おまけとして、「Four」「Tune Up」「Miles Ahead」のコード進行を紹介します。
この3曲は、コード進行がしゃれていて、私の大好きな曲です。
マイルスのプレイは、素晴らしい出来ですねー。
演奏される方は、マイルスの軽やかさや知的なフレージングに、注目してみて下さい。
私はマイルスのフレーズをコピーして、マイルスに合わせて演奏してみましたが、軽やかさや粋な感じがなかなか出せなかったです。
そういったニュアンスを出せるかどうか、なんですよね。ジャズは。
A
|E♭M7 |E♭M7 |E♭m7 |A♭7 |
|Fm7(9) |Fm7(9) |A♭m7 |A♭m7 D♭7 |
|Gm7 |G♭m7(11) |Fm7 |D♭7(♯11) |
|Gm7 |G♭m7(11) |Fm7 |B♭7(13) |
A'
|E♭M7 |E♭M7 |E♭m7 |A♭7 |
|Fm7(9) |Fm7(9) |A♭m7 |A♭m7 D♭7 |
|Gm7 |G♭m7(11) |Fm7 |D♭7(♯11) |
|Gm7 G♭m7(11) |Fm7 B♭7 |E♭M7 |Fm7 B♭7 |
○ エンディング (A'の13小節目から書きます)
|Gm7 G♭m7(11) |Fm7 B♭7 |Am7-5 |D7 |
|Gm7 G♭m7(11) |Fm7 B♭7 |E♭M7 |E♭mM7 |
○ コード進行の解説
Aの3~4小節目は、D♭のキーに転調しています。
D♭キーのⅡ-Ⅴ進行です。
5小節目は、元のE♭キーに戻って、そのⅡm7になります。
普通だと5小節目は、D♭M7(D♭キーのトニック)に進行するのですが、そうならずにFm7に進むのがポイントです。
なぜここまでスムーズにFm7(E♭キーのⅡm7)に移動できるのかは、よく分からないです。
D♭とFm7は、構成音が似ているので、スムーズに移行できるのでしょうか。
10小節目は、普通はC7(Ⅵ7)にする所ですが、G♭m7(♭Ⅲm7)で代理しています。
ここの所が、この曲の一番の特徴ですね。
Gm7→G♭m7(11)→Fm7と、m7コードが続いていくので(7コードが入らないので)、軽やかに進むし、切ない感じが(ブルーな感じが)出ます。
同じ代理を、A'の13小節目でも行っています。
12小節目は、普通だとB♭7に進むのですが、意表を突いてD♭7に行きます。
D♭7は、Ⅱ-Ⅴ化するとA♭m7ーD♭7になり、13小節目のGm7への半音上からのアプローチ・コードだと分かります。
この、「半音上のコードを挿入して、そこから下降するアプローチ」は、ジャズではよく使われます。
エンディングの最後のE♭mM7は、1度、5度、M7度、♭10度(短3度)で音を重ねると、ばっちりと決まります。
A
|Em7(11) |A7(♯11) |DM7 |DM7 |
|Dm7(11) |G7(♯11) |CM7 |CM7 |
|Cm7 |F7 |B♭M7 |B♭M7 |
|Em7(11) |F7 |B♭M7 |A7 |
A'
|Em7(11) |A7(♯11) |DM7 |DM7 |
|Dm7(11) |G7(♯11) |CM7 |CM7 |
|Cm7 |F7 |B♭M7 |B♭M7 |
|Em7(11) |A7 |DM7 |DM7 |
○ エンディング (A'の13小節目から書きます)
|Em7(11) |A7 |DM7(♯11) |DM7(♯11) |
○ コード進行の解説
この曲は、基本的に全音下のキーに次々と転調していく構造をしています。
Aの13小節目のEm7(11)は、DキーのⅡm7です。
そこから、いきなりB♭キーに転調して、B♭キーのⅤ7のF7に行きます。
そして16小節目には、Dキーに戻るために、DキーのⅤ7であるA7に行きます。
エンディングのDM7(♯11)は、1度、3度、M7度、10度、♯11度と重ねると、バッチリ決まります。
イントロ (テンション・ノートが多いので、2小節で1行にしました)
|Cm7(9)onB♭ |Cm7(9)onB♭ F7(♭9♭13)onA|
|B♭m7(9)onA♭ |B♭m7(9)onA♭ E♭7(♭9♭13)onG|
|A♭m7(9)onG♭ |A♭m7(9)onG♭ D♭7(♭9♭13) |
|G♭(9) G♭ |F7(♭9)onG G7 |
A
|Cm7 |F7 |B♭ E♭7 |A♭m7 D♭7 |
|Cm7 |Bm7 E7 |Cm7 F7 |B♭M7 (G7) |
A
|Cm7 |F7 |B♭ E♭7 |A♭m7 D♭7 |
|Cm7 |Bm7 E7 |Cm7 F7 |B♭M7 (Bm7 E7)|
B
|AM7 |Am7 D7 |GM7 |Bm7-5 E7 |
|Am |Am |B♭m7 E♭7 |Bm7 E7 |
A
|Cm7 |F7 |B♭ E♭7 |A♭m7 D♭7 |
|Cm7 |Bm7 E7 |Cm7 F7 |B♭M7 (G7) |
○ コード進行の解説
イントロは大変に見づらくなっていますが、私がギターで弾くと、4声部でかちっと合います。
トップ・ラインとベース・ラインが、半音で降りていく形になっています。
これは、Ⅱ-Ⅴ進行を使って、次々と転調していくパターンです。
Aの4小節目は、5小節目のCm7へのドミナント・アプローチの変形です。
本来だとG7になるのですが、それを裏コードのD♭7にして、さらにA♭m7 D♭7とⅡ-Ⅴ化しています。
Aの6小節目は、めったにないパターンです。
5小節目のCm7(Ⅱm7)を、1回半音さげてBm7にし、再び7小節目でCm7に戻すという、強引な進行です。
これは、気合で解決するしかないです。
Bに入る直前のBm7 E7は、Bの1小節目のAM7に転調するためのⅡ-Ⅴ進行です。
入れても入れなくてもいいのですが、入れた方がスムーズになります。
Bは、最初はAキーで始まります。
そしてすぐに2小節目で、Gキーに転調します。
さらに4小節目で、今度はAmに転調します。
6小節目からは、Aの最初のコードであるCm7に向かって、B♭m7→Bm7と半音づつ上がって、強引に転調しつつ近づいていきます。
はっきり言って、この曲のコード進行は、激ムズです。
こんな強引な進行なのに、メロディアスなフレーズで自然にアドリブ演奏できるマイルスとジョン・ルイスは、人間じゃないと思います。
聴いていると、「あなたは人間ですか!?」と思ってしまいます。
この時期のマイルスって、こういったシステマチックに組み立てた曲を、いくつも書いています。
彼の場合、バランス感覚と抜群のセンスがあるので、こういう少々ひねくれたコード進行の曲でも、頭でっかちにならない(かっこ悪いメロディにならない)んですよね。
(2013年6月22日に作成)