(『原発のウソ』小出裕章著から抜粋)
東電が作成した原発敷地内の汚染地図は、作られてから1ヵ月以上も公表されませんでした。
『緊急時の放射能影響の予想ネットワークシステム(SPEEDI)』の予測も、公表されたのは5月でした。
今回の事故が「レベル7」に引き上げられたのは、事故から1ヵ月後の4月12日です。
多くの研究者は、事故の数日後には、レベル7に達したと分かっていました。
それなのに原子力安全・保安院は、レベル4の評価を変えませんでした。
日本政府が事故を小さく見せようとした結果、避難が必要な住民たちが「ただちに健康に影響はない」と放置されました。
本当に無責任だと思います。
政府や電力会社は、事故をできるだけ小さく見せようとします。
そのため、事故後になかなか情報を出しませんでした。
事故当時には、東電の勝俣恒久・会長は、マスコミOBを引き連れて中国旅行に出掛けていたそうです。
政府や電力会社と馴れ合っている大手マスコミは、追及が甘くなります。
雑誌やネットメディア、フリーの記者たちの情報の方が、信頼できます。
自力で情報を集めましょう。
何か危ない事態が起きたかどうかは、「電力会社の社員や原発職員(特に幹部)の家族」の動きを注視すると役に立つと思います。
これまで政府や電力会社は、「起こりうる原発事故について、安全審査で厳重に評価している」と宣伝してきました。
しかし彼らの想定では、「安全装置は必ず有効に働き、格納容器は決して壊れない」という仮定になっていたのです。
そういう前提だったので、事故後の環境汚染や住民の被曝は、考慮されていませんでした。
ですから、広域避難の計画もなく、すぐに避難させられないので「ただちに健康に影響はない」と言うしかなかったのです。
2011年4月下旬にマスコミの取材で、全国の原発に配備された非常用電源の容量は足りておらず、「いざという時には、ほとんどの原子炉は冷やせない」と判明しました。
各電力会社は、非常用電源を準備して「うちは大丈夫です」と言いましたが、それらは原発を止めないための嘘だったのです。