(毎日新聞2013年3月4日から抜粋)
福島第1原発には、1~3号機の原子炉内に合計1496体、1~4号機のプール内には合計3106体、の燃料棒があった。
プールでの内訳は、1号機プールに392体、2号機に615体、3号機に566体、4号機に1533体だ。
燃料棒の1体の重さは、250kgである。
燃料棒の取り出し(回収)で先行しているのは、4号機プールだ。
2012年夏に2体を試験回収し、13年11月にも本格的な回収を始める。
原子炉内にあり溶けてしまった核燃料は、回収が難しい。
容器内の放射線量は、1号機では最大で毎時11シーベルト(1.1万ミリシーベルト)で、人間は近づけない。
ロボットによる除染をしない限り、作業員は近づけない。
東電は、格納容器の上部に遠隔操作のクレーンを設置して、それで核燃料を回収する方針だ。
東電の高橋毅(福島第1原発の所長)の話
「3号機周辺の線量は高く、作業が遅れている。
今後は、『汚染水を処理しながら、格納容器の損傷部を見つけて修復をし、溶けた核燃料を取り出す作業』が待ち受けている。」
(しんぶん赤旗日曜版2017年3月12日号から抜粋)
福島第1原発の事故では、1~3号機で核燃料が溶けた。
廃炉するためには、溶融した核燃料のかたまりを取り出さなければならない。
今回、初めて格納容器内と台座の調査が行われた。
2号機において、パイプに付けたカメラで撮影したのである。
格納容器内は、放射線量が高いため、これまではカメラやロボットを投入しても故障していた。
そこで機械を改良して、高レベルの放射線に耐えられるようにした。
2号機の格納容器内に、掃除ロボットを投入したが、このロボットのカメラ画像の解析から、放射線量は最大で毎時650シーベルトと推定された。
人間が死に至る6~7シーベルトの、約100倍である。
2号機よりも、1号機と3号機はさらに放射線量が高くて、さらに汚染水も大量に溜まっている。
舘野淳(中央大学の元教授で核燃料の専門家)
「撮影された画像を見ると、溶けた核燃料は格納容器のコンクリート床まで落下していると思われる。
今の技術では、溶け落ちた核燃料を取り出す方途があると思えない。
日本政府と東電の廃炉計画は、あまりに楽観的かつ願望的すぎる。」
中西正之(燃焼炉の設計技術者だった人)
「今回の撮影で見つかった、2号機の原子炉真下の作業用の床に開いた穴は、かなりの量の核燃料が流れ出ないとできない。
流れた核燃料は、作業用床の下にある、コンクリート床に達しているでしょう。
溶けた核燃料とコンクリート床が化学反応すると、水素や一酸化炭素が大量に発生し、水素爆発する恐れが生じる。
IAEAなどはこの現象を注意喚起しているし、国会の事故調査委員会は『この化学反応が3号機で起きた水素爆発の一因』と指摘している。
水素爆発を防ぐため、海外の原発の格納容器の床には、コア・キャッチャー(溶けた核燃料の受け皿)の設置が推奨されている。
ところが日本政府は、コア・キャッチャーの必要性を認めていない。
再稼働した川内原発や伊方原発では、格納容器内に水を溜めて冷却し、それで化学反応を防ぐとしている。
しかしこの対策では、水蒸気爆発の危険を高める。」
原発産業は、2006年ごろがピークだった。
世界の総発電量に占める原発の比率は、1996年が頂点だった。
福島原発事故が起きてからは、原発は採算がとれない事業になってきて、ドイツのジーメンスは撤退を決めた。
日本の原発メーカーである東芝は、原発事業で7125億円の損失をだし、存続が危ぶまれる状況である。
安倍・自公政権が進める、原発の再稼働や原発の輸出は、世界の流れに逆行している。