おまけの第2弾として、「Bird Of Paradise」と「Enbraceable You」のコード進行を紹介いたします。
前者は、スタンダード曲の「All The Things You Are」のコード進行を使い、パーカーが自由自在にアドリブを展開する曲です。
後者もスタンダード曲ですが、この曲はかなり難しい進行をしています。
この曲を演奏して、かっこいいものに仕上げている人は、ほとんどいません。
ここでのパーカーのヴァージョンは、両曲の理想的な模範例なわけですが、真似をしても近づくのは無理だと思います。
多くのジャズ・ミュージシャンが憧れ、必死に真似をしながらも、全く真似が出来ないという、至上の演奏です。
『近づく事は出来ないと悟りながら、それでも憧れるあまりコピーをしてしまう』
それもまた、美しい人生です。
私もかつて、その美しい道を歩みました。
これからその道を歩む人のために、ここでコード進行を紹介しましょう。
イントロ
|D♭7(♯9) |D♭7(♯9) |C7(♯9) |C7(♯9) |
|D♭7(♯9) |D♭7(♯9) |C7(♯9) |C7(♯9) |
A
|Fm7 |B♭m7 |E♭7 |A♭M7 |
|D♭M7 |Dm7 G7 |CM7 |CM7 |
B
|Cm7 |Fm7 |B♭7 |E♭M7 |
|A♭M7 |Am7 D7 |GM7 |GM7 |
C
|Am7-5 |D7 |GM7 |GM7 |
|F♯m7-5 |B7 |EM7 |C7 |
D
|Fm7 |B♭m7 |E♭7 |A♭M7 |
|D♭M7 |D♭m7 |Cm7 |Bm7 |
|B♭m7 |E♭7 |A♭M7 |Gm7-5 C7 |
○ コード進行の解説
この曲は、非常に凝った作りをしています。
転調が多いし、小節数もDは12小節になっています。
まずAですが、私の場合、1~5小節目はA♭キーで解釈します。
つまり、Ⅵm7-Ⅱm7-Ⅴ7-ⅠM7-ⅣM7と動いていると考えます。
そして、6小節目でCキーに転調したと捉えます。
Bの1~5小節目は、Aと同じ動きを、今度はE♭キーで行っています。
そして、6小節目でGキーに転調します。
要するに、AとBの部分だけで、4つのキーが出てきます。
Cに入ると、これまでとは違う展開になります。
1~4小節目は、Gキーなので転調はしていませんが、Am7-5ーD7と、GmキーのⅡ-Ⅴが出てきます。
これは、短調からの借用和音という奴で、GキーなのにGmキーの感じでⅡ-Ⅴをこなして、GM7に繋がないといけません。
5~7小節目も、同様です。
ここでは、Eキーに転調しています。
8小節目でC7が出てきて、Fmキーに転調する(一時転調する)感じを出しつつ、A♭キーのⅥm7であるFm7に進みます。
Dは、Aと最初の5小節は同じです。
6小節目から異なる動きになり、D♭m7(Ⅳm7)に進みます。
この12小節は、ずっとA♭キーで解釈していいと思います。
最後のGm7-5 C7だけが、次のFm7に進むためのⅡ-Ⅴ進行で、異色な感じ(A♭キーではない感じ)です。
いちおう、エンディングのコード進行も書いておきます。
エンディング (Dの9小節目から書きます)
|B♭m7 |E♭7 |A♭M7 |C7 |
|D♭7(♯9) |D♭7(♯9) |C7(♯9) |C7(♯9) |
|D♭7(♯9) |D♭7(♯9) |C7(♯9) |C7(♯9) |
イントロ
|FM7 D7 |Gm7 E7 |Am7 D7 |Gm7 Gm7 C7 |
A
|FM7 |Bm7-5 E7(♯9)|Gm7 |C7 Am7 D7|
|Gm7 |E♭7 |FM7 Gm7 C7 |FM7 Em7-5 A7|
B
|Dm DmM7onD♭|Dm7onC Bm7-5 E7|A♭m7 |D7 D♭7 |
|CM7 Am7 |Dm7 G7 |Gm7 |C7 F♯7 |
A'
|FM7 |Bm7-5 E7(♯9)|Gm7 |C7 Am7 D7 |
|Gm7 |E♭7 |FM7 (Gm7) |Cm7 B7 |
C
|B♭M7 |Em7-5 A7 |Dm DmM7onD♭ Dm7onC|Bm7-5 B♭m7 E♭7|
|FM7 Gm7 |B♭m7 E♭7 |FM7 Am7 D7|Gm7 Gm7 G♭7|
(Am7 A♭m7 Gm7 C7 )
エンディング (Cの1小節目から書きます)
|B♭M7 |Em7-5 A7|Dm DmM7onD♭ Dm7onC |Bm7-5 B♭m7 E♭7|
|FM7 Gm7 Am7|B♭m7 E♭7 |FM7 FM7(9) |FM7(9) |
○ コード進行の解説
AとA'は、7~8小節目以外は同じです。
Aの2小節目の Bm7-5ーE7は、トニック・コードの代理コードとされているもので、私はトニック・ディミニッシュの変形だと考えています。
つまり、Fdimの代理コードだと思います。
E7から3小節目のGm7に進むのは、かなり違和感がありますが、「そこがかっこいいのだ」とプラスに考えれば対処できます。
A'の7小節目には(Gm7)がありますが、これも入れなくていいコードです。
むしろ8小節目のCm7に繋ぐには、入れない方がスムーズに行きます。
でも、パーカーのアドリブ・フレーズがGm7を想定している感じなので、いちおう表記しました。
BとCには、ベース音が「D音から半音で下降していく所」があります。
ここは重要なアレンジ部分だと思うので、見づらくなるのを承知で、詳しく表記しました。
Cの5~6小節目には、下に( )内のコードも書いてありますよね。
これは、テイクAでのコード進行です。
つまり、上の方がテイクBの進行で、下の( )内がテイクAの進行です。
この部分だけは、テイクAとテイクBでコード進行が違うのです。
私が想像するに、テイクAを録ってみたら、ここが変な響きだったので、修正したのだと思います。
テイクAにおけるこの部分のパーカーのソロは、かなり不思議なフレーズになっていて、「ここは吹きづらいな、コードを変えようぜ」と決断したのだと思います。
この曲では、パーカーが1コーラスのソロをした後には、マイルスのソロになります。
ところが、このマイルスのソロは、Aを飛ばしてBから始まります。
おそらく「収録時間の関係」か、「間延びすると判断した」ためでしょう。
Cから、そのままBに行くのは進行として厳しいので、この時はBの最初の小節をFM7に変えています。
2小節目からは、同じ進行になります。
この曲のアレンジは、大変に凝っており、最高におしゃれです。
アレンジをしたのは、パーカー・バンドの音楽監督をしていたマイルスだと思いますが、かなり熟慮して決めたと思います。
この録音の時は、マイルスはまだ21歳だったのですから、ものすごい早熟ぶりですね。
(2014年2月27日に作成)