(『原発のウソ』小出裕章著から抜粋)
原発を推進したがる人の中には、「化石燃料はもうすぐ枯渇する。だから原発は必要だ。」と言う人がいます。
それでは、石油はいつ枯渇するのでしょうか。
1930年における「石油を供給できる推定年数」は、18年でした。
1940年には23年に延び、1960年には35年、1990年には45年にまで延びています。
地球の石炭を使い切るまでには、1000年かかります。
天然ガスも、新たな埋蔵地が次々と発見されています。
むしろ、原発の原料となるウランの方が、先に枯渇するのは明らかです。
再生可能エネルギーを推進しつつ、当面は上手に化石燃料を利用していくのが、現実的なのです。
ウランの枯渇を指摘すると、原発推進派は必ず「そのために核燃料サイクルがある」と主張します。
原発に使う「ウラン235」は、ウラン全体の0.7%です。
そこで、残りの99.3%の使えないウラン(ウラン238)を、プルトニウムに変えて利用するアイディアが浮上しました。
それが、高速増殖炉を中心とする、『核燃料サイクルの計画』です。
高速増殖炉は、「ウラン238」を「プルトニウム239」に変換して、使用済み核燃料も再活用しようとするものです。
しかし、一向に実現しません。
日本は1967年に、高速増殖炉の開発を計画しました。
最初は80年代前半に実用化するはずでしたが、上手くいかず、実用化の年度はどんどん先に逃げていきました。
1987年には、「実用化」から「技術の確立」に目標が変わり、2005年には「2050年には実用化したい」と変わりました。
福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」は、1994年に試験稼動が始まりましたが、95年には事故を起こします。
それから14年5ヶ月も止まったままで、2010年5月に再び動かされましたが、936回の警報が鳴り、32個の不具合が発見されました。
その後に事故を起こし、まだ事故は解決していません。
日本は高速増殖炉に使う前提で、使用済み核燃料の再処理をイギリスとフランスに委託し、45トンものプルトニウムをため込んでいます。
このプルトニウムで原爆を作れば、4000発もできてしまいます。
プルトニウムは核兵器に転用できるので、通常は持ってはいけません。
日本はプルトニウムをため込む事を合法化するために、『プルサーマル計画』を立てました。
『プルサーマル計画』とは、普通の原子炉つまり熱(サーマル)中性子炉で、プルトニウム(プル)を燃やそうとするものです。
プルサーマルは、原発の危険性を飛躍的に増大させます。
福島第1原発の3号機は、プルサーマル運転をしていたので、原発に詳しい人は事故後に固唾を飲んで見守ってきました。
普通の原発は、ウランで発電するために設計されています。
想定していないプルトニウムを燃やせば、安全性は低下します。
政府と電力会社は、『MOX燃料(ウランとプルトニウムを混合させたもの)』について、「3分の1までは入れても安全だ」と説明しています。
しかし、それは原子炉をさらに危険にする行為なのです。
危険性の高いプルサーマルをあえて強行するのは、プルトニウムを処分しなくてはならないからです。
本心では、誰もやりたがってはいないと思います。
青森県の六ヶ所村では、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出す「再処理工場」の計画が進められてきました。
取り出したプルトニウムを使うために計画されているのが、全炉心にMOX燃料を使う(MOXだけで発電をする)、「世界初のフルMOX原発」となる大間原発です。
愚かな行為を次々と行う悪循環に、日本の原子力産業は陥っているのです。