私は2012年11月8日に、「エリザベート・ガラ・コンサート」を観ました。
その感想は、すでに別ページにアップしています。
縁があって11月16日のチケットが取れたので、同コンサートをもう一度観劇してきました。
この公演は日によって出演者が異なるので、前回の8日とは大幅に違う出演者となっていました。
それだけでも再び観劇をする意味があったのですが、8日に観た時よりも明らかに良い内容になっていました。
そこで、どのあたりが良くなっていたかを書き、その後に各役者の演技について、感じた事を書きます。
他のページを見れば分かると思うのですが、私は「花總まりさん」の大ファンで、基本的には今回もまりさんが出演するので観に行きました。
ですので、最初にまりさんの演技について書きます。
まりさんの演技では、前回観に行った時に感じた事がいくつもあり、それは別ページに書きました。
今回は、演技解釈が大きく向上しており、実に素晴らしいことに、前回に感じた問題点がすべて解決されていました。
具体的に書くと、エリザベートが年齢を重ねていく中で取っていく様々な行動が、すべて一つに繋がっていました。
このため、エリザベートの心境がよく伝わってきました。
彼女の一生が、「自由を求め続けた、真摯なものだった」という事が、しっかりと表現されていました。
もう一つは、年齢を重ねても変に声を老けさせずに歌ったため、無理のない自然な発声となり、歌詞と表現している事がはっきりと観客に分かりました。
これによって、エリザベートを理解し易く感じました。
私が記事で指摘した改善点がばっちり修正されて、結果もすばらしいものになっていたので、心底から嬉しかったです。
最初から最後まで、観ていて全く違和感を感じないので、気持ち良く観劇が出来ました。
ありがとう、まりさん。愛しています。
ここからは、他の出演者の方の演技について、書いていきます。
まず、トート役の紫苑ゆうさんから。
この方は、宝塚を退団後は役者活動をしてこなかったので、どのくらいの出来になるのか結構不安がありました。
でも、すばらしい演技でした。
なにより良かったのは、演技に情熱と温かさがあった事です。
私は、8日に観た一路さんの「クールでどこか怖いトート」よりも、紫苑さんの「情熱的でどこかおっちょこちょいな所のあるトート」の方が、トートらしいと思います。
トートは決して完璧なタイプではないです。
エリザベートとのやりとりからも、それは窺えます。
人間とは違う視点から眺めているため、人間よりも大きな視野で物事を見ているのですが、たまにこける時があるんですよ。
そういった部分を、紫苑さんは醸し出していました。
1箇所、歌詞を忘れてしまった時がありましたが、私は良い演技をしている限りそういったミスは、まったく気にならないです。
次にフランツ役の高嶺ふぶきさん。
こちらは、もう一つでした。
彼女は8日にも出演していましたが、前回からの向上がほとんど感じられませんでした。
高嶺さんの良さは、歌をセリフのように自然に歌う点なのですが、あまりにもセリフ的にしすぎてしまい、リズムが大幅にずれていました。
少しずれる位ならまったく問題ないのですが、大幅にずれるとオケやコーラスとハーモニーが合わなくなって、メロディが台無しになってしまうんですよ。
次はルキーニ役の湖月わたるさん。
好演していましたね。
8日に観た轟さんのルキーニよりも、様々な顔を上手く表現していました。
ルキーニは、単なる狂人ではないんです。
多面的な側面を持つ人物です。
基本的にはトートに仕えている(トートを信奉している)のですが、それだけではなく独立運動に一枚噛んだりもしています。
発言には深いものがあり、頭のいい人物だと思います。
そういった複雑さを、湖月さんはよく表現していました。
ルドルフ役の涼紫央さん。
頑張っていました。宝塚時代の演技は映像でしか観た事がありませんが、宝塚での演技よりも数段上のような気がしました。周りの人が達者だからでしょうか。
英雄に憧れる気持ちや孤独な心境が、しっかりと伝わってきました。
ゾフィー役の初風じゅんさん。
いいですね。ベテランの味を充分に出していました。
落ち着きがあるのが、良かったですね。ゾフィーには不可欠な要素です。
セリフも聴き取り易かったです。
マックス役の立ともみさん。
もう少し頑張れるかと思います。
8日の大峯さんもそうだったのですが、シシィ(少女時代のエリザベート)が憧れる自由な生き方を、表現しきれていないと思います。
観ていて、「そこまで自由に生きているのか? この人にエリザベートが憧れるのは、どうも納得できんな」と感じてしまうんですよ。
全体の態度から、もっと自由な雰囲気を出すといいですね。
少年ルドルフ役の初嶺麿代さん。
いい感じに初々しさを表現していました。
ただ、歌の時に少し音程をはずしていたのが、もったいなかったです。
マダム・ヴォルフ役の嘉月絵理さん。
頑張っていましたが、もっといけるかなと思います。
この役はある意味、一番難しい役かもしれないです。
吹っ切れた演技をするのは大前提ですが、単なるあばずれではなく、計算高さと有能さも出さないと説得力が出ないです。
出る場面が少ないので、表現しきるのは至難ですよ。
独立運動のリーダー役の美郷真也さん。
良かったです。気合が伝わってきました。
もっと包容力を出せたら、最高ですね。
他の方達は、歌、演技共に良かったです。
1階席の23列目と、かなり後ろの方だったので、顔がよく見えなかったのですが、一人一人が何役もされているようですね。
前回は2階席の前の方で観たのですが、今回の1階席の方が、後ろの席でも観やすかったです。
音響に差は無かったです。
シアターオーブは、あまり音響のいい劇場ではないです。ビルの中階にありますからね…。
音がキンキンして、高音はかすれがちでした。
日本には、良い劇場が少ないです。芸術を真に愛好している人が少ないのですかね。
今回の観劇で感じたことは、以上です。
観ていて思ったのですが、芸術において一番大切な事は『一体感』ですね。
今公演には、役者たちの一体感がすばらしいレベルであります。
8日に観た時も、一体感を強く感じました。宝塚のそういうエネルギーはすごいですね。
役者たちが一体となって舞台上に世界を作り、それに観客が共感して観客も一体となる。
この状態の気持ちよさを求めて、役者も観客も劇場に足を運んでいるのだなと、悟りました。
この一体感を、日常で誰もが体験できるように世界を創り変えたら、地上はついに天国になるのだと気づきましたよ。
『一体になること』、ここに真の幸福があるのだと、完全に理解できました。
そういう理解をさせてもらえた事に、深い感謝をいたします。
(2012.12.3.)