ここでは、おまけとして「But Not For Me」と「Doxy」のコード進行を紹介します。
A
|F7(9) |Fm7 B♭7(13) |E♭M7 |E♭M7 |
(F7(9) E7(9) E♭6(9) C7 )
|F7(9) |Fm7 B♭7(13) |B♭m7(13) |E♭7 |
(F7(9) E7(9) B♭m7(9) )
|A♭M7 |A♭m7 D♭7 |E♭M7 G7 |Cm7 |
|F7 |F7 |Fm7 |B♭7 |
A'
|F7(9) |Fm7 B♭7(13) |E♭M7 |E♭M7 |
|F7(9) |Fm7 B♭7(13) |B♭m7(13) |E♭7 |
|A♭M7 |A♭m7 D♭7 |E♭M7 G7 |Cm7 |
(Dm7-5 G7 )
|F7 |Fm7 B♭7 |E♭M7 |E♭M7 |
(Gm7 C7 )
エンディング (A'の13小節目から)
|F7(9) |Fm7 B♭7 |E♭M7 |E♭M7(9 ♯11) |
○ コード進行の解説
この曲は、Ⅱ7から始まるのが1つのポイントです。
このコードで始まると、明るい雰囲気になります。
7~8小節目は、普通だと|E♭M7 |B♭m7 E♭7 |になります。
ここではトニック・コード(E♭M7)に解決せず、いきなりB♭m7に進み、ダイレクトにA♭M7に向かい始めるのですが、強引な展開ながら格好良い響きと思います。
AとA'の違いは、13~16小節目だけです。
いろんな所に( )でコードが書かれていますが、アドリブの時にこっちの進行を使う時があるから付け加えておきました。
マイルスのアドリブは、2小節目では裏コードのE7を想定したフレーズを吹く事が多いです。
ホレス・シルバーのソロは、ファンキーで明るいものですが、彼はAの4小節目と、A'の12小節目はC7(Ⅵ7)にしています。
エンディングは特に変わったことはせずに、そのまま終わります。
最後のE♭M7(9 ♯11) は、マイルスは♯11、ロリンズはM7、ホレスは9の音を出してます。
さて。
この曲のアドリブで1番インパクトがある部分の1つは、『テイク2(テンポの速いバージョン)のロリンズのソロで、2コーラス目のA'の4~6小節目に吹くフレーズ』だと思います。
少し耳の良い人だと、「あれっ、このフレーズ完全に外れた音じゃん」と感じるはずです。
この部分ではバックのホレスも変なコードを弾いており、あらかじめ「ここでは大胆にコードを変えてやろうぜ」と打ち合わせていたのが分かります。
今回、この一風変わった、通常なら外れた音と見なされる部分を、分析してみました。
外れた音なのに格好良いから、めちゃくちゃな事をしているわけではありません。
私の分析結果は、こうです。
(A'の1小節目から書きます)
|F7(9) |B♭7 |E♭M7 |B7 |
|F♯7(9) |B7 E7(13) |B♭m7 |E♭7 |
4小節目にB7(ドミナント・コード)を置いて、一時的にEキーに(半音上の調に)転調し、その後にEキーのⅡ7ーⅤ7と進むのです。
E7(13)は、B♭m7ーE♭7の進行にゆくための繋ぎのコードで、7小節目で元の進行に戻る。
レコーディングの時にこんな遊びを入れて、失敗せずにお洒落なサウンドに仕上げてしまうのだから、この時代のジャズ・ミュージシャンって凄いねー。
テーマ
|B♭7 |G7 |C7 F7 |B♭7 F7 |
(B♭7 A♭7 )
|B♭7 |G7 |C7 |F7 |
(B♭7 A♭7 )
|B♭7 |B♭7 |E♭7 |Edim |
|B♭7 |G7 |C7 F7 |B♭7 (F7) |
(B♭7 A♭7 )
エンディング (13小節目から書きます)
|B♭7 |G7 |C7 F7 |B♭7 G7 |
|C7 F7 |B♭7 |
○ コード進行の解説
シンプルな進行なので、解説する部分はほとんど無いです。
1、5、13小節目は、テーマ・メロディを吹いている時は、メロディの動きやベースの動きから考えて、B♭7一発でいいと思います。
アドリブ・パートに入ると、ホレスはB♭7ーA♭7と弾いていますね。
マイルスやロリンズがアドリブしている時、ホレスは1~2小節目などをB♭7ーA♭7ーG7と弾くのですが、A♭7とG7に13度を入れるんですよね。
B♭7ーA♭7(13)ーG7(13)みたいに弾く。
G7(Ⅵ7)の所って、ジャズだと普通はオルタード・テンション・ノート(-9度やー13度)を入れてブルージーな雰囲気にします。
ここでは13度を多用していて、それにより曲が明るい雰囲気になってます。
(2016年11月18日に作成)