稲作肥料の脱プラスチックの取り組み

(『東京新聞2023年3月20日』から抜粋)

プラスチックで覆われた粒状の「被覆肥料」が、主に稲作で1970年代から使われてきた。

このプラスチックの殻が、川や海に流出しており、環境汚染が心配されている。

そこで脱プラスチックの代替素材の開発が進められている。

プラスチックを使った被覆肥料は、直径が2~4ミリで、水分が浸透するとプラスチックの殻が破れて、徐々に肥料成分が溶け出す。

一度まくだけで肥料を追加する手間がないから、主に稲作で使われてきた。

このプラスチック殻が、分解されないまま水田から流れ出ている事が、ようやく問題視されるようになった。

そこでJA全農などは、2030年までにプラスチックを使った被覆肥料の使用ゼロを目指すことを打ち出した。

JA愛知・経済連は、プラスチック量が2割少ない被覆肥料を、試験的に使ってみたが、コメの品質も収量も変わらなかった。

三洋化成工業は、水と二酸化炭素に分解される被覆材を開発した。

コメを原料にした樹脂を使い、主に植物由来の成分で構成した被覆材だ。

研究を続けて、2027年に実用化する予定である。

宮城県農業高校は、殻を残さない野菜用の肥料「ウレアホルム」を稲作に使ってみたが、収量は変わらず、味では上回ったという。

協力した肥料メーカーの多木化学は、ウレアホルムを使った新商品を、2022年3月から販売している。

(インターネットで調べたところ、ウレアホルムとは尿素とホルムアルデヒドの化合物である。

尿素はよく肥料に使われるものだが、人体への有毒性が広く知られるホルムアルデヒドを肥料に使うというのは、聞いた事がなかった。

正直なところ、ホルムアルデヒドを農業に用いる事に、私は懐疑的である。)

マイクロ・プラスチックは、カツオやイワシなど多くの海洋生物の体内から見つかっている。

環境調査を行う「ピリカ」によると、2020年に16都道府県の120地点(川、港湾、湖)で調査したところ、112地点でマイクロ・プラスチックが見つかった。

人工芝や肥料の殻といった、プラゴミが原因である。

(※この記事では、三重県四日市市の吉崎海岸でとれた、数百ほどの被覆肥料のプラスチック殻が、写真で載っている)

四日市大学の千葉賢・教授。

「マイクロ・プラスチックが動物の体内に残ると、食物の消化・吸収を妨げるという研究もある。

コシヒカリなどのわせ品種は、プラスチックを使わない肥料でも収量が変わらない、という実験結果がある。

早期に別の肥料に切り替えていくことが大切だ。」

(2023年4月21日に作成)


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