(以下は『筋トレ以前のからだの常識』平石貴久著と、『筋肉まるわかり大事典』石井直方著からの抜粋)
〇腱とは
「腱」は、筋肉と骨がつながる部分をいい、とても強い部分である。
一番太い腱はアキレス腱で、足のかかとの骨とふくらはぎの腓腹筋をつないでいる。
腱の一番大事な仕事は、筋肉の力を骨に伝えることで、そのために伸びにくい性質をしている。
長い腱だと、伸び縮みするものもあり、その代表がアキレス腱である。
カンガルーは走る時、ジャンプして進むが、太く長く発達したアキレス腱を使っている。
腱が縮むスピードは、筋肉が縮むスピードよりも速く、素早い動きの時は腱の縮みを利用している。
デコピンや、かがんでからのジャンプは、腱を伸ばした状態から急激に縮ませることでエネルギーに変えている。
腱は筋肉よりも小さいが、腱の縮みを使うことで、運動のパフォーマンスを高められる。
(以下は『筋トレ以前のからだの常識』平石貴久著からの抜粋)
〇関節とは
「関節」は、骨と骨をつなぐ連結器の役目をしている。
これがよく曲がれば、体をよく動かせる。
骨と骨はピッタリとはくっついておらず、間に軟骨がある。
そして関節でそれをつないでいる。
ちなみにこの場合の骨の形は、接部が凸と凹になっており、その間に軟骨が入って、関節で結ばれる。
体の柔らかさのカギを握るのが関節で、体が柔らかい人は体力と若さの持ち主で、病気になりにくい(怪我をしにくい)人である。
関節を曲げられる範囲を「可動域」と言い、体の柔らかい人は可動域が大きいのである。
筋肉をきたえると、関節の可動域も大きくなる。
さらに骨や腱なども強くなり、体が柔らかくなる。
運動をすると、関節への血行も良くなり、酸素と栄養がよく届く。
関節の数は約250あり、6割は手と足にある。
ちなみに「靭帯」は、関節でズレやねじれが起きないように、骨と骨のつなぎを補強するワイヤー役にあたる。
〇骨について
「骨」は、体の形である骨格を作ると共に、骨が動くことで手足などを動かすことができる。
人間の体には、206個の骨がある。
骨は、姿勢を保ちながら、体を動かす役目をしている。
骨には、他にも重要な働きがある。
1つ目は、血液の成分を作る働きで、大きい骨には骨髄がたくさん詰まっている。
骨髄には、血液を作る造血細胞があり、赤血球や白血球が作られている。
2つ目は、カルシウムの貯蔵である。
細胞にはカルシウムが欠かせない。
血液には一定の濃度でカルシウムが溶けており、全身の細胞に届けられる。
体には、成人で800~1000gのカルシウムがあるが、血液その他にあるカルシウムは10gである。
つまり99%は骨に貯えられている。
骨が元気になると、血液の成分をつくる働きと、カルシウムの貯蔵の働きも良くなる。
X線写真を撮ると、骨は白く写るが、これはカルシウムが詰まっていてX線を通さないからである。
だが軟骨は写らない。
軟骨は「骨の赤ちゃん」にあたり、カルシウムがゼロの状態からだんだん増えて骨にまで成長する。
つまりカルシウムが無いので写らないのだ。
軟骨は、骨と骨の間にある。
ツルツルとなめらかな表面になっているため、関節もなめらかに動ける。
カルシウムは、骨髄に多い。
骨髄がカルシウムに満たされている状態が、骨量が多くて骨太な、骨密度の高い状態だ。
カルシウムが不足すると、骨髄がスカスカしてくる。
これが酷いのが骨粗しょう症である。こうなると骨折しやすくなる。
骨には重力をキャッチするセンサーがあり、大きな重力が加わると、骨を強くするためカルシウムやコラーゲン線維の量を増やす。
運動は骨に重力をかける事になる。
そうすると、かかとの骨にカルシウムやコラーゲンが溜まってくる。
〇血液の循環について
「血管」は、太い動脈から中動脈、小動脈と枝分かれして細くなっていき、細動脈、毛細血管と分布していく。
一番太い動脈は、直径が2.5cmほどである。
反対に一番細い毛細血管は、6ミクロン(1000分の6ミリ)の太さである。
大動脈では、1秒間に50cmの血流となる。
大静脈は15cm、毛細血管は0.5mmの血流となる。
静脈は、心臓を出てから時間が経っているので、血圧が低い。
特に足の静脈は血圧が低い。
そのため、手助け役の静脈弁が付いている。
静脈弁は、ハの字をしており、血液が後戻りしにくいようになっている。
足の運動をすると、静脈も伸縮し、そのおかげで弁もよく働いて、血行が良くなる。
特にふくらはぎの運動は、静脈弁の働きを高めて、ポンプ機能を活発にする。
「足は第二の心臓だ」と言うのは、これが理由である。
〇脂肪について
「脂肪」の貯まる場所は、大きく分けると、皮膚の下と、内臓の周りの2つである。
皮膚の下の脂肪は、「皮下脂肪」という。
内臓の周りの脂肪は、「内臓脂肪」という。
男性の肥満は、内臓脂肪が貯まる、お腹がぽっこり出るタイプが多い。
女性の肥満は、皮下脂肪が貯まる、全身ふっくらのタイプが多い。
内臓脂肪は、具体的には腸のまわり(腸間膜)に貯まる。
内臓脂肪の面積が、100cm²(100平方センチメートル)を超えると、成人病になりやすい。
これはウエストが男性だと85cm、女性は90cmが目安である。
これを上回ると、メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)の疑いがあることになる。
一方、皮下脂肪は貯まりにくいが、貯まると内臓脂肪よりも減りにくい。
〇細胞について
体のすべては、「細胞」から出来ている。
細胞の総数は、人間だと約60兆個である。
細胞の一番大きいものは、女性の卵子で、約200ミクロンである。
細胞の一番小さいものは、リンパ球の小型タイプで、5ミクロンである。
細胞には、300もの種類がある。
使われずに余った脂肪は、細胞の中に貯まる。
これが「脂肪細胞」である。
脂肪細胞が増えると、肥満体になる。
大人の肥満の原因は、細胞が太ることにある。
これに対し子供の肥満は、(細胞数がどんどん増える時期のため)脂肪細胞が増えるかたちで起こる。
太った細胞を痩せさせるのは可能だが、数が増えた脂肪細胞を減らすのは難しい。
つまり子供の頃に肥満になると、痩せるのが難しくなる。
体の運動は主に、筋肉細胞を動かすことである。
筋肉細胞を動かすことにより、他の細胞もよく動き、血行が良くなって、全身が元気になる。
(2022年11月23&29日に作成)