(サンデー毎日2014年8月3日号から抜粋)
ここで取り上げるのは、青木理さんの記事です。
とても共感したので、抜粋して紹介します。
○ 青木理の記事
今、福島原発から数キロの場所にいる。
眼の前には黄色の看板が立ち、こう大書されている。
『この先 帰還困難区域につき 通行止め』
巨大な蛇腹の鉄格子で封鎖された道。
この先で奮闘する人々の事を思う。
汚染地で、いつ果てるとも知れぬ作業に駆り出されている人々。
猛暑の中で分厚い防護服を身にまとい、汗まみれの苦行を強いられている。
車から周囲を見渡すと、かつて田畑だった広大な平野が放置され、雑草に覆い尽くされている。
見渡す限りの雑草の合間に、黒色の異物が山積みにされている。
除染で削り取られた土砂やゴミを詰めた、巨大な袋だ。
故郷と住処を奪われて、避難生活を続ける人は、いまも13万人いる。
まだ何も終わっていない。
カーラジオから、嫌な音が流れてきた。
国会での集団的自衛権の行使をめぐる審議のニュースだ。
安倍首相が、舌ったらずな声で言う。
「切れ目のない防衛態勢をつくる事によって抑止力を高め、国民の生命と財産を守っていく……」
違うだろ、あんた。
最悪の惨禍を引き起こしたのに(原発を推進したのは自民党である)、収拾のめどのつかぬままに原発の再稼働と海外輸出を目指している。
その一方で、ありえない事例を持ち出して、「国民の生命と財産を守る」と吠える。
福島原発事故の結果、財産を奪われて生命を危機にさらしている人々が、万単位でいる。
それを守り救い、同じ惨禍を二度と起こさぬための政策こそが、為政者の成すべき事だ。