政府はロズウェル事件を否定したが、噂はいくつもあった。

例えば私は、かなり早いうちから、「空軍がカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地にUFOを保管し、電磁波による推進システムを研究している」との話を耳にしていた。

さらに空軍は、「ロズウェルのテクノロジーを使って全翼爆撃機を設計した」との噂もあった。

ロズウェル事件から1年もしないうちに、ノースロップ社が全翼爆撃機「YB49」のテスト飛行を始めた。

YB49の4つの垂直尾翼は、ロズウェルに落ちた飛行物体と気味が悪いほど似ていた。

ペンタゴン(国防総省)では、ロズウェル事件については空軍が本命と考えられていて、宇宙船だけではなく「生きた宇宙人」まで抱え込んでいると見られていた。

空軍は、オハイオ州デイトンのライトフィールド基地にロズウェルの遺品を保管していた。
ロズウェルからフォートライリー陸軍基地を経由して、ライトフィールド基地に運ばれたのだ。

私がロズウェルの遺品を調べ始めると、CIAが目を付けて情報の取引を持ちかけてきた。

CIAも。、ロズウェルの遺品の情報を集めていた。

私の任務はロズウェルの遺品を調べることで、ロズウェル事件そのものや、コロナやサンアウスグティンで起きたとされるUFOの墜落事件を調べることではなかった。

(2022年10月13日に作成)


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