(『原発のウソ』小出裕章著から抜粋)
核燃料が溶け落ちて、圧力容器に溜まっている水と接触したら、水は急激に熱せられて沸騰し、『水蒸気爆発』を起こします。
水蒸気爆発が起これば、圧力容器やその外側の格納容器は吹き飛びます。
そして、大量の放射性物質が外に噴き出します。
原発は、「ウランの核分裂反応」で出るエネルギーを使います。
ウランは、「燃料ペレット」という小指の先くらいの小さな瀬戸物に焼き固められ、直径1cm長さ4mほどの細長いサヤの中に、400個ほどが収められます。
これが「燃料棒」と呼ばれるもので、それを数百本も束ねて、炉心に入れていきます。
非常事態になったら、炉心に「制御棒」を差し込んで、核分裂反応を止めます。
しかし、すぐには安全な状態になりません。
なぜなら、「崩壊熱」があるからです。
「崩壊熱」とは、核分裂によって生み出される放射性物質が出すエネルギーで、原発のエネルギーの7%を占めています。
崩壊熱は、放射性物質が存在するかぎり止められず、冷やし続けないと燃料は溶けていきます。
プルトニウムは、本来は燃料ペレットに溜まるのですが、ペレットが溶けてしまうと外に放出されます。
ペレットは2800度くらいにならないと溶けません。
プルトニウムの検出は、炉心が2800度以上になった事を意味します。
福島原発では、事故後にはずっと水を注入しているので、汚染水が敷地内や建屋のあちこちに溜まり、作業員を被曝させています。
汚染水の量はたまる一方です。
2011年5月14日には、1号機の建屋内で、毎時2000ミリシーベルトの放射線量が計測されました。
その場に4時間いたら、死亡する危険のある数値です。
事故の前までは、原発作業員の被曝限度量は「年間100ミリシーベルト」と定められていました。
ところが、事故後に250ミリシーベルトに引き上げられました。
限度量に達した作業員は、1年間は原発で働くことができなくなります。
汚染された土の除去では、「除去した土をどう処理するのか」という問題があります。
放射能で汚染されたゴミの問題は、深刻です。
それを解決する唯一の方法は、『放射能の墓地』を造ることしかありません。
どこに造るかと言えば、福島第一原発の周辺です。
周辺地域は、将来にわたって無人地帯にせざるとえない状況です。
住民の皆さんは元に戻れないし、すぐに戻れるような期待を抱かせる方が残酷です。
よく「汚染された農地は、再生可能なのでしょうか」との質問をいただきます。
私は、再生できないと思います。
セシウム137は、半減期するまでに30年かかります。
それに、農地では表土こそが豊かで必要不可欠なので、汚染された表土をはぎ取るのは致命的です。