以下は2009年3~6月に読んだ本の感想。
図書館のリユースでもらってきた本たちである。
この時期、少しの間だけ読書感想ノートを作っており、それをここに転載する。
🔵江戸の顔役 山手樹一郎 第58巻
3月上旬に読む。
山手氏の全集の1冊。
山手氏の本を初めて読むが、男と女の恋愛感情を描くのが上手くなかなかおもしろい。
だがストーリー展開にひねりや深みがなく、いきあたりばったりの印象。
殺陣の描写はまあまあだ。
面白いのだが、読み終えた後に残るものがない。典型的な娯楽作品だ。
🔵歷史読本 2006年6月号 書き換えられた戦国時代の謎
3月上旬に読む。
最新の研究を紹介しており、新たな情報を書いたものだが、しっかりとした研究ではなく内容のない掲載が半数以上だった。
リユースへ出した。
🔵歷史読本 2001年5月号 秘宝・名宝、05年9月号 永倉新八
この2冊はけっこうおもしろかった。
永倉は、新選組の本を読んで知っていたが、彼を特集する本は初めて読んだ。
私の田舎である小樽が絡んでくるのに、親近感をおぼえる。
🔵諸君! 2004年12月号
同じく3月上旬に読む。
朝まで生テレビによく出演する村田晃嗣(ゲイみたいな人)が、単なる保守ではなく日本の未来についてしっかり考えていると分かった。
また楽天のトップの三木谷が、エリート的な気質で人材を集めて高等教育を施していると知る。
リユースへ出す事にした。
🔵歷史読本 2007年3月号 徳川四天王
3月19日に読む。
知っている内容ばかりだった。リユースへ。
🔵笹沢左保 孤独な彼らの恐しさ
3月27日に読む。
殺人ミステリーだが内容がない。
恋愛(男と女の心理)には多少ひきつけられるものがあったが、最後に孤独な彼らが不感性の男女のこととわかり、がっくりきた。
9月14日が犯行の日で、これは私の誕生日である。
最近色々な所で9月14日を見かける。25歳になる位までは全く目にしなくて淋しかったのだが、最近色々な所で9月14日が出てきて、あまり嬉しくなくなる位だ。
🔵開高健 オールウェイズ 上巻
3月27~28日に読む。
開高氏の文は奔放で、面白いのとつまらないものの落差がはげしい。
理性で書くよりも感情で書いている風だからだろう。
ベトナム戦争を見に行き、米兵が最前線で戦っていてフランスパン(フランス)を罵っていると語っているのは面白かった。
米国は頭を使ってベトナム人同士を戦わせて儲けることもできる立場だが、そうしない真面目さがあり、それがアメリカをチャンピオンにしているのだろう。
インタビュー記事もおもしろかった。
岩清水について、季節で味が違い、春が美味いと書いてあるが、たしかによく考えるとそれが自然だ。
春は雪どけ水なのでピュアなのだろう。
釣りに関する記事と文学に関する記事が多かったが、あまり面白くない。
武田泰淳が「ネタがなくて困っていたらルポ(ノンフィクション) を書け、職業の違う人と会えるしメモをしてそれを書けばいいから」と言ったとあるが、説得力を感じた。
アフリカの取材では、「死人は腸が尻の穴から出てくるので見分けており、昔の日本と同じだ。
子供が死ぬと、手足を折ると痩せているので片手に乗る位の小包になる、それを持っていって土に埋める」というのが出てくるが、すごい話だ。
実際に見たら人生感がどうなってしまうか想像もつかない。
男は遊ばないとだめだと、開高氏はしょっちゅう言うが、これはいわゆる遊びと違って、広く世界(世間)に目を向けて接しろと言う意味だと分かった。
これをパッと読んで単なる遊びに走る人が多いと思うし、そういう誤解を受ける発言はしない方がいいと思う。
開高氏のいう遊びなら、確かに男は成長できる。
もっというと、もはや遊びというより修行と言えるレベルであり、それをちゃんと説明すべきだ。
開高氏は、同じ作家の井伏氏を高く評価している。
宝石について、「天然石は押し付けがましさがない。文学や音楽でも名品は押し付けがましさがない」と言うが、全くその通りと思う。
芸術の名品は、主張がないわけではなく、表現にてらいや雑念がないため、受け手が押し付けがましく感じないのだと思う。
🔵神坂次郎 おかしな大名 (4月1日に読む)
少し読むが、先に読んだ祖母の言う通りつまらないので、リユースに出すことにした。
🔵逃げるアヒル ポーラ・ゴズリング (4月1日に読む)
祖父が持っていた本で、20才頃にも読んだことのある本。
ストーリーは、30歳の女(クレア)が腕を撃たれ、それが秘密を知ってしまったからと分かり、ボディーガードとなったデカと共に暗殺者と戦うというもの。
暗殺者は雇われて殺しをしてきた男で、表の顔はクレアの部下で、いつかクレアを見返したいと思ってきたから彼女を襲ったという。
男が女に銃の打ち方を教えるとか、恋愛で女から男にアプローチするとか、典型的アメリカ小説のストーリーだ。
はっきり言って現実ばなれの偽善的ストーリーにしか見えない。日本人だからかもしれないが。
🔵夢の蛇 ヴォンダ・N・マッキンタイア (4月1日に読む)
主人公は蛇を使う治療師。読んでいて何も感じない…。
以前に20ページほど読んだ時も、つまらないからやめてしまった。
この小説は1979年にヒューゴー賞、87年にネビュラ賞をとったらしいが、日本人とセンスが違うのではと思う。
良さがわからない。
もっとも飛ばし読みをして5分で読んだのもあるとは思うが。
🔵永遠の1/2 佐藤正午 (昭59年1月の作品) (4月2日に読む)
読んでいて、タイトルの意味は100日間恋人を続けると、永遠の1/2ほども長く感じられるという意味と判明。
文体は個性があり、テンポもよく、好感が持てる。
ただ軽さが常につきまとい、無駄な描写も多い。
主人公に恋人・良子が出来て付き合うが、色々あっても最後まで進展はなく、主人公も内面が変わらない。
主人公とそっくりの男が現われるというミステリーもあるが、大した内容ではなかった。
基本的に内容がない。
すばる文学賞をとったというが、大体の新しさと押し付けがましさのなさゆえで、特に内容の評価ではないらしい。
リユースに出すことに。
🔵カーロンの蜘蛛 栗本薫 (4月2日に読む)
トワイライトサーガ①となっているが、舞台はグインサーガの中原らしい。
グインサーガに似ているが内容に脈絡がなく、プロットがしっかりしていない。
グインサーかをだらしなくしたみたいな内容。
あとがきを見ると1986年5月19日となっているが、構想自体は20才の頃のものとあり、完成度の低いのもなるほどと納得した。
若い頃のアイディアを、練らずにそのまま出してしまったらしい。
主人公とそっくりの男が現われるというミステリーもあるが、大した内容ではなかった。
20才の頃は大学生で麻雀とバンドの酒とバラの日々だったと、著者は述べているが、女性でそれは珍しい。
リユースに出すことに。
🔵諸君! 平成16年9月号 (4月2日に読む)
半藤氏と阿川氏の対談のみ、読む気にさせた。
昭和14年頃まで(太平洋戦争が始まる前まで)は物資がけっこうあり、生活にまだ余裕があったとの事。
昭和ヒトケタの頃は軍人を批判する自由もあった事が分かった。
半藤
「2.26事件で天皇の側近をほぼ殺したり潰してしまった事が、その後の日本を歪めてしまった。
アメリカと図上演習で戦うと、いつも負けるから、途中で打ち切りになっていた。」
阿川
「支那事変が片付かなくて憂鬱だったのが、太平洋戦争が始まったため、直後はスカッと気分が晴れた人が多かった」
この対談は、是非については何も言及がなく、単なる感想を2人が述べたものだった。
🔵臨死体験 立花隆 (4月2~3日に読む)
臨死体験を研究した本。
気がつくとベットの上から自分を見ていて、気がつくとお花畑にいるという。
自分の本体と魂?は糸でつながっていて、それが切れると死ぬと皆が感じる。
死にそうになると光に包まれ虹が見えるらしい。
川があり、それを渡ると知ぬパターンが多い。
おじいちゃんやおばあちゃん(皆が白髪)が出てきて忠告をするパターンも多い。
穴に落ちたり火に焼かれる人も稀にいるらしい。
すでに亡くなっている親や友人を見る、あるいは神を見る、というパターンも多い。
日本やヨーロッパの古典には臨死体験談が多い。
ユングは宇宙にゆく臨死体験をした。このパターンもある。
ユングは、死ぬ時に残るものは個人の感情や記憶ではなく、自分が成した行為、そして自分が影響した(関わった)出来事だと確信した、と言う。
確かにそういうものかもと思った。
身体から自分が出た時、意識のみのパターンと魂にも体格があるパターンがある。
臨死はほとんどが安らぎや幸福を感じるが、なかには苦痛や無念を感じるものもある。しかし不思議に死が怖くなくなるという。
臨死の時、大抵は静かだが、うるさい音がしているというパターンもある。
誰かから声をかけられる場合、テレパシーのように頭の中に聞こえるパターンが多いという。
自ら臨死状態に断食と呼吸を止めることで行ける人がいて、その人によると心臓が止まると全てが澄みきり、「大悟を得た」という心境になるという。
昔の修行僧が断食して悟るのも同じ方向性のものという。肉体を極限に持ってゆく。
心臓が止まっても血流が確保(心臓細動によって)できれば、30分位は生きていられる、生き返る人はこれだとの事。
臨死の恍惚感は脳内物質エンドルフィンが出るため、らしい。
臨死の恍惚感はドストエフスキー、夏目瀬石も経験し、書いている。
🔵大盗禅師 司馬遼太郎 (4月4日に読む)
司馬作品はほぼ読んでいるが、これは全集未収録の中編もので、まだ読んでなかった。
大盗禅師という天下を盗もうという妖僧や、その配下でありながら独自の動きをする由比正雪、浪人剣客の仙八らが主役のフィクション時代小説。
由比正雪は、弁説のみで世を渡る稀代の詐欺師として描かれている。
大盗と正雪は幕府転覆を目指している。
一方、仙人はとある縁で鄭成功の味方になることに。
仙八の父は兵法家で、考える事を忘れて体に覚えさせ自然に動けるようになれ、さらに忘れるのを追求すれば感動したことを、同じ感動を再びそれに接した時(この本では花を見た時)に得られる、と言う。
なるほどと思った。だが考えない努力には限界があり、ある一定以上には行けないと思う。
正雪は、仕える者がかしこまることで武士は偉く見えているだけだ、貴人は常人と変わらないが権威で偉く見えるのだ、と言う。
その通りだと共感した。
鄭芝竜は中国人の海賊で、日本の倭寇が徳川期になって居なくなったため独り舞台になり巨大化した。
その息子が鄭成功で、成功の母は日本人の田川氏。
芝竜は若い頃に日本の平戸や五島にいて、平戸一官とか五島一官と呼ばれていた。日本の刀法を学んでいたという。
芝竜は明の皇室の血をひく隆武帝という者を抱えていた。
しかし清朝に密通し隆武帝は捕まる。そして田川氏は自害。
芝竜は、成功にも降伏しろと言うが、成功は断わり、殺父報国を旗印に戦い続ける。
仙八は、鄭成功の命令で日本の浪人を集めることに。
酒匂川(私の地元が出てきた!)にて大盗禅師と再会。
大盗は浪人を派遣するのを了承する。
一方、正雪は独自に浪人を集め、幕府を転覆しようと動いている。
正雪は大盗を頭の古い男と決めつけ殺そうとする。
大盗は逆に正雪を殺そうとするが、仙八が取りなし、かくまう。
正雪に対する批評で次のものがあった。
「利発者には患者でも見える物がどうにも見えぬ者がいる。謀反人になるのは大抵その種の世間知らずだ。
だから偉いのよ。大仕事をする男はえてして世間知らずだ。世の中に怖いものがない。」
自分の事を言われている気がした…。
大盗は天皇の隠し子だと判明。
正雪は謀反し、失敗。
仙八と大盗は鄭成功の許へ亡命する。
しかし途中で日本に戻ろうとし、船を乗っ取ることに。
ここでこの小説は終わり。
読後の感想。
テーマは謀反だと思う。
時期を得ていない謀反の虚しさ、妖しさ、冷静に分析した時の可笑しさを描いている。
正雪や大盗は時を得ていれば竜馬や西郷になったのかもしれない。
謀反をしようとする人物は、どうしても自分を大きく見せないといけない。
謀反が成功すればそれが実像になるが、失敗したら化けの皮がはがれたように皆が失望する。
この本は後者なので、話が尻すぼみになってしまう。
🔵荒俣宏 日本仰天起源 (4月11日に読む)
荒俣氏の雑学が披露されているが、どれも考証が曖昧で、説得力に乏しい。
面白そうな話を集めただけと思えてしまう。
『帝都物語』を書くにあたって参考にした書が列記されていて、荒俣氏の愛読書だという。それを以下に記す。
夢野久作の『ドグラ・マグラ』
近代日本の幻想怪奇ロマン小説のトップだと評している。
曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』
久生十蘭の『魔都』
ウージェーヌ・シューの『パリの秘密』
〇陰陽系の本
『日本陰陽道史総説』
『憑霊信仰論 妖怪研究への試み』
『鬼伝説の研究 金工史の視点から』
〇占い系の本
『五行大義』 中村璋八の訳
『緯書』
〇魔術系の本
『魔の系譜』 谷川健一
『白鳥伝説』 谷川健一
『異形の主権』 網野善彦
🔵城山三郎 総会屋錦城 (4月12日に読む)
表題作は直木賞受賞との事で、それを読む。
どうもかなり以前に読んだ事があるらしく、何となく憶えている。
総会屋は、手配を会場に配置し、株主総会を「異議なし」と「議事進行」の連呼によって10分以内に終わらせてしまう(※つまり一般株主に発言させない)のを仕事にしている。
なお、上の連呼は、呼吸があり、気合がいるらしい。
総会屋は会社の重役室やホテルのロビーをたまり場にしている。
総会屋は会社にたかっているが、顧問弁護士や公認会計士はもっと合法かつ悪質にたかっているという。
〇読んだ感想
昭33年10月に刊行の作品で、今の時代とは違うなと思う。
最近は総会屋の話も聞かない。
城山氏はかなり若い頃から作家をしていたのだと知った。
城山氏の作品はちゃんと人間の心を描いているが、どうも司馬遼太郎氏の作品ほど夢中になれない。
🔵高橋鑯 性的人間の分析 (4月15日に読む)
分析が浅く、偏見が多いと感じられ、面白くない。
捨てることにした。
🔵林房雄 青年・下巻 (5月上旬に読む)
伊藤博文と井上馨が主役で、混乱した長州で必死に洋化を進めようとする話。
司馬遼太郎の作品だと、高杉晋作が一時引退したのは自分で決めて行ったという解釈だったが、この本では無理に引退させられたという解釈。
こっちの方が説得力がある。
長州でも佐幕派が多く、禁門の変の後はすごい迫害を伊藤たちが受けたのを知った。
林氏は文章も整っていて、なかなか内容がある。
他のも読みたくなった。
リユースに出すことにした。
🔵世界の伝記9 嘉納治五郎 (5月上旬に読む)
治五郎が病弱だったこと、柔術を始めたのが遅かったこと、研究熱心でいくつかの流派を学びそれをまとめたこと、当時は柔道が柔術を負かし最強だったこと、学校の校長としても優秀だったこと、海外にもよく行っていたこと、などを知る。
治五郎についてはほぼ何も知らなかったので勉強になった。
剣道と同じく柔道も明治後に守ろうとしなければなくなっていたと思う。その意味で偉大な人だ。
人々が見向きもしない時にそれに努力したのだから偉い。
🔵世界の伝記37 平賀源内 (5月中旬に読む)
源内についても、エレキテルの装置と東洋のダビンチと呼ばれる事しか知らず、なぜダビンチなのかも知らなかった。
本草学をメインにしていたと知る。
それ以外に、西洋の知識、浄瑠璃作家としても成功していたようだ。
絵も得意だったという。
色々な分野に興味を持ち、それぞれで一流 (当時の一流)レベルになっていたと知る。
源内が有能だったというより、当時リスキーだったりタブーだった事柄に興味を持ち、勉強したという事だろう。チャレンジ精神がある。
田沼意次に重用されていたというのは面白い。田沼は悪名を残しているが、ただ者ではなかったようだ。
源内が、最後に人を殺して牢で死ぬというのもすごいと思った。
何となく掴みづらい人柄。人の評価を気にせず我が道を行く人という印象。
🔵レアル・マドリー フィル・ボール (5月31日に読む)
内容にとりとめがなく、レアル・マドリーの歴史をだらだら書き連ねているのみ。
それでもレアルの歴史に内容があるので、多少は面白かった。
🔵淀川長治と横尾忠則の対談 二人でヨの字 (6月24日に読む)
とてもつまらない。
淀川氏は言う事がコロコロ変わり、節操がない。さらにゲイの特殊な価値観を前面に出してくるので引いてしまう。
横尾氏は、「昔の絵描きさんはスランプになると春画を書き、スランプを乗りこえたらしい」と言うが、何となくありそうな事の気がした。
淀川氏は、「過保護で育つと自分を偉いと思いこみ、内でいばって逆に生意気にならないのよ。外では知らぬ間に気が小さくなり怖がりになる。」と言うが、当たっていると思った。
(2025年6月20~21、27日に作成)