福島原発事故④
政府や電力会社は事故前から、原発の危険性を充分に知っていた
その証拠

(『原発のウソ』小出裕章著から抜粋)

原発は、単にお湯を沸かして、その蒸気でタービンを回して発電しているだけです。

火力発電と、発電原理は同じです。

原発と火力発電は、何が違うのでしょうか。

火力発電所は都心部にありますが、原発は過疎地にあります。

なぜ原発は、「過疎地に建てて、何百kmも離れた都会に電気を送る」という効率の悪いことをするのか。

(長距離の送電をすれば、電気は数%も失われます。
送電網を配備するにも、莫大なお金がかかります。)

それは、『原発が危険だから』です。

政府や電力会社は、原発事故が起これば大惨事になると、初めからよく知ってしました。

だから、人口の少ない田舎に押し付けたのです。

『原発の立地指針』の3条件は、

「一定の範囲内は非居住区域であること」

「その外側は低人口地帯であること」

「人口密集地帯から離れていること」 です。

もし本当に原発を安全だと思っているなら、こんな条件を掲げるはずがありません。

アメリカで初めて原発が建てられる際に、『アメリカ原子力委員会』は事故時のリスクを計算して、1957年3月に公表しました。

そこでは、「土地の汚染は、最大だと70億ドル(現在だと100兆円以上)の損害を生じる」と結論されました。

電力会社は、このような巨額の損害を補償できるわけがありません。

そこでアメリカ政府は、負担の軽減策として、「事故が起きても、電力会社が損害のすべてを賠償しなくてよい」という法律(プライス・アンダーソン法)を、57年9月に成立させました。

日本も、アメリカを真似て同じような法の整備に着手し、1961年に『原子力損害賠償法』を制定しました。

そうしてイギリスから原子炉を購入し、最初の原発である東海1号炉を稼動させました。

2009年の原子力損害賠償法の改定では、「事故の被害については、1200億円以上になったら、国が国会の議決を経て援助を行う」と定めました。

もし全ての被害を電力会社が賠償する制度だったら、どの会社も原発をやろうとはしなかったでしょう。

原発は、「電力会社は、事故の賠償は一部でよい」という、おかしなシステムの下に成立しているのです。

福島原発の事故後、東電の存続を前提にして、『原子力損害賠償のための支援機構』が作られ、他の電力会社の資金や公的資金の投入で、賠償を支援する事になりました。

つまり、国民に「電気料金の値上げ」と「税金」の形で、事故の責任を押し付けたのです。


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