「ソニー・ロリンズ Vol.2」のおまけ記事①として、「Why Don't I」と「Reflections」のコード進行を紹介いたします。
後者は、セロニアス・モンクの作曲で、かなり難しい進行をしています。
A
|Fm7 B♭7 |Gm7 C7 |Fm7 B♭7 |C♯7 C7 |
(Gm7 C7 )
|Fm7 B♭7 |Gm7 C7 |Fm7 B♭7 |E♭6 |
(Gm7 C7 )
A
|Fm7 B♭7 |Gm7 C7 |Fm7 B♭7 |C♯7 C7 |
(Gm7 C7 )
|Fm7 B♭7 |Gm7 C7 |Fm7 B♭7 |E♭6 |
(E♭M7 )
B
|GM7 |Am7 D7 |GM7 |Fm7 B♭7 |
A
|Fm7 B♭7 |Gm7 C7 |Fm7 B♭7 |C♯7 C7 |
(Gm7 C7 )
|Fm7 B♭7 |Gm7 C7 |Fm7 B♭7 |E♭6 |
(E♭M7 )
○ コード進行の解説
Aの部分は、基本的には Ⅱm7-Ⅴ7-Ⅲm7-Ⅵ7 の繰り返しです。
この進行は、「逆循環の進行(略称は、ぎゃくじゅん)」と呼ばれています。
(ちなみに、「循環の進行(じゅんかん)」とは、ⅠM7ーⅥ7-Ⅱm7-Ⅴ7、もしくはⅢm7ーⅥ7-Ⅱm7-Ⅴ7を繰り返すパターンの事です。)
逆循環も循環も、ジャズでは基礎なので、Aの進行については問題ないでしょう。
4小節目だけが、C♯7ーC7と、少し変わった動きになっています。
これは、テーマ・メロディに和声を付けると、Gm7ーC7だとしっくりしないからです。
8小節目は、ロリンズの出すテーマ・メロディを考慮して、E♭6にしました。
Bに入ると、Gキーに転調します。
最後の(4小節目の)Fm7ーB♭7で、元のE♭キーに戻ります。
Bの部分だけが、4小節と短くて、Aの半分の長さになっています。
アドリブに入ると、4小節目や8小節目は、( )内の進行に変化します。
より簡単なコード進行にして、アドリブをめい一杯やれるための措置です。
(※この曲は、コードの動きが激しいので、2小節で1行にします)
イントロ
|C7 B♭7 |B7 A7 |
|D7 E7 D7 |
A
|A♭M7 G♭7(9) F7 B7(13)|B♭m7 E♭7(♭9) |
|A♭M7 B♭m7(11) Bdim |Cm7 F7 |
|Gm7-5 F7(♭9) |B♭m7 E♭7(♯9) |
|A♭M7(9) F7 |B♭m7 E♭7 |
(B♭m7 F7(♯9) B♭m7 E♭7(9))
A
|A♭M7 G♭7(9) F7 B7(13)|B♭m7 E♭7(♭9) |
|A♭M7 B♭m7(11) Bdim |Cm7 F7 |
|Gm7-5 F7(♭9) |B♭m7 E♭7(♯9) |
|A♭M7(9) Cm7 |Cm7-5 F7 |
B
|B♭m7 E♭7(13) |A♭7 D♭7 |
|C7 |Fm FmM7 |
|Fm7 Fm7(11) B♭7(9)|Fm7(9) Fdim |
|B♭m7 B♭m7 E♭7 |B♭m7 A7 |
A
|A♭M7 G♭7(9) F7 B7(13)|B♭m7 E♭7(♭9) |
|A♭M7 B♭m7(11) Bdim |Cm7 F7 |
|Gm7-5 F7(♭9) |B♭m7 E♭7(♯9) |
|A♭M7 G♭7(13) |A♭M7 B♭m7 E♭7(♭9)|
エンディング (最後のAの7小節目から)
|A♭M7 G♭7(13)onD♭ |G♭7 |
○ コード進行の解説
まずイントロですが、基本はB♭7ーA7-D7の進行なのですが、そこに全音上のコードからのアプローチが入ってます。
とても変わった進行なのですが、これで合っていると思います。
イントロやエンディングでは、どんなコード進行もアリなので、こういう通常ではありえない進行もOKなんです。
イントロの最後のコードはD7ですが、そこからAの最初のコードであるA♭M7に進むのは
かなり違和感があります。
モンクならではの、強引なイントロですね。
Aに入ると、まずⅠM7 ー♭Ⅶ7-Ⅵ7-♭Ⅲ7と進行します。
♭Ⅲ7は、Ⅵ7の代理コード(裏コード)です。
1小節目からここまで凝った事をするのは、さすがモンクです。
5小節目では、Gm7-5 が出てきます。
これは、B♭m7(Ⅱm)の代理コードです。
これを使うだけで、響きが大きくかわり、とてもブルーな雰囲気が生じています。
この代理コードにより、ここの所が重々しいものになっています。
8小節目は、基本はⅡmーⅤ7の進行なのですが、モンクは( )内の進行でバッキングを
しています。
( )内の進行は、ⅡmーⅥ7-ⅡmーⅤ7となっています。
2度目のAは、7~8小節目が1度目とは違います。
ここのCm7の所が、私の耳コピーで、唯一あまり自信の無い所です。
もしかしたら、間違っているかもしれません。
私がギターで合わせると、どうもしっくりくるコードを見い出せなかったです。
Cm7(Ⅲm7)→Cm7-5(Ⅲm7-5)という進行は、稀にあります。
Bに入ると、まずⅡm-Ⅴ7-Ⅰ7-Ⅳ7と進行します。
そこから3小節目でFmキーに転調して、FmのⅤ7(C7)が1小節続きます。
C7は、転調していないと考えてⅢ7でも捉えられると思うのですが、ここのC7とその後のFmは響きがとても重々しいので、転調していると捉えた方がいいかなと思います。
4小節目のFmM7は、コードの響きや機能がC7に似ているのです。
ロリンズはアドリブの時には、C7っぽく吹いていますね。
5小節目のFm7は、私の場合は元のA♭キーに戻ったと考えて、Ⅵm7で捉えます。
響き的に、Ⅰmではないと感じます。
そこからFdim(トニック・ディミニッシュ・コードの代理コード)を経由して、7小節目のB♭m7(Ⅱm)に繋がります。
最後のAは、7小節目がそれまでと大きく違いますね。
ここではG♭7(♭Ⅶ7)が出てきます。
このⅠ-♭Ⅶ-Ⅰという進行は、けっこう出てきます。
この♭Ⅶ7は、エンディングでも使われています。
普通だと、最後にⅠM7に戻って終わるものなのですが、このエンディングでは何と!
そのまま♭Ⅶ7で終わります。
これは、大変に珍しいですねえ。
(2014年1月30日に作成)