今回は、もう15年くらい前になりますが、初めて宝塚歌劇団を観に行った時の事を書きます。
あの時は、ものすごいカルチャー・ショックを受けました。
宝塚の世界は独特なので、私が人生で接した事の無いものばかりを体験し、衝撃を受けました。
だから、今でもよく覚えています。
観に行ったのは、雪組公演の『真夜中のゴースト/レ・シェルバン』という作品です。
これは、1997年後半に行われた公演です。
まず、公演について書く前に、私がどうして宝塚を観に行くことになったのかを書きます。
多くの男性の宝塚ファンに共通している事だと思うのですが、私が宝塚を知ったのは家族を通じてでした。
家族がヅカファンで、TVで宝塚の映像を見ていたのです。
当時、私の母は1年くらい前から宝塚にはまり、よくTVで公演の映像を見ていました。
私の家はWOWOWに入っており、そこでは公演の映像と、スターの小部屋という宝塚の紹介番組を放送していました。
母はそれを録画して見ていたのです。
私は最初の頃は、「何だか分からないものを、母は見ているなあ。役者の化粧がめっちゃ濃くて気持ち悪いし、セリフの言い方も変だし、よく楽しめるものだ。」と半ば呆れながら見守っていました。
映像を見ていると、化粧の濃さや独特のセリフ回しによって気分が優れなくなりました。
なので母が宝塚を見ている時は、すぐにリビングを離れるようにしていました。
(このような理屈抜きの拒絶反応は、多くの男性が持つようです。私の弟も、同じ反応を示していました。)
そうした状況が半年ほども続いたのですが、やがて見るのに慣れてきて、化粧への違和感が減っていき、別の国の言葉かとすら感じていたセリフも聞き取れるようになってきたのです。
私は、「やばいよ、俺は洗脳されてきているのか?」と、やや心配になりました。
それで、目に入れるのを完全に止めて、絶縁をはかろうかと思ったのですが、「いやいや、偏見かもしれん。レッテルを貼らずに、1回ちゃんと見て判断した方がいい。」と思い直しました。
私は、とっても寛容な人間なのです(^-^)
その頃には、母はたくさんの作品を見ており、どの作品が傑作なのかをかなり熟知していました。
私は、「一番面白い作品を教えてくれ。ちょっと、それを見てみる」と伝えました。
すると母は、「宝塚では、たまに外国の作品をそのまま持ってきて公演している。それが面白い。」と言い、『ミー・アンド・マイガール』と『ハウ・トゥー・サクシード』を薦めてきたのです。
そこで、その2作品を見たのですが、私は『ハウ・トゥー・サクシード』の方に、えらく感動しました。
主役を演じている「真矢みき」さんの演技力に、ほとほと感心してしまったのです。
「こんな素晴らしい役者がいるのか。宝塚をなめちゃいかんなあ」と、気付かされました。
それでその後、真矢さんの出ている作品を中心にして、少しづつ宝塚作品を見るようになりました。
私が宝塚にはまったのは、真矢さんのおかげなのです。
彼女の出演した作品では、他には『ブラック・ジャック』と『ダンディズム』が良い作品だと思います。
『ダンディズム』については、真矢さんのダンスのあまりの素晴らしさに、何度もビデオを見直しました。
「彼女は、日本でも屈指のダンサーなのではないか」と思いましたね。
この思いは、今でも変わりません。
こうして宝塚にはまっていったのですが、ある時に雪組の作品も見る事になりました。
私は真矢さんのファンになったので、基本的に彼女がいる花組の公演を見ていました。
それがある時、母が『あかねさす紫の花』という雪組の作品を見ていて、私も見ました。
これが、私と「花總まり」さんとの出会いでした。
まりさんはまだ20代前半でしたが、実力がずば抜けているので、すでに雪組のトップ娘役になっていました。
そんな彼女を最初に見た印象は、「この人は、めちゃくちゃ化粧が濃いなあ」でした。
宝塚は化粧が濃いのが基本なのですが、その中でもまりさんの濃さは際立っていました。
「この人の化粧の白は、白よりも白い」と、思わず呟きました。
まりさんの化粧は、白を出そうとしすぎて、異常な領域に行っているように見えました。
これが母の心に響いたらしく(面白かったらしく)、「尚立は、まりさんについて、そう言っていたよねー」と、その後によく言われました。
私は、「この人は、化粧を1cmくらい塗っているんじゃないか。肌は大丈夫なんだろうか?」と心配になりました。
それで相手の身体を心配してドキドキしながら見てたのですが、そのうちに「演技がかなり良いじゃないか」と気づきました。
そこから、私の注目が始まりました。
注目してみると、花總まりのスタイルの良さがはんぱじゃない事に気づきました。
足がとにかく長くて、西洋人並みなのです。
「この人は、もしかしてハーフ?」と思ったのですが、普通の日本人でした。
そうこうして、気になる役者となったので様々な作品をチェックしているうちに、「この人は、いい女だなあ」と思うようになりました。
彼女は、華があるんですよね。
踊りの美しさにも、しびれました。
こんな流れで、私は宝塚にすっかりはまり、だんだんと「1回、劇場に観劇に行きたいなあ」と思うようになってきました。
TVで見ているだけじゃなく、生で見てみたくなったのです。
そんなある日、『宝塚に新しい組が出来る』という情報を入手しました。
(これが、宙組の誕生につながります)
私は、「へー! そうなの!」と思ったのですが、新組のメンバーが発表されると、そこに花總まりさんの名前もありました。
私と母は、「(新組に引き抜かれるため)各組のメンバーが大幅に変わるねえ、どうなるか予想がつかないよ」と話し合いました。
私は新組に関するニュースを見ている間に、「こんなにメンバーが変わると、この先がどうなるか分からない。新組がどんな組になるか全然わからないし、組替えになる前にまりさんのいる雪組を観ておいた方がいいのではないか。」と考え始めました。
(この頃には、すでにまりさんが一番お気に入りの役者になっていました)
ちょうどその時は、雪組は轟悠さんのお披露目公演である『真夜中のゴースト/レ・シェルバン』をしていました。
この公演を最後に、まりさんは組替えになるので、雪組の花總まりを観るにはこれを観に行くしかありません。
さらには、普通は宝塚で公演した後には、続けて東京にも遠征される(東京公演が行われる)のに、この公演は宝塚公演だけだったのです。
「興味はあるけど、東京に住む私が、わざわざ向こうまで(兵庫県宝塚市まで)観に行く必要があるのかなあー。宝塚を生で観た事がないから、どこまで面白いかもわからないし…。」
私は悩みました。
スターの小部屋で『真夜中のゴースト/レ・シェルバン』の紹介番組をチェックしたら、「う~ん、あまり面白そうな作品ではないなあ」と思い、行くかどうかでさらに悩みました。
5日ほど迷ったすえに、「行かないで後で後悔するのは嫌だから、行こう」と決めました。
母に話すと、「もう公演が終盤だし、轟さんのお披露目公演だから、チケットが取れないかも。電話で聞いてあげる。」との返事です。
それで母が宝塚大劇場に電話したところ、「本日の公演ならば、たくさんチケットがあります」という事で、急遽その日に母と行く事になりました。
私は、それまで関西に行った事がなくて、関西に行くことだけでも緊張しました。
大阪弁を聞くだけでも、新鮮でしたね。
新幹線に乗って大阪駅に着き、そこからローカルな雰囲気の電車に乗って宝塚駅に向かいました。
で、宝塚の駅を出てみると、街全体がピンク系の色彩になっており、「何やら、ここは違うぞ」と感じました。
宝塚歌劇団の本拠地なので、それを駅前から押し出し、独特の雰囲気がありました。
しかし田舎臭さもあり、もともと温泉街だったというのが分かる、のんびりした雰囲気の場所でしたね。
劇場前につき、チケット・カウンターで話を聞くと、何とS席があり、前から7列目で見れる事になりました。
当日に行って7列目は、かなり凄いことで、母は「凄いなあ」と言っていました。
私は無知だったので、「そんなもんじゃない? 劇場が広いんだから、空きもあるでしょ」と答えました。
今から考えると、当日券でこの席は、奇跡的な現象ですねー。
ここからは、いよいよ観劇の感想になりますが、長文になったので2回に分ける事にしますね。
(後半はこちらのぺージです)
(2013年7月23日に作成)