(『原発のウソ』小出裕章著から抜粋)
福島原発の事故後に、日本政府やマスコミは、
「ただちに健康に影響を及ぼす放射能の量ではない」
「ただちに避難する必要はない」 と繰り返しました。
この「ただちに」は、『急性障害は起きない』という意味です。
被曝量は多くなくても、後々に被害が出る事はあります。
その事実を、広島・長崎の被曝者たちが教えてくれました。
『被曝』とは、エネルギーの塊(放射線)が体内に飛び込んできて、遺伝子情報(DNA)を傷つけることです。
ちょっとDNAが傷ついた程度でも、その傷が細胞分裂で増やされていくのですから、「全く影響がない」なんて事はありません。
「人体に影響のない程度の被曝」というのは、完全な嘘です。
国際的な研究では、皆がこの事実を認めています。
アメリカ科学アカデミーのBEIRは、2005年7月に、こう報告しています。
『被曝のリスクは、低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない。
最低限の被曝であっても、人体への危険の可能性がある。』
「人体に影響のない程度の被曝」という考え方は、「しきい値が存在する」との前提で成り立っています。
しかし、そんなものは存在しません。
半世紀にわたる調査の結果、年間50ミリシーベルトの被曝量でも、がんや白血病になる確率が高くなる事が、統計で明らかになっています。
原発推進派は、「50ミリシーベルト以下の被曝は、何の問題もない」と主張してきました。
その証拠としては、
「生物には被曝で生じる傷を修復する機能がある(修復効果)」
「被曝すると免疫が活性化されるから、低線量の被曝はむしろ有益である(ホルミシス効果)」
を使ってきました。
しかし、保健物理学の父と呼ばれるK・Z・モーガンは、「人体の修復効果の理論は、誤りであった」と認めました。
さらに、「低線量の被曝では、高線量よりも1レム当たりのがん発生率が高くなる証拠すらある」と結論しています。
最近では、「低線量の被曝では、そもそも修復効果自体が働かない」とのデータが出始めています。