肥料について①
種類や分類

(『今さら聞けない肥料の話』農文協編から抜粋)

ほとんどの肥料袋には、チッソ、リン酸、カリ(カリウム)の含有率が書いてある。
「14-14-14」などと書いてある。

チッソ、リン酸、カリの3つは、肥料において大事な成分なので、「主成分」と言う。

「生産業者保証票」(これは袋に書いてある)には、成分表など大事な情報が載っている。

なお肥料には、有効期限や消費期限はない。

肥料袋に「8-8-8」とあった場合、「ハチハチハチ」とか「オールハチ」と読む。

これは、チッソ、リン酸、カリが8%ずつ入っている、という意味である。

袋に数字があっても、「5550」など単なる商品名で成分と関係ないものもある。

「14-14-14」(オール14)は、メーカーが競って製造するバーゲン品である。(※これは14%ずつ入っている)

他には、オール10やオール8も流通量が多い。

こうした肥料は、三要素をまんべんなく含むので、「水平型」と呼ばれる。

ちなみに「高度化成」肥料とは、三要素が合計で30%以上の肥料を言う。

それ以下は「普通化成」または「低度化成」と呼ぶ。

いま農協が力を入れているのは、「14-10-10」や「14-8-8」といったもので、「L型肥料」と呼ばれるものだ。

日本はリン酸やカリの過剰な田畑が多いので、それを抑えた肥料を売り出している。

リン酸が最も高価で、チッソは一番安いので、L型だと安価にできる。

リン酸が効くと、根の伸びが良くなり、葉にツヤが出て硬くなる。

またリン酸は、黒ボク土(日本はこれが多い)だとアルミニウムや鉄やカルシウムとくっついて作物に吸われにくくなる。

だから「施肥量を減らせない」と言う農家もいる。

肥料の区分には法律の定義があり、大きくは「普通肥料」と「特殊肥料」に分かれる。

「特殊肥料」は、魚粕や米ヌカのような単純な肥料のことで、羊毛クズやカニやエビの殻など現在46種が指定されている。
これらはいずれも、昔から農家が使ってきたものだ。

特殊肥料は、普通肥料と違って登録義務がなく、肥料袋に保証票もない。
成分の表示もない。

とはいえ、堆肥と家畜糞尿については、2000年から成分含有量の表示が義務づけられた。

特殊肥料のラインナップは、普通肥料の「有機質肥料」と似ている。

魚粕や肉粕は、そのままだと特殊肥料だが、粉状にすると普通肥料になる。

米ヌカもそのままなら特殊肥料だが、米ヌカ油粕(脱脂ヌカ)は普通肥料になる。

農水省の担当者によると、分類のポイントは「農家が見た目で判断できるか」だという。

粉末になると魚とか肉と分からなくなるので、審査を受けて保証票で証明して下さい、というわけだ。

「普通肥料」は、「単肥」と「複合肥料」に分かれる。

普通肥料は、登録と届け出なしには生産・輸入・販売ができない。
そして肥料袋には必ず保証票がある。

「単肥」は、主成分(チッソ、リン酸、カリの3つ)のうち、1つだけを含むものをいう。

「複合肥料」は、主成分のうち2つ以上を含むものを言い、「化成肥料」、「有機化成」、「配合肥料」に分かれる。

「化成肥料」は、複数の原料を化学反応、または混合している。

チッソ、リン酸、カリの含有量の合計が30%以上なら「高度化成」で、それ以下なら「普通化成」と呼ばれる。

「有機化成」は、無機肥料に有機質肥料を加えたものである。

有機質由来のチッソを0.2%以上含めば、「有機入り」「有機化成」と表示できる。

だから有機にこだわるならば、「有機100%」を選ぶのが良い。

「配合肥料」は、固形の原料を複数混ぜた肥料である。

チッソ、リン酸、カリの合計含有量は10%以上を保証する。

有機質の原料を混ぜたものもある。

「BB肥料」は、配合肥料の1種で、バルク・ブレイディング肥料のことである。

粒状の肥料を2種以上混ぜたもので、粒状配合肥料とも言う。

化成肥料と違って化学反応させないので、簡単に作れる。オーダーメイドに向く。

なお、普通肥料は粒状が多いが、粉状や液状やペースト状もある。

粉状は、粒状よりも早く効くが、散布時に風で飛びやすい。吸湿して固まることもある。

液状は、速効性があり、農薬と混ぜることもできる。

液状から粘性を高めたペースト状は、速効性を保ちながら、施肥位置から移動しにくい特徴がある。

(2022年10月28&31日に作成)


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