チャーリー・パーカーは、ジャズ史上の大巨人であり、音楽史上で見ても屈指のミュージシャンです。
まず間違いなく、人類史が続くかぎり、バッハとかモーツァルトなどと同じく、いつまでも聴き継がれていくでしょう。
パーカーの録音が残っているのは、1940年頃~1955年までですが、いま聴いてもまったく古びていません。
むしろ今でも、最先端かと思えるほどなのです。
彼が活動した時代は、まだ録音技術が発達していなかったので、今の音質に慣れた人が聴くと、最初は音質の悪さから「古臭いな」と感じがちです。
私自身もそうでした。
でも当時の音に耳が慣れ、演奏内容に意識を集中すれば、「凄すぎる……。人間ですか?」と誰もが驚嘆すると思います。
パーカーは、いくつかの音楽レーベルから作品を発表しています。
『サヴォイ』『ダイアル』『ヴァーブ』、この3つが、パーカーが存命中に契約したレコード会社です。
パーカーの正規のアルバムは、ほぼすべてがこの3社から出ています。
そうして、ここで紹介するのは、『ダイアル』から発売された曲集の、Vol.4です。
パーカーは、ダイアルからかなりの作品を発表していますが、それらはSPレコードの時代に出されたため、LP時代に再発された時には再編集されました。
説明するとややこしくなるので、ここではあまり触れませんが、結果的にパーカーのダイアル時代の作品は、様々な編集ヴァージョンがあります。
要するに、『再発売した会社の編集スタイルによって、アルバムの収録曲が異なっている』のです。
なので、パーカーのダイアル時代の作品を買う時は、まずジャケット裏面を見て、収録曲をきちんと確認して下さい。
これから紹介していく「オン・ダイアル Vol.4」は、1970年代にLPレコードで発売されたものです。
CDではありません。
パーカーのダイアル時代のアルバムを紹介するにあたって、「どれを紹介するか」で、非常に困りました。
迷ったすえに、あえてLP時代のアルバムにしました。
その方が、録音日ごとに分かれている(編集されている)ので、解説をしやすいからです。
(あと、おまけでコード進行も紹介しているので、「収録曲が多いCDよりも、LP時代のアルバムにした方が目次が見やすくなる」という私の事情もあります)
結論になりますが、この紹介文を読んでCDを購入する気になった方は、『アルバムタイトルではなく、収録曲をみて』購入して下さい。
「オン・ダイアル Vol.4」というタイトルのアルバムはCDでは無い可能性が高く、あっても収録曲が違うかもしれない。
LPレコードで購入する場合は、問題なく入手できるので、「オン・ダイアル Vol.4」を探して下さい。
ちなみに、ここに収められている曲の録音日は、1947年の10月28日です。
世界史的にいうと、第二次世界大戦が終わってからまだ2年ほどで、日本はGHQの占領下でしたね。
今から65年以上も前に作られた音楽にも関わらず、少しも古びずに訴えかけてくる…。
偉大な芸術作品の底力を、思い知らされますなあ。
パーカーの数多あるダイアル時代のアルバムから、なぜ私が「オン・ダイアル Vol.4」を選んだのか。
それは、収録曲が良いからなのは当然ですが、それだけではなく『別テイクがすべて収録された、完全版だから』です。
このシリーズ(曲集)は、Vol.1からVol.6まであり、パーカーがダイアルで録音したものの全てが網羅されています。
いわゆる『コンプリート版(完全版)』という奴です。
パーカーのアルバムについては、大抵のジャズ評論家は「マスター・テイクだけのアルバムを買え」と言います。
つまり、「あえて別テイクまで聴く必要はない」という態度です。
でも私は、『別テイクの入っていないパーカーのアルバムは、面白さが半減する』と思います。
なぜかと言うと、パーカーの演奏の楽しみ方としては、『同じ曲でも毎回アドリブを変えてくる、その創造性とチャレンジ精神にしびれること』が、重要な部分だからです。
パーカーの素晴らしさは、たくさんあるのですが、最大の魅力は「アドリブの凄さ」です。
だから別テイクもしっかり聴いて、アドリブの妙技を堪能する事が、パーカーを味わい尽くすことに繋がります。
私は断言しますが、『別テイクもきちんと収録されているアルバムが買い』です。
マスター・テイクだけのアルバムは、おすすめしません。
残念な事に、ほとんどのアルバムはマスター・テイクのみを取り上げています。
おそらく、同じテーマ、同じアレンジの曲を、パーカーのアドリブが違うというだけでいくつも並べるのは、退屈になると考えているのでしょう。
私に言わせると、そういう固定観念こそ退屈なんですよね。
「パーカーをそこいらの平凡なミュージシャンと同じに考えるな」と、強く言いたい。
CDでも、別テイクの入っている完全版が出ています。
それを探して買うのがベストです。
ここからは、各曲を解説していきます。
まず、参加メンバーを書きましょう。
チャーリー・パーカー(as) マイルス・デイビス(tp)
デューク・ジョーダン(p) トミー・ポッター(b)
マックス・ローチ(ds)
このメンバーは、当時チャーリー・パーカー・バンドとして、いつも一緒に活動していました。
そのため演奏のまとまりが素晴らしく、メンバー全員がパーカーのスタイルを熟知しているのでパーカーは伸び伸びと肩の力を抜いてプレイしています。
パーカーという人は、レコーディングの時に「いつも共演しているミュージシャンじゃない人を急遽招集すること」が、けっこうあるのです。
それはそれで面白い演奏になっているのですが、やはり自分のバンドのメンバーとやっている時の方が、音楽性が余計な拡散をせず演奏に締まりがあります。
まず、1~2曲目の「Dexterity」です。
この曲は、テーマ・メロディがリズミックでかっこいいですねー。
こうしたリズムを強調した作曲スタイルは、パーカーの特徴であり、強烈にスウィングするように、よく練られています。
パーカーは簡単に吹きこなしていますが、このテーマ・メロディは実は難しいです。
演奏しようとすると、大変です。
パーカーの曲は、よくスウィングするし、パーカーが涼しい顔で演奏しているので、聴いていると「簡単そうだな」と思える。
でも演奏してみると、あらびっくり! 信じられないくらい難しい場合が多いのです。
彼の作るメロディは、音の跳躍が多く、半音で動いたり、ある音を囲むように動いたりと、一般的な動きとぜんぜん違います。
それなのに自然にスウィングしていくのだから、魔法ですよ。
音符の動きが普通ではないので、演奏するにはかなりの修練が必要となります。
パーカーの作るメロディを、初見できちんと演奏できたら、それだけで私は拍手しますよ。
この曲はテーマ・メロディも尋常でないですが、パーカーのアドリブもはんぱないです。
この日のパーカーは調子が良くて、どの曲でも軽やかにアドリブを展開していきますが、この曲のテイクBのサビにおけるパーカーのフレーズは特に圧巻です。
「タラララ、ララララ、ララララ」と、16分音符を駆使して、高速スピードでフレーズを展開するのですが、ただ速いだけでなく、起伏のあるお洒落なフレーズなんですよ。
パーカーのアドリブって、知的でシステマチックなのに、奔放で即興的なんですよ。
この相反する要素が同居している所が、彼の凄さであり、誰にも真似できない部分です。
次は3~4曲目の「Bongo Bop」です。
ラテンのリズムを取り入れた、ブルース曲ですね。
ここでは、テイクBのパーカーのソロが好きですねー。
ソロの最初の方で、リズムを強調した愛嬌のあるフレーズを展開するのですが、そこがとても好きです。
意識的に、変わったリズムを挿入して、ブルースらしからぬ世界を構築しています。
パーカーは、『あえて変なリズムやメロディを連発して、聴き手を驚かせる』という、一種の遊びをよくするのですが、私はこれが好きなのです。
「子供のいたずら」みたいなものですが、パーカーには完璧とも言えるほどの音楽知識と耳があるので、遊びを入れてもアドリブが壊れないんです。
この行為を、「自分も出来る」と勘違いして凡庸なミュージシャンが行うと、フリー・ジャズ(美に欠ける聴き苦しいジャズ)になる。
私も、演奏をしていた時には真似を試みましたが、大抵はフリー・ジャズになりました。
ジャズを演奏される方は、相当に修練を経たあとでなければ、パーカーの「遊び心」は真似しない方がいいです。
真似したくなる部分なのですが、我慢した方がいいです。
(サッカーでいうと、ロナウジーニョやクリスティアーノ・ロナウドの足技を真似するみたいな感じです。
かっこいいので真似したくなるが、やるとボールを奪われてしまう(ミスをしてしまう)事になります。)
※長文になってきたので、2回に分ける事にします。
(続きはこちらのページです)
(2014年2月9日~10日に作成)