おまけ②では、「Syeeda's Song Flute」、「Mr.P.C.」、「Naima」の3曲について、コード進行を紹介します。
まず、1曲目の「Syeeda's Song Flute」です。
この曲は、本文では取り上げなかったのですが、試しにコード進行を採ってみたところ、すごい面白い進行をしております。
コード進行にとても特徴があるので、CDに合わせて一緒にコードを弾くだけで、楽しめます。
なので、紹介する事に決めました。
A
|G |G♯ |G |F |
|G |G♯ |G |G♭ |
|G |G♯ |G |F |
|G |G♯ |G |G♭ |
B
|Gm |A♭ |Gm |A♭ |
|Gm |A♭ |Dm7 Gm |A A♭ |
A'
|G |G♯ |G |F |
|G |G♯ |G |G♭ |
C
|E |EonB E |D |DonA D |
|E |EonB E |G♭ |G♭onD♭ G♭ |
○ コード進行の解説
重要なので最初に書きますが、この曲は『テーマの時とアドリブの時では、コード進行が一部だけ変わります』。
上に書いているのは、テーマ時のコード進行です。
具体的には、次の2つが、アドリブ・パートになると変わります。
① Aの4小節目と12小節目のF、 A'の4小節目のFは、アドリブ・パートに入るとG♯になる
② Bの7~8小節目は、Gm |Am7 D7 |に変わる
元のコード進行のままだと、あまりにややこしいので、アドリブでは一部を簡略化したのでしょう。
Aは、基調となるGキーから、上のG♯キーに行ったり、下のFキーやG♭キーに行きます。
要するに、1小節ごとに転調します。あり得ない事をしますね、コルトレーンって。
この進行で、そんなに変な流れに聴こえないのですから、凄いと思います。
G♯は、転調したと考えずに、Gに対する裏コードと考える事もできます。
Fも、♭Ⅶ7と考える事もできそうです。
Bは、Gmのキーに転調するのではなく、Fmのキーに転調して、FmキーのⅡと♭Ⅲを行ったり来たりしています。
7小節目の|Dm7 Gm |で、ついにGmのキーになり(ⅤmーⅠmの進行)、8小節目ではA'の1小節目であるGに、半音下降の進行で向かいます。
A'は、Aが半分の長さになったものです。
Cは、ベースが途中で5度の音を入れるので、on~と書いて、ベース音の動きも表記しました。
次は、6曲目の「Mr.P.C.」です。
この曲は、それほど難しくありません。
今までの曲に比べると、天国のように感じるほどです。
基本はマイナー・ブルースで、そこにジャズらしくするために、ドミナント・コードを追加していったものです。
|Cm7 |Dm7-5 G7 |Cm7 G7 |Cm7 C7 |
|Fm7 (C7(♭13))|Fm7 G7 |Cm7 G7 |Cm7 |
|D7(♯9) |G7 |Cm7 G7 |Cm7 G7 |
○ コード進行の解説
3、4、6、7小節目のG7やC7は、無くてもいいのですが、あるとジャッジーになります。
これは、「ドミナント・アプローチ」と呼ばれる、ジャズ的なアレンジ手法です。
ここでは当然ながら、ほぼ常にフラナガンは入れています。
5小節目のC7(♭13)は、お好みで入れたり抜いたりして下さい。
無くても、ぜんぜん平気です。
11~12小節目は、普通だと|Cm7 |Dm7-5 G7 |になります。
でもここでは、上記のようになっています。
アドリブに入ってからも、上記の進行のままでプレイしています。
この曲のエンディングは、こうなっています。
エンディング (最後のテーマ時の9小節目から書きます)
|D7(♯9) |G7 |Cm7 G7 |Cm7 |
|D7(♯9) |G7 |Cm7 G7 |Cm7 |
|CmM7 |
いちばん最後の小節についてですが、コルトレーンがM7の音を吹いて曲が終わるので、CmM7のコードを追加しておきました。別に無くてもいいです。
フラナガンは、普通にCm7を弾いて終了しています。
最後に、9曲目の「Naima」です。
この曲は、アルバムの6曲目にオリジナル・ヴァージョンが収録されていますが、私は9曲目の「別テイク」の方をコピーしました。
コピーするにあたって、かなりコード進行が難しいので、ネットでコード進行を調べました。
それを参考に弾いてみましたが、どうもしっくりきません。
M7コードが多用されている様に解釈されているのですが、私の耳で聴くと、M7コードとされている部分の多くが、マイナー・コードに聴こえるのです。
仕方がないので、自力でコードを採っていきました。
まあ、私のウェブサイトで紹介しているコード進行は、ほとんどが自力コピーですけど。
一般的なコード・ブックと違う進行かもしれませんが、こっちの方が正しいと思います。
なお、1つのコードの表記が長くなるため、2小節で1行にします。
A
|D♭M7onE♭ |E♭m7(9) |
|E♭m7-5(11) D♭m7-5(11)onE♭ |A♭M7 |
A
|D♭M7onE♭ |E♭m7(9) |
|E♭m7-5(11) D♭m7-5(11)onE♭ |A♭M7 |
B
|A♭m(9)onB♭ |B♭7(♭9、13) |
|A♭m(9)onB♭ |B♭7(♭9、13) |
|Bm(9)onB♭ |A♭m(9)onB♭ |
|A♭M7onB♭ |EM7onB♭ |
A
|D♭M7onE♭ |E♭m7(9) |
|E♭m7-5(11) D♭m7-5(11)onE♭ |A♭M7 |
( |E♭m7-5(11) D♭m7-5(11)onE♭ |A♭M7 | )
○ コード進行の解説
Aは、1~3小節目は、E♭の音がベース音として持続します。
同じベース音に乗って、コードが変わっていきます。
コード表記だけだと、理解しづらい人もいると思います。
そこで、各コードの構成音も書いておきます。
下記の音を、左から順番に、音を上に重ねていきます。
私がギターでコピーする限りでは、このコードでばっちりはまります。
D♭M7onE♭は、 E♭、A♭、D♭、F、C
E♭m7(9)は、 E♭、G♭、D♭、F
E♭m7-5(11)は、 E♭、A、D♭、A♭
D♭m7-5(11)onE♭は、 E♭、G、B、G♭
A♭M7は、 A♭、E♭、G、C、E♭
Bは、今度はずっとB♭の音が、ベース音として持続します。
B♭のベース音の上で、コードが動いていきます。
こちらも、分かり易くするために、コードの構成音を書きます。
左から順番に、音を上に重ねていって下さい。
A♭m(9)onB♭は、 B♭、A♭、B、E♭、B♭
B♭7(♭9、13)は、 B♭、A♭、B、D、G
Bm(9)onB♭は、 B♭、B♭、D、G♭、D♭(2つ目のB♭は、オクターブ上げる)
A♭M7onB♭は、 B♭、A♭、C、E♭、G
EM7onB♭は、 B♭、E、A♭、E♭
最後のAの5~6小節目は、カッコで示しましたが、おまけ的に加えられる小節です。
コルトレーンは入れているので、一応書きました。
コルトレーンは、テーマを吹いた後に、AABAと1コーラスのソロを取ります。
その後テーマに戻るのですが、普通ならば最初のAに戻るところを、いきなりBに行き、BAと吹いてエンディングに入ります。
つまり、AAを省略しています。
各コードの機能についてですが、最初のD♭M7はⅣ、次のE♭m7はⅤmだと思います。
その後の、3小節目のE♭m7-5とD♭m7-5は、機能がよく分かりません。
6曲目のオリジナル・ヴァージョンでソロをとっているウィントン・ケリーは、ここをAM7 GM7にして弾いています。
コルトレーンはE♭m7-5 D♭m7-5で解釈しているし、アドリブのフレーズもm7-5のスケールを使用しています。
BのA♭mーB♭7は、E♭mのキーに転調した上で、ⅣmーⅤ7の動きをしています。
Bの5小節目からは、コードの機能がよく分かりません。
最後に、エンディングのコード進行を書いておきます。
エンディング (最後のAの始めから)
|D♭M7onE♭ |E♭m7(9) |
|E♭m7-5(11) D♭m7-5(11)onE♭ |A♭M7 |
|E♭m7-5(11) D♭m7-5(11)onE♭ |A♭M7 |
|E♭m7-5(11) D♭m7-5(11)onE♭ |A♭M7 D♭M7 |
|A♭M7 D♭M7 |A♭M7(9) D♭M7 |
|A♭M7(9) |
(2013年11月8~11日に作成)