(『原発のウソ』小出裕章著から抜粋)
地球温暖化が叫ばれるようになって以来、政府や電力会社は、「原発は二酸化炭素を出さず、環境に優しい」と宣伝してきました。
ところが最近は、様子が変わってきました。
「原発は、『発電時には』二酸化炭素を出さない」と、表現し始めたのです。
実は、原発は大量の二酸化炭素を出しています。
原発には、燃料としてウランが必要で、まずウラン鉱山から「採掘」します。
そのウランを精錬所に運び、「製錬」します。
次には、「濃縮」をします。
核分裂する「ウラン235」(これが原発には必要)は、ウラン全体の0.7%しかないので、濃縮作業が欠かせません。
さらに、濃縮したウランを、「加工」して燃料ペレットにし、それから燃料棒の形にしなくてはなりません。
それぞれの工程(採掘・製錬・濃縮・加工)では、莫大な資材やエネルギーが投入されます。
そのほとんどは化石燃料であり、大量の二酸化炭素を出しているのです。
原発を建造する時にも、大量の二酸化炭素が出ます。
原発は「コンクリートや鋼鉄のお化け」であり、コンクリートや鋼鉄を作ると二酸化炭素が出ます。
こうした事実があるから、国も電力会社も「発電時には出さない」と言って、ごまかすのです。
そもそも、原発は核廃棄物を出します。生命を脅かすものなのです。
原子力について、「クリーン」とか「エコ」とか言うのは、嘘です。
そればかりではありません。
原発は、もっと直接的なやり方で、環境を破壊しています。
東京大学の原子核研究所にいた水戸巌さんは、私にこう言いました。
「原発は、発電所ではなく、海温め装置だ」
実は、原発は『生み出す熱の3分の2』を、海に捨てているのです。
海水を原発の中に引き込んで、温めて海に戻すことで、原子炉の熱を捨てています。
1秒間に70トンの海水を引き込んで、その温度を7度も上げて、また海に戻しています。
3分の1だけを電気にして、3分の2は海を温めている。
『1秒あたりに70トンの海水を7度も上げる』というのは、ものすごい温暖化につながります。
日本では、1年間で6500億トンの雨が降り、そのうち4000億トンが川として流れます。
日本にある54基の原発から、1秒あたり70トンを流したら、合計で1000億トンを超えます。
(※計算したら、1基あたり年間に22億トンです)
そんな量の温水が流れたら、環境に影響しないはずがありません。